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Scene 2: 撃沈

項垂れた頭を支える手はピクリともしない。
混雑したカフェの喧騒をも聞き流す耳は働くことをやめている。
だが、卓上のスマホが鳴動すると石像だった手はすぐさま動き指が滑った。

にゅーろん「今カフェ来たよ!どこにいる?」
海石「北側窓辺トイレ横」
にゅーろん「人多ッ」

通知が止まった。今頃奴は迷子かもしれない。
だがにゅーろんに会うのは今回が初めてで、どんな容貌かもわからない。さて、どうやって見つけ合図するか。

海石「にゅーろん、特徴は?」
にゅーろん「上は青い服、金色のネックレスつけてて、下は茶色!」

ふむ。それで見つかるか。
顔を上げて客と店員が行きかう店内を見回していると、ひときわ大きい何かが目についた。
まばたきし、目をこすり、首を軽く振って、もう一度見つめる。

きょろきょろと店内を見回していたそれは、パチリと視線が合うなり唇をにゅいんと曲げて笑った。とっさに目をそらす。

俺は何も見ちゃいない。
眼の前のカップを頑なに凝視する肩にポンと手が置かれる。

「みーつけた☆ はじめまして、海石サン!!」
「・・・。ハジメマシテ」

どうもにゅーろんです!!
キラキラした笑顔で手を振る”彼”は、若者っぽく青いTシャツとシンプルな金のチェーンで上半身を飾り、艶やかな毛並みの尻尾を振り回す
美しきケンタウロスだった。

ーーーもう、世界がわからない。

静かに天井を仰いだ。



「あっは、ごめんごめん、冗談だよ!これ試作!!」
無言で世の無常を嚙みしめていると、あっはと笑ってみゅーろんはスマホを取り出す。
操作すると、たちまち下半身がただの人間のそれ、茶色いズボンと黒い靴に変わる。ちゃんと二本足だ。

「ここ来る前に公民館寄ってさ。魔界都市計画相談したら、サボテンが特別に貸してくれたんだよねー。あいつもよく姿変えてあちこちにいるじゃん。段階踏んで実験するらしいよ」

サボテンよ止まれ。何を目論む気だ。令和市だけならいいが、くれぐれも別の地域を巻き込むなよ。にゅーろんの笑顔が怪しい。これほどまでに初対面で危険な香りの笑顔を放つ人間を見たことがない。

どこにでもいそうな人間の青年となったにゅーろんは腰かけるなりバナナパフェを注文し、スマホを開く。

「ふぃろさんはチャット参加かー。会いたかったな」
「あの人は離れ島にいるから、仕方ない」

本当は一番相談したかった相手なのだが、船長ともなれば忙しいに違いない。今頃襲撃ーーいや、今はそれどころじゃないな。

「ぽいぱは来れないけど、ラッスンさんが途中参加するってさ。まあ、僕が今日話聞いて、それからみんなに具体的な協力を依頼しよう。いいね?」
「ああ、ありがとう」

スマホを伏せたみゅーろんの表情がおちゃらけたそれから切り替わる。
「何があったか、いちから聞かせてもらおうか」
「ああ」

ゆっくりと頷いた。




離れ島↓

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