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豪日記「オーストラリアのバス」
【はじめに】
10年前にオーストラリアでワーホリをしていた時の記録です。今は色々変わったこともあるでしょうし、私の古い記憶をたよりに書いています。
私はバスが嫌いだ。地下鉄や電車みたく正確に来ないし、酔うし、いつとボーっとしている私はボタンを押し忘れて降り過ごしたことなんて数え切れないほどある。
無事に降りるまでずっと緊張していなくてはならないから疲れる。
そして、オーストラリアのバスはもっと嫌いだ。オーストラリアのバスの乗り方は日本とは違う。
バス停に立っていて、乗りたいバスが来たら手をあげて合図する。合図しないとバス停にいてもバスは止まってくれない。
乗ってからではなく、停留所に立った瞬間からもう、ボーっとすることは許されない。
バスが来たと思ったら自分が乗りたいバスの番号かどうかを確認して、停留所を通り過ぎる前に合図しなくてはならないので、優れた動体視力、反射神経が求められる。
ボーッとしてる人間には実にハードルの高い乗り物だ。
しかし車やオートバイでもないと、生活の中でバスを使うことは避けられない。
◆乗車拒否?
オーストラリアに住み始めて2週間程たった頃、私は語学学校へ向かうバスを待っていた。
バスが来たので慣れた手付きでサッと手を上げる。
2週間もたつと、上げすぎず上げなさすぎない絶妙な角度の挙手を習得していた。
語学はまだまだだけど。
しかし運転手は顔の前で大きくバツのポーズをして、通り過ぎてしまったのだ。🙅
まさかの、乗車拒否。
なぜ?私が日本人だから?
そんなことはない。満員だったのだ。
通り過ぎて行ったバスは小学生くらいの子供がギュウギュウに乗っていた。
いやいや、とりあえず止まってよ。
人っ子ひとり乗れるか乗れないかの判断を、こっちにもさせておくれ。
そしてその日は学校に遅刻。
「バスが満員で乗せてもらえませんでした」って、英語でなんて言えばいいのかな?
そんなことを考えながら、急いで学校へ向かったのを覚えている。
◆乗降口あけて!
バスの乗降口は前と真ん中あたり、2箇所あるものが一般的だが、その真ん中のほうから降りたいのにドアが開いてないことがある。
ある日ネイティブらしきサラリーマンのおじさんが、ものすごい大声で
「Driver !!!!Back door please !!!!!!!」
と叫んで後ろの扉を開けてもらっていた。
とても印象的だった。
私は、自分が降りたい時に目の前のドアが開かない場面を想像した。
「運転手さーん、ドア開けてくださーい!!」
と大きな声で叫ぶ。
言えるかな?ひとりで降りれるかな?
私ならダッシュで前の扉まで行くだろう。
でも混んでて前まですんなりたどり着けなかったら?
せっかちな運転手さんで、さっさと発進してしまったら?
乗るのも降りるのも申告して、更にはドアが開かなかった時の心配までするんだから、本当にバスは疲れる。
◆ドア付近、まじで危険
日本人に比べてオージーに雑な人の割合が多いのは今更な話だが、この日乗ったバスの運転手の雑なこと雑なこと。
完全に停車する前にドアの開閉ボタンを押すので
ガコンガコン!
と壊れそうな音でドアが開きながら止まる。
ブレーキも雑なので立っているとなにかに捕まってないと転びそうになる。
一度停留所から次の停留所まで、ドアを開けたまま走っていたこともある。
人が落ちでもしたら大変だが、豪に入れば豪に従え。
落っこちるほうがマヌケにも思えてくる。
絶対にドア付近に立つのはやめよう。
日本ならすぐニュースになりそうな話である。
◆バスが来ない
週末、マーケットに行こうとバスを待っていた。
私はそのバスを使うことはあまりなかったが、停留所には他にも学生さんやお仕事に行くような制服の人たちが7〜8人、いつもの日常といった様子で同じバスを待っていたので、私はバスが来ないなんて夢にも思わなかった。
一人で移動の時は音楽を聞く。
忘れもしない、この日はiPodでエレファントカシマシのお気に入りのアルバムを聴いていた。
待つこと数十分。
バス、遅いな。
あまりに遅いのでふと顔を上げて周りをキョロキョロした。
すると隣に座っていた女性と目が合い、
「遅いね」とお互いバスが遅いことを確認し、それで安心する理由にはならないのに、なんだかまだそこでバスを待ってて良いような気持ちになった。
待ち続けること更に数十分。
それにしても、遅い。
気づけばアルバムが最後の曲になっていた。
どこにバスを待つだけでアルバム1枚聴き終えるやつがいるんだ!急に我に返った。
私だけじゃなくて、ここで待ってる人たちみんな、どうかしてるぜ。
するとバスのルートの上流からなにやら親切な人が歩いてきて言った。
「今日はバス休みだよ〜」
その停留所にいた人たちがみんな、
やれやれ…って感じで全員立ち上がって解散した。
いや、バス休みってどっかに書いとこ?
そして待ってる人たち、できればネイティブの方、気付こ?
おかげで腕に日光湿疹ができた。
真夏のオーストラリアは陽射しが強い。
バスは嫌いだ。