BUMP OF CHICKEN『スノースマイル』についての考察
子供の頃は気づかなかったけれど、この曲雪降ってないやん。と最近になって思った。そして歌詞の内容を考えてみた。その一部始終をお届けする。
考察するにあたって気になるのは「僕」と「君」の関係で、
①恋人同士
②友達
③その他
の3種が考えられる。
もちろん③はいろいろ考えられるから3種では収まらないけれど。それは後で考える。つまりそれが核心だという意味。
※以下、個人の妄想です。ジョークを真に受けないように。
冬が寒くって
①の場合
まだ付き合いたてで手をつなぐのも恥ずかしい。
②の場合
片思いしている「僕」は寒いのを口実にあわよくば手を繋ぎたいという願望を抱いている。でも「僕」の下心を知って嫌われたらどうしよう。
③の場合
吉良吉影が切り取った女性の手首をポケットに入れて持ち歩いても気温が低いから腐りにくい。
あるいは②と同じような願望。
「雪が降ればいい」
このシーンでは二人の関係性はあまりわからない。
雪がまだ降っていない、落ち葉がある季節なことが伺える。というかたぶん雪は滅多に降らない地域で、だから「雪が降ればいい」と言っている。そして基央の出身は千葉県だ。
③の場合
関係性は③の場合だけ考察できる。
妄想の「君」が「雪が降ればいい」と言って落ち葉を蹴飛ばすシーンを想像している。そういう光景があったらいいとニヤけている。「君」は怒っているシーンなのになんで「僕」は楽しそうにしているの? と自分自身をあるいは妄想をしている別人格の自分を客観的に見て思っている。
誰が口を尖らせているのか、誰が怒っているのか、誰が楽しそうなのか、誰が楽しそうなの? と疑問をいだいているのか、は述べられていない。
まだキレイなままの
冷静に考えて、ここで夢物語であり雪の無い道と述べられているので、子供の頃の僕は全然歌詞を気にしていなかったことがわかる。
ここで問題なのは「夢物語」という部分だ。もちろん。
なにが夢物語なのか。
雪の絨毯に二人で足跡を刻むことが、(雪が降っていないため)夢物語だという説が有力だろう。
②の場合
二人で刻むのは平行線であって二人の関係は変わらないまま。ずっと片思いのままなのだということを暗示している。「君」と恋人同士になることは夢物語だけど、二人で歩いているのならそれでいい。笑顔だよねそりゃあ。
③の場合
幻覚あるいは妄想の「君」なので全てが夢物語である。そして全部妄想だからニヤニヤと笑顔になっている。もちろん雪なんて降っていないしそんなことは関係がない。自室で一人なのだから。
二人で歩くには
問題のシーンである。
おそらく、歩幅の大きい「僕」が先を歩いて、振り返って「君」を待っている。そんなシーンのはずだ。
ポケットに誘って手を繋いでいたらそうはならない。だから1番の歌詞はあくまで願望で結局ポケットにお招きできていないことが伺える。もちろん、違う時間軸で今は手を繋いでいないだけかもしれないが。
あと、どこかのサイトにも書いてあったけれど、振り返るのが「君」なのか「僕」なのかわからない。文法的には「振り返る君」、文脈的には「振り返る」で区切る文章だ。「見ておくよ、振り返る(先にある)君の居る景色を」というのが正解だと思われる。
①の場合
出来るだけ時間をかけて見るということは、「僕」はどれだけ遠くまで先に歩いているのだ、そして「君」はどれだけ歩くのが遅いのだ。と書いていて気づく。「君」は足に障害があってゆっくりしか歩けない。そして「僕」は「君」を甘やかさない。「君」は甘やかされるのを嫌っている。私に合わせないで歩いてと言うのかもしれない。「僕」はそれに従って先を歩く。いつもそういうふうに歩いているのかもしれない。素敵な恋人だ。あるいはリハビリのために「君」は自分のペースで歩いている。それを見守る「僕」。二人の信頼関係が見て取れる。
②の場合
ていうか歩幅を合わせて歩いてやれよ。そういうところだぞ。
③の場合
「君」の歩幅が狭いのは、まだ子供だから。自分の幼い娘かもしれない。娘の成長を見守る父親のシーン。出来るだけ時間をかけて目に焼き付けておきたい。今の歳の娘は今しか見れないのだから。そして、娘は時々振り返る。誰もいないのに。まるで母親がついてきているように。でも二人で歩くにはコツが要ると言っているのだ。二人なのだ。死んでしまった母親を探すように振り返る幼い娘。この場合は、「振り返る君」のパターンが成立する。
違う場合というか例によって想像上の「君」の場合。君の歩幅は狭い(だろう)からコツが要る(だろう)。時間をかけて景色を見るのは、そこにいるはずのない「君」をイメージするため。この場合も「振り返る君」が成立する。「君」が振り返った向こうには「僕」がいる、という設定の妄想を第三者視点で今の「僕」は見ている。「僕」に向かって振り返っている「君」を誰もいない景色に想像している。気持ち悪いなこいつ。
まだ乾いたままの
やっぱり雪は降っていない。子供の頃の僕は一体何を聴いていたのだろうか。なにも理解できていなかった。そしてきちんと理解できたときに大人になるのかもしれない。つまり最近までまだまだ僕は子供だったというわけだ。
今回は実際に足音を鳴らしている。足音で鳴らすオーケストラはどんな曲だろうか。ティンパニソロかな。
そして「夢物語」というのは……
①の場合
雪が降ること。でも一緒にいるからハッピーだよ。そんな歌詞。
②の場合
二人の関係が進展すること。あるいは手を繋ぐこと。もちろん雪が降ることも。でも「君」といたら笑顔でいられる。そんなのはわかっているけど、このもどかしい気持ち。このままの関係でいたほうがいいのかもしれないという悲しみ。
③の場合
もちろん「君」は架空の人物なので全部が夢物語である。だから足音でオーケストラを鳴らすこともできる。全部空想だからどんな音だって鳴らせる。笑顔は「君」がくれる。つまり「君」のことを妄想して一人で部屋でニヤニヤしているのだ。そんなの、わかってるんだ(俺が正気じゃないってことぐらい)。
まだキレイなままの
最初のサビと前半は同じで「そうさ」という部分が違う。
もう「夢物語」であって実現はしないと諦めている。
そして笑顔は教えてくれ「た」。過去形あるいは完了形。教えてくれた「僕の行く道」は何にでも解釈できる。
①の場合
A. 夢を諦めて「君」と生きていく道。かなり好意的な解釈。
B. 逆に自分の行く道を進めばいいと、夢を追うために「君」と別れた場合もある。
いずれにしろ最後の歌詞につながるのでここではこれ以上の考察はしない。
②の場合
「君」を笑顔にしているのは「僕」じゃないんだ。それは「僕」の仕事じゃないんだ。「君」は彼氏に黙って、たまたま帰り道が一緒だから「僕」と歩いているけれど。「僕」は君に何もしてあげられない。雪が降ればいいと思っていたのは「僕」のほうで、冬のせいにして手を繋ぐ口実を探ろうとしたりして、臆病なままの「僕」なんかを選んではいけない。結局夢物語だった。でもそれでいいんだ。その笑顔を見て自分の行く道がわかった。「君」の隣ではないことが。「僕」はそこにいるのにふさわしい男になることができない。
これが一番リアルである。
③の場合
笑顔は教えてくれた。それはもちろん部屋でニヤニヤしている哀れな男の笑顔だ。そう、僕は気づいたんだ。何をすべきかを。
君と出会えて
①の場合
前節A. のパターンだと、ここで言う「君」は夢物語そのものをさす。恋人のことではない。夢物語なんてなくても雪が降らなくても君=恋人と歩いていくよ。というハッピーエンド。何度同じ季節が巡ってもずっとふたりで歩いていく。そして右ポケットにしまってた思い出ということは、ちゃんと手を繋いだ思い出があるということで、あの冬の思い出でそれはそのまましまっておいてまた新しい思い出を作ろう。
あまりにも好意的な解釈すぎて書いていて引かざるを得ないという感じだ。
前節B.のパターン。もちろん君のいない道というのは別れたからだ。たぶん一番自然な解釈。ポケットの思い出は「君」との思い出で、他の誰かのものにはならないという願望である。
そして問題はどう別れたのか。失恋的な意味ではなく、「君」が死んでしまったパターンも想定できる。何度も冬になるたびに「君」のことを思い出すよという回想している歌になる。思い出はポケットにしまったままで、誰かと再婚はしないという決意表明。美しいバッドエンド。
②の場合
もちろん手は繋いでいないので「思い出」は、右ポケットにお招きしたいと思ったこと。
「君」は卒業して上京したけど、冬が来るたびに「君」のことを思い出す。「電車に乗って2時間ちょっといつでも帰れる」と言っていたのに帰ってこない。「君」の邪魔をしてはいけないから友達のままでいた。「僕」はただのいい人のまま。風の噂で「君」は結婚したと聴いたけど、「僕」はまだ女の子と手を繋いだこともない。「君のいない道」というのは恋人のいない人生のことである。来世に期待。
③の場合
「同じ季節が巡る」というのは、「僕」は脳に障害を負って、目が覚めるたびに記憶をなくしているので、冬だ、と毎回思うという状態。
なぜ脳に障害を負ったのか。オーバードーズだ。「僕の行く道」はつまり死ぬことだ。薬のためにあるいは病気のために幻覚の「君」についに出会えてよかった。でもおかげさまで同じ季節が毎日巡ってくるように錯覚するようになってしまったぜ、というどこか覚めた目線の自分が自虐的に述べている。妄想の「君」との思い出は自分の心の中だけにしまっておく、というか思い出すことも、もはやない。
「君のいない道」は、もちろん「君」を思い出すこともないから。そして、「君」というのは以前の自分自身であって、もうもとの人生には戻れない。哀れな男だ。
別のパターンとして、君を殺してしまった場合を想定したけれど、そのストーリーはみなさんがそれぞれ適当に考えてください。自分には手の届かない存在だから。告白したけどフラれたから。とかそんなやつ。そんな理由で人を殺すな。フラれた後によっぽど馬鹿にされて辱めを受けたのなら殺されても仕方ないなとなるかもしれないけれど。そしてそれはフィクションではなく、現実ではそういう事件が起こる。そんな人生で大丈夫か? 俺をフッたことを後悔させてやるよといい男になればいいんじゃないかな。知らんけど。
まとめ
クスリ、ダメ、ゼッタイ。