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【掌編小説】おもしれぇ女の三賀日誕生日

 山羊座は経済の星といわれているが、山羊座生まれの私は、「頑張って変なことを言っている可愛い」と言われている。経済が全然関係ないところに私の頭の弱さを感じ、歯磨きをしながら鏡に映る私は確かに可愛いと思った。
 船に乗ってたときも飛行機に乗ってたときも空港で存在しない彼氏のお土産を買ってるときもあまり酔わなかったけど、今私は確かに自分に酔っている。飛行機や船に乗れるのだから経済力もそれなりにあり、やはり経済の星は私に関係している可能性が出てきた。三賀日に誕生日を迎える私は完全なおめでたいベイビーであって、誰からも祝われる資格がある。国家資格にするべきである。【逆に祝われづらくなっていてアホである】
 私の脳内はやっぱり変なんじゃないかなぁ? って思うんだけど、人前では萎縮してしまって、よっぽど仲のいい人の前でなければおどけることができなかった。
 自己陶酔が覚めてきた元旦を少し過ぎた深夜、十八歳最後の日。特別十八歳の最後に思い入れはないけれど、まだ麗しい乙女なのだから誕生日ぐらい彼氏に祝われたかった。人は皆愛されたいだろうが、私は強欲なのだから深く深く心の奥底から愛されたいのだ。
 来年は二十歳、成人式。出会いも再会も沢山ある。人は鏡なのだから、私が面白ければ周りも面白くなる。面白い男の面白いところを真似するの。そしたら私も面白くなって、更にミラーリング効果でそいつは私を好きになる。
 それで私言われるの、
「おもしれぇ女」
 って。
 歯磨きを終えたのに今日賞味期限のちくわを見付けてしまって、ちくわのパックを開けてちくわを笛にして、天井越しに山羊座のヤギ達を呼ぶのだ。【山羊座が太陽星座の場合、日本の空に山羊座はないので完全なアホである】
 ちくわを食べ終えてこのちくわの件必要あった? と反省しながら、もう一度歯磨きをして、確かに私、「頑張って変してる」なと思った。「稀に見る蛇足ですね」と鏡の中の私が言うと、十八歳最後の一日を過ごす私は、

「だっておもしれぇ女だかんな」

 と、今年も頑張って変なことを言うのであった。

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