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あるオタクの劇場版ウマ娘ノベライズ感想

この文章には、劇場版ウマ娘プリティーダービー新時代の扉及びそのノベライズのネタバレが多分に含まれます。
映画を視聴済であることを前提に書いた文章ですので、ご了承ください。


あらすじの通り、大まかな話の展開は同じでしたが、夏合宿以降の展開が映画とは異なり、印象もだいぶ異なる仕上がり。同じ題材の別作品として見てもいいかもしれないくらいには違います。

主な変更点は

  • サンキャッチャーのモチーフが一切登場しない

  • フジとポッケのレースシーンが菊花賞前になっている

  • 菊花賞をはじめとしたカフェ関連の描写の追加

  • カフェとフレームからのポッケやタキオンに対する心情描写の追加

  • JC後のタキオンの反応

  • 年度代表選定への言及

  • 「夢のレース」にアヤベを含むオペラオー世代とフジが登場する

視覚に頼れない媒体のためか、映画に欠けていた個人を把握するための描写やキャラクター同士の感情のやり取りが全体的に増えているので、各々のライバルらしさ、今作にネームドとして登場している意味がきちんと感じられるような描き方がされています。 ペリースチーム(クロフネ)のダービー出走や年度代表選出にも軽く触れているため、「新時代の扉」が何を指していたのかが明確なところも好印象。
個人的には菊花賞を省略せず、万全のポッケとカフェをライバルとして戦わせ、他のG1レースと並ぶ見せ場の一つとして扱ってもらえたことがとても、とても嬉しかったです。
107分で描き切るには厳しい物量ですが、アニメ3期で描きたかったシナリオの方向性とRttTのいいとこ取りに成功しているように感じられました。 

反面、即効性の高い劇的なドラマとしては映画版脚本がそれに特化しており圧倒的に完成度が高いため、この点に限っては明確にノベライズが劣っていると言えると思います。
また、これはアプリ版プレイヤーへのサービスだったのかもしれませんが、カフェ育成の見せ場をポッケに挿げ替えただけに見えてしまうタキオンの描写には若干の不満が残ります。誰が起点になっても同じ結末を辿るだろうという解釈については違和感も不満もないため、個人的には映画脚本のように少し捻ってほしかったです。


人生におけるイベントは必ずしも劇的に変化するものばかりとは限らないわけで。
劇的な演出に振り切れて、あったはずの大切なものまで切り捨ててしまっている映画よりも、多少冗長に見えたとしても個々の存在意義や関係性を伺うことができるノベライズの方が私は良かったと感じましたが、ハッキリ言って好みの領域だと思います。

映画が107分の尺に収めた映像作品として、ポッケを主役にした物語としてはほぼ完璧だったことに変わりはないです。
ですが、映画に不満があった人、特に尺が足りないと感じた人には、ノベライズを読むことをおすすめしたいです。きっと貴方が観たかった物語がここにあります。

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