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【掌編小説】クリスマスの答え合わせ
「クリスマスキャロルが流れる頃には君と僕の答えもきっと出ているだろう」というけれど、クリスマスイヴだというのに彼女に僕の気持ちは伝えられていない。
友人達がいうには「絶対両想い」だそうだが、彼女は僕が近付くとスッとその場から避け、僕の自信は底まで落ちた。
グーグルの地図は彼女のアパートまで三十二分と示しているが、三十二分なんかでは埋まらない距離が確実にここにはあった。
ウイスキーに氷を入れて、やけに老けた大人みたいに飲んだくれて、結局お子ちゃまな僕はジョッキに入れ替えてコーラを足してコークハイにして一人寂しく盛り上がった。
伝えられてもいないのに、振られたかのように自分の不幸に酔いしれて、絶対両想いだと励ましてくれる友人達をドッキリの仕掛け人のように腹ただしく感じた。
あの僕が居るのに居ないかのように振る舞うのが好意なのだとしたら、僕は一生それに気付けない。だけれど、僕の彼女への好意が一生気付かれないのはそれ以上にもっと嫌だと思った。
マフラーをしっかりと巻いて、手袋もして、着く頃には二十三時を過ぎるだろうにアポも取らないで、彼女のアパートに向かう。
街灯や通過していく車達が僕をオレンジに染めたり、キラキラ光る電飾のように光らせたりして、クリスマスツリーのようにした。三十二分は殆ど間違いなく三十二分だったけれど、やっぱり体感としてはもっともっと気が遠くなってしまう程長く感じられた。
彼女のアパートに着いて、自分が殆ど不審者のそれだなというのには気付いたけれど、もうそんなのはどうでも良かった。気が遠くなりながら歩いた僕は前より遥かに彼女が気になっていた。
インターホンを押すと、彼女が出た。
なんで? とも、気味が悪い、とも言わずに、
「鍵開けたから」
と言った。
答え合わせだ、
君と僕の。