セラムン二次創作小説『漆黒のマントに包まれて、彼女は輝きを取り戻す(タキムン)』




セーラームーンは、やっとの思いで敵を倒した。


「よく頑張った、セーラームーン」


ムーンスティックで敵を倒し、体力を消耗して肩で息をしているセーラームーンにタキシード仮面は近寄りながら声をかけた。

毎回思うが、こんな華奢な女の子が、何故こんな敵と戦う運命にあるのだろうかと疑問に思っていた。

同じ目的である幻の銀水晶を探している様だが、敵も同じで、それ程までに惹き付ける銀水晶とは一体何なのだろうと今一度考え込んでしまう。


「タキシード仮面!」


弱りきったセーラームーンは、近づいてきたタキシード仮面に抱き着いた。


「怖かった。怖かったよぉ。うう、くっ」

「セーラームーン……」


安心したのか、タキシード仮面の胸の中で涙を流し始める。身体も小刻みに震えている。

止めどなく流れる涙に、タキシード仮面はひたすら彼女が落ち着くのを待った。


「本当は私、戦いたくなんか、ないの」


そう本音を呟くセーラームーンに、自然と抱き締める腕が強くなる。

そう、初めて会った時の彼女は泣いていて、どう戦えば良いのか分からない様子だった。それでも何とか彼女なりに戦って来た。仲間も増え、強くなってきた。

成長したと思っていても、やはり普通の可憐な月野うさぎなのだ。


「君は、俺が守る!」

「タキシード仮面、貴方がいたから私はここまで頑張れたの」

「俺は、何も」


セーラームーンとして敵と戦う事になった日からうさぎにとってタキシード仮面はピンチになれば現れるヒーローであり、憧れの存在だった。

そんなヒーローに守ると力強く言われ、涙はいつの間にか止まっていた。


「大丈夫か?」


涙は止まっていたが、震えはまだ止まっていなかった。

どうすればいいか頭を悩ませたタキシード仮面は、自分のマントを取り、セーラームーンの肩へかぶせてあげた。


「これ……?」


急に肩にかかった重りに驚くセーラームーン。


「落ち着くまで羽織っているといい」

「はい!」


マントを羽織ると、セーラームーンは見る見る元気を取り戻し、立ち上がった。

漆黒のマントは、思っていた以上に大きくて。セーラームーンの身長では丈は長く、面積もデカくて引きづりそうだったが、彼女にはそれが嬉しかった。


「うふふ」


セーラームーンは笑顔を取り戻し、嬉しそうに笑った。タキシード仮面は、その笑顔を見てホッとした。


「タキシード仮面のマント♪」


月をバックに、ムーンスティックを手に持ったままセーラームーンはその場でクルクルと回り始めた。


「どう、似合う?」

「ああ、元気になってよかったよ」


喜ぶ姿を見たタキシード仮面は安堵した。

咄嗟の判断だったが、こんなに喜んで元気を取り戻してくれるとは思いもしなかったが、ホッとした。


「ありがとう、タキシード仮面」


すっかり元気になったセーラームーンは、満足してタキシード仮面にマントを返した。


「うん、やっぱりこのマントはタキシード仮面に一番似合ってるわ」

「君も、似合っていたよ。惚れ直した」

「タキシード仮面……」


素敵だと一言ダメ押しされたセーラームーンは、頬を赤らめた。

見つめ合っていた二人の顔が近づく。二人の唇が触れ合う。

二人は、その場でいつまでも愛を確かめ合った。





おわり




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