猫耳
たかが猫耳、されど猫耳。
2月22日は猫の日ということで、ちょうどその日にやるライブでは猫耳をつけた。
わたしは就活のおかげで自己分析が癖になっている(なんかちょっとイヤなキルアだな。癖になってんだ、自己分析するの――)んだけど、環木あんずちゃんは「かわいい」をするのが少し苦手で慣れていない、いわゆる「かわいい初心者」だと認識してる。カッコよくて強くて媚びないものが好きで、いつもと違ったかわいらしい装いをするのは、ちょっと恥ずかしく思っちゃう。
Twitterで「猫になるから見に来てね」なんて言ったりもしたけど、画面のむこうでは「猫になるってなんだよ、いつなんどきでも人間だろうが…」と思いながら、こんなのキャラじゃねえと悩みに悩んで、えい!っとツイートした。
実際、猫耳を付けるなんてぶりっこみたいなことが自分にうまくできるのかなあと思って、どれどれ…と試しに部屋でつけて鏡を見て、すぐに正気に戻って、一人で何やってんだ俺は!?とすぐに外した。滑稽。都内在住成人女性、一人暮らし、猫耳、滑稽。乾いた部屋に鈴の音がこだました。
でも、当日はいろんなひとが猫耳を付けてて、ただ2が3つ並んだだけの日なのに、みんな可愛くて楽しそうだったし、なによりたくさんの人に「かわいいね」と褒めてもらっちゃった。
わたし、猫耳似合ってる?なんてちょっと嬉しくなって、鏡をたくさん見た。わたしの心も猫耳も、ぴょこぴょこと揺れていた。
わたしが殻を破って、キャラじゃないと突っぱねていたことに挑戦にしてみることで、こんなに喜んでくれる人がいるってすっごくうれしいな。
今のグループに入って、どんどん知らない自分に出会っているよ。
かわいこぶりっこも、悪くない。
証拠に、帰りはみんなより長く猫耳をつけて帰った。
歩くたびに猫耳についた鈴が揺れて、りんりんと鳴っていた。
それは、乾いた部屋で聞いた音とは、ちょっと違ったような気がした。