五人目の候補
その後、Aから2度ほど、世間話のような連絡が来たが、もう会うことは無かった。
Aもそんなに積極的に会おうとはしてこなかった。
恋にもう落ちかけていたのに、消えてしまった。
相手に対して、期待し過ぎるのも良くないと思った。
恋したい気持ちが先走ってしまって、タイミングが悪かったのかもしれない。
もう少し、私もやり方があったのかも、と反省した。
その後は、何だか気分が乗らなくなって、しばらく「愛人探し」を諦めていた。
本来の目的(身体の女性機能を使う)からどんどん、恋愛傾向に引っ張られていることに気付いた。
好きになると、どうしてもポーっとなってしまって、いろんな期待も募るのだ。
これは女性特有なのだろうか?
最初の目的の「身体の女性機能を使う」というのは、やっぱり女性には難しいのではないだろうか?という気分になってきた。
女性は男性と体の構造が違う分、行為に快感以外が必要となるような気がしてきた。
単純に「身体を満たしてくれる愛人を作る」と言っても、難しいのかもしれない。。。
いろいろと悩み始め、Aとのことでも、いろいろと考えさせられた。
だから、これ以上会う人を発掘するのはしばらく止めようと思っていた。
その頃、かなり以前からメッセージをちょこちょこ送ってくる人で、最近になってしきりに「会いたい」と言ってくる人がいた。
アメリカ人のCという名前の、かなり若い人のようだった。
彼の個人情報はすごく抜けが多くて、更にメッセージの語調が若い感じがして、あいさつ程度しか返していなかった人だ。
若そうだし、良く得体が分からないし・・・と言うので、実はそんなに興味が沸かなかった。
でも、何かとまめにメッセージを送って来てくれる人だったので、落ち込み始めていたその頃に「まあ、会ってみるか・・・」と言う気分になった。
「週末なら会えるけど。会う気ある?」
と、単刀直入にメッセージを送った。
「是非会いたい!土曜と日曜、どっちが都合良い?僕はどっちでも大丈夫!」
と、明るいメッセージが返ってきた。
あんまり楽しくなければ、すぐ帰ってくればいいや、ぐらいの軽い気持ちで、久々にぽっかりと空いた日曜日にCとの予定を入れた。
日曜日までの数日間は、「楽しみだな。日曜日だよね。」というCからの軽いメッセージを毎日受け取ることになった。
そんなに楽しみにされると、こちらの気持ちもちょっと前向きになってきた。
Cから指定された待ち合わせ場所は、大きな公園のなかの、一角だった。
今まで駅やカフェテリアなどで待ち合わせることが多かったので、ちょっと変わった人だな?と思った。
幸い、その日は天気が良くて、日なたが気持ちよかった。
公園に向かうと、ベンチで本を読んでいる男性がいた。
背が高くて細身の、やっぱり若い男の子のようだった。
(どうしようかなあ・・・)
ちょっと迷いが出たが、声をかけてみた。
「Are you...?」
「M? Wow! At last!」
そう言って、抱き付かれた。
「ずいぶん話してたのに、なかなか会ってもらえなかったから心配だったんだ...今日も、来なかったらどうしよう、って思ってた。(笑)」
屈託なく、明るく笑うCに好感が持てた。
ベンチに座って、彼の話を聞いた。
22歳。
アメリカの大学を休学して、先月から日本に来ていること。
日本で友達はほどほどに出来たけど、何となく深く話せる友達はまだいないこと。
今は、友人に頼まれてIT技術系のバイトを時々していること。
本を読むのが好きなこと。
今は日本語の学校に通っているけれど、まだまだ上達しないこと。
アメリカの大学をどうしようか、親と相談中のこと。。。
・・・思った通り、何だかすっかり、お姉さんな気持ちになった。
「大学は卒業しておいた方がいいとは思うよ。」
「親もそう言うんだよね。。。」
「まあ、折角大学に入ったなら多少無理してでも卒業しておくほうがいいとは思うけどね。その方が、後々可能性は広がるよ。今は、何かやりたいことがあるの?」
「今は…よくわかんなくなったんだ。」
「そう…まあ、のんびり見つければいいんじゃない?まだ若いんだし。そのために日本に来たんでしょ?」
「そうだね。。。」
今日はカウンセラー役で終了だな、とちょっと思った。
少し話して、日本の生活でのCの不安が少しでも減ればいいな、と素直に思った。
多分いろいろ話したいことがあったようだけど、話せる相手がいなかったのかもしれないな、と。
「今日はあなたに会って、もし合わなかったらどうしよう…ってちょっと心配だったんだ。」
「そうよね。初めての人と会うのって勇気がいるもんね。私もだよ。」
「今まで話してきて、僕のこと、どう思った?」
「いい子(Good Boy)だと思ったよ。」
「いい男(Good Guy)ではなく?」
「そうね。きっといい男になると思うよ。(笑)」
「嫌いなタイプじゃない?」
「むしろ好感が持てるよ。真面目そうだし。」
「俺、全然真面目じゃないよ。」
「そうなんだ。」
「・・・ねえ、実は一つお願いがあるんだ。」
「何?」
「・・・君と寝たい。」