女の子な気持ち
Aからはその後も、コンスタントに連絡は来るが、忙しいようでなかなか会えなかった。
私のほうは仕事がやっと落ち着いて、それなりに自由な時間ができたけれど、Aが忙しいので会えないのが残念だった。
でも、ジムに行ったり女友達と遊んだりと、それなりに楽しく忙しく過ごしていた。
前に会ってから2週間後に、やっとAから「平日の夜だけど、夕食を一緒にしないか?」と連絡が入った。
仕事が忙しい中で、なんとかスキマ時間を見つけてくれたらしい。
いつ会えるかとずっと待っていたので、二つ返事で受けていた。
すごく忙しいのは分かっていたので、待ち合わせの場所はいつもの彼の職場の近くを私から提案した。
久々のAとのデートに、ワクワクしていた。
その日は、早くに仕事を上がって、ジムでシャワーを浴びで向かった。
駅で待ち合わせをして、彼が連れて行ってくれたのは、いつもAが仕事仲間と行くというレストランだった。
高層ビルの立ち並ぶオフィス街の真ん中に一軒だけ残されたような、ちょっと隠れ家的な、おしゃれなイタリアンレストランだった。
Aは普段からかなりの常連らしいのか、ウェイター長らしき人に挨拶をされて、一番良さそうな席に案内された。
「いつもランチで使ってばっかりだから、夕食はどうかな、って気になってたんだ~。Mさんをいつもお待たせしているから、ご馳走したいなと思って。」
結構いいお値段のディナーコースとシャンパンをご馳走になった。
前菜からすごく美味しかった。
「それにしても、仕事にすごく理解があるよね。俺のせいであんまり会えないけど、あまり文句も言わないし。」
「そう?だってお互い様でしょ?」
「女の人って、結構会えないとうるさい印象と言うか…(苦笑)」
まあ、普通はそうだよなあ・・・と思いつつ。
私は、すっかり可愛くない女の子になってしまったのかな、と心配になった。
「・・・もう少しぐらい、うるさくしたほうが良い?」
「いやいや!」
彼は大笑いした。
「ほんとに、面白いよ。」
楽しく食事をして、お店を後にした。
既に遅い時間になっていたので、駅に向かって歩いていた。
「明日、仕事は早いの?」
「うん、通常通りだよ。」
そして、Aはふと立ち止まって、「ちょっとだけいい?」と言って、私の手を引いて、別の方向に歩き出した。
高層ビルの隙間に、小さな公園のような植木に囲まれたスペースがあった。
地面に敷かれた、御影石らしいつるつるの面に、いろんな光が反射してキラキラしていた。
彼は自分の荷物を下ろし、私の荷物を取って下にそっと置いた。
ゆっくりと抱きしめられて、キスされた。
何だかすごくロマンチックだった。
大事にされているのを感じて、嬉しかった。
多分すごく真っ赤になっていたのかもしれない。
頬も顔も、すごく熱くなっているのを感じた。
「明日からまた出張で留守にするんだ・・・待っててくれる?」
私の頬をやさしく撫でながら、言われた。
「うん。連絡してね。」
その後は、私の荷物も持ってくれて、駅まで送ってくれた。
別れ際に、額にキスされた。
久しぶりに、すごく女の子になった気持ちになった。