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足音
ご機嫌好う、173です。
得意な焼き菓子はブラウニーです。
前回私の体験した“靴音”の話でしたが、
今回は父が体験した話を書きたいと思います。
これは父が南のとある地域で勤めていた時のお話。
当時勤めていた工場には2階建ての事務所が1つ。
そんな事務所の2階、業務を終え、戸締りの確認。
さて帰るぞ、と思うと必ず2階から足音が1人分。
はて誰かいたか、戸締りし忘れたかと思い、「誰か残っていましたっけ?確かに閉めた筈なんだけど」と、見に行こうとするも「あ〜、しむさ(大丈夫の意)、見に行かなくても良いから」と仲間に止められる。
気にしなくて良いから、と。
そんな風に足音を聞きつつも、仕事をこなし、慣れてきた頃の飲み会で「そういえば」と思い出し同僚に話を聞いてみた。
あの足音の主を皆知っているのか?と
いざ話を聞いてみると、父が入る前に勤めていたA専務という人の霊だという。
2階に専務室があったようで、戸締りをすると必ず専務が部屋に戻る足音がするのだと。
なんでも、A専務は健康診断で病が見つかり、治療の為手術するも、ぽっくりと逝ってしまった(同僚談)と。
彼は生前「自分がそんな病にかかるはずない。ちゃっちゃと手術をし、治して戻ってくるから」
と快活に話していたという。
「だからかな、自分が亡くなったことに気付いていないのかも知れないね」と同僚は話を終えた。
聞くところによると、事務所だけでなく、専務のお気に入りだった木の下にも良く姿が見られるという。
実際父も見かけ、おや?と思い見直すと誰もいない、という事が多々あったと。
その後父はそこを辞めたので、現在も専務の霊が現れるのかはわからない。
勤めている間中は専務の姿も足音も、当たり前の様に見聞きしていたそうで。
「とは言え、あの様子だと気付いてないんだからまだ“居る”のかも知れないね」
そう語り、父は話を終えたのでした。
願わくば、彼の魂が安らかであります様に。
それでは、またいつか。