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フォトグラファーがあたらしい挑戦のためADとしてantsに加入した理由とは

広告業界でフォトグラファーとして活躍中の西谷さんが、antsにアートディレクターとして加入することになりました。これまでのキャリアや、アートディレクターに対する思いなどを語ってもらいました。

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ーこれまでのキャリアを含め、自己紹介をお願いします。

こんにちは!AD(アートディレクター)兼フォトグラファーの西谷です。

もともとこの業界には、デザイン会社の営業職として入りました。英文学科出身で、デザインは分からなかったけど広告業界に興味があったので。

そんな中でちょうどインターネットが盛り上がり始めたタイミングに、社長がグラフィックデザイン会社でも、ホームページ制作できるんじゃないか?と言いだし、ホームページ制作部署を立ち上げました。独学で勉強し、手書きでHTML書いてPhotoshopも覚えてとひととおりできる状態になりました。

某大手印刷会社と協業でのホームページ制作の取り組みを始めたりと大きくもなったのですが、社長が高齢だったこともあり、最終的に会社は解散になりました。そこで見よう見まねでホームページは出来たけど、次はグラフィック広告をちゃんと勉強をしたいなと思って、ZOOMというグラフィックプロダクションに転職しました。

はじめてゼロからデザインを勉強し、イラストレーターを覚えて、サムネイルの書き方や企画の作り方、フォトグラファーやスタイリストなどのスタッフ対するディレクションの仕方っていうのを急ピッチで覚えていきました。

ーその頃はどんな仕事をしていたんですか?

Panasonicさんの仕事が多かったですね。ADになってはじめての仕事も、浜崎あゆみさんが出演するLUMIXでした。東京にも進出してバリバリとやっていたんですが、自分的に一区切りついたタイミングでZOOM時代の同僚というか相方みたいなやつがいて、そいつともう1人Webデザイナーと3人で大阪に戻って会社を立ち上げることにしました。3人ではじめたからThree & Co.と言う会社です。

ーThreeではどういう事業を目指したんですか?

当時、関西にはブティック系のデザイン会社があまりなくて、クライアントさんの作りたい広告を作りますっていうスタイルが主流だったんですね。そこに30 歳、31 歳、27 歳の 3 人で自分たちの世界観はこうだ!って言うのを主張するスタイルで行きたいなと。

見え方から自分たちでブランディングしました。服装を黒中心にしたり、ちょっと派手目な車に乗ったりとか、若かったこともあってハードな感じがかっこいいと。全体にヒールな感じのブランディングにしました。営業スタイルも、待ってても仕事はなかなか来ないので、かつての先輩がやっている案件でも代理店のCDに「競合にしてくれ」と直接お願いして勝負すると。あまりもめないようにしてたつもりですけど、ざわついてはいましたね。

皆さん面白がってくれたりはしたものの、やっぱり30前半の 3 人がやってる尖った会社には限界もあって、自分にはそんなに大きな仕事はなかなか来ず、表現のアウトプットが限られてしまういう問題に直面しました。「どうしようか?」って仲間と喋っていて気がついたのが、僕は写真が好きだったと言うことでした。

ーカメラ好きだったんですか?

カメラと言うよりも写真が好きになっていたんです。先ほども言ったように、ADと言っても大学や専門学校でスケッチやデッサンを学んでいない。わかりやすく言えば、絵が描けないんですよ。

そうなると、自分の頭にあるビジュアルを表現しようと思うとPhotoshopを使って写真データを加工合成して見せる必要がある。それを他のデザイナーが絵を描くのと変わらないスピードでやるを繰り返すうちに写真と触れる機会が多くなり、写真が好きになっていました。

他にも、特にZOOM時代には著名なフォトグラファーさんにオファーすることが多くありました。ディレクションをするには、こっちもカメラのことを分かって同じ言語を持っておかないと失礼だと思って勉強したこともあり、それなりに知識はありました。

そのうち、ちょっとした提案をする時に、自分で撮ってそれでカンプ(ラフ)を作って提案をしはじめると自分の思い通りのものができて満足度が高いわけです。ほぼ撮影前にイメージが出来上がってしまう。これは良いぞと、代理店さんからも「自分で撮っちゃえば、どう?」ってクライアントさんに提案してもらい、そこからカメラマン業務も始めることになりました。

だんだんと社内外からも声がかかるようになってきて、最終的に他のデザイン会社さんから、タレントを撮影して欲しいと頼まれて東京に撮影に行った帰り道に、写真の道面白いなってあらためて思ったんです。このままAD を続けるより写真の道に行く方がチャレンジングだし、仲間たちも応援してくれたことも後押しになって38歳でThreeを卒業してフォトグラファーとして独立。そこから10数年フォトグラファーをやっているという感じです。

ーアートディレクターに未練はなかったんですか?

未練はなかったですね。性格だと思うんですけど、新しいことするのが好きで、飽き性でミーハーなんで、あたらしい面白いものがあるとそっちに夢中になっちゃう。やってみないとわかんないでしょ!って守るタイプより進んでいくことの方が好きなタイプだし。やっぱり40代直前に気合入れて人生かけてやってみた方がなんか見えるかも!って。

ー10年以上写真をやってきて、今回どういう思いでantsに?

フォトグラファーでやってきたこの10数年って、元々ADだったって言うことは写真に集中したくてあんまり表立っては言ってこなかったんです。もちろん、元々知ってくださってる方々からは「デザインはもうやんないの?」って話はちょいちょいもらっていたんですが、全部断ってました。

でも、北尾さんだけグイグイ来るから「分かりました、、、」ってことで、自分が直接手は動かさなかったですが、その都度チームを組んでディレクションをするということをやっていました。2年くらいやってましたかね?

そしたら、北尾さんといっしょに年末にやったディレクションとカメラを両方やった作業がすごく楽しくて何か可能性を感じていたのと、その上で年始に北尾さんから「フォトグラファーやめてアートディレクターやるのはどう?」と話をもらって。

ー焚き火を囲みながら語りましたねぇ(笑)

語りましたねえ。それまでは自分はフォトグラファーだからってずっと断ってたけど、ちょっと待ってよ、もう写真は10年以上やっていろいろと見えてきた部分あるなぁと。

例えば、写真だけじゃなくてムービーのカメラもやっているんですが、ムービーの中での文字の入れ方とかもうちょっとこうやったら伝わるのにとか、トータルで考えることでもっと良くできることってあるよなぁって言う気持ちはここ最近ぼんやりあったんですね。

そんな思いもあったので、あの晩に、次の10年をどう生きるか?を一晩考えました。結論、フォトグラファーとかアートディレクターとか分けずに全部ミクスチャーしていくのも1人のクリエイターとして面白い存在なんじゃないかと。もちろんフォトグラファーも続けながら、あたらしいことに挑戦しようと。そんな流れでADとしてantsでやってみよう!と行きつきました。

ー確かに昔は、カメラ機材も高くそう簡単には始められないし、デザインも写植や印刷など専門的な領域だしと、職種として分担されるべきだったけど、今の時代は、デジカメとAdobeさえあれば1人で作りたいもの作れちゃいますよね?

そう思います。デジタルネイティブの子たちは写真撮るし、編集するし、監督するし、ライトもする。そういう流れを「クウォリティが低い」って言う風潮もあるけれど、それは過渡期だからじゃないかなと。ストリートから生まれたものが文化になっていった事例はたくさん見ているし、そっちの方がおもしろいですよね?

肩書きとかジャンルの垣根なんて関係なく、その人がクリエイターとしてどういうものを作るかの方が大事っていう時代になってきているんじゃないですか。

ーちなみに、ハイブリッドでADとフォトグラファー両方やっていて、それぞれに意識は変わるんですか?

これはまさに今、自分の中の課題です。撮ってる時はフォトグラファーなんですよ。「どういう性格の人かな?」「どう入り込んだらいいかな?」って瞬時に感覚的に考えていくんです。その人をより良く撮るために。被写体に対して純粋に向き合っている感じ。でも、その瞬間には、広告としての落としどころをどこにみたいな冷静な視点とはちょっと違ってしまっている。ここのバランスをどう取っていくか?に、悩んでいます。

でも、なんとなくの答えはあるんです。それは、仕事に介入する段階をもうちょっと上流にしていくことかなと思っています。昔だったら広告代理店さんがやっていた領域に自分が入って、クライアントさんと直接会話する。そうすることで、クライアントさんの思いとか成し遂げないといけない事とかが自分の思考にもっと入ってきて、その状態で写真に向き合うことでアウトプットも意識せず変わってくるんじゃないかなと思っています。

antsだと北尾さんもそういう形でクライアントさんと向き合っているから、これは実現できそうな気がしています。

ーどんどんやっていきましょう!自分は完全にクライアントに当事者意識を持ってCMを作っています。

ですよね、それが大事なんだと思います。CDとかADとかの領域よりも、コミュニケーションを生み出す人たちですという役割で入っていくのを目指して行きたいです。

ーちょっとお試しでやってみましたが、antsの空気はどうですか?

みんなめっちゃ明るいし、優しいし、本当にすごい居心地いいですよ。特に先月は、結構なハードスケジュールにもかかわらずみんな一生懸命やってて感心してます。

みんなプロダクションマネージャーとして、能力高いしキャパもあるので、そこにプラスして、例えば「デザインって何だろう?」「オシャレって何だろう?」「このかっこいい感じって何だろう?」「なんかこれいいよね、あれいいよね」って言う感覚的な部分を自分が提示してあげたり見せてあげることで、みんなの感性を刺激してあげられると、技術や根性はある人たちだからもっともっと強くなるのかなと。

ーそれは期待する部分ですね!やっぱり我々はものを作っている会社なので。ちなみに自身のお仕事における信念ってありますか?

例えば会議でみんながAでしょって言ってても、自分はどう考えてもBが良いって思ったらその時は「Bじゃないですか?」ってハッキリ言う。

その時に、絶対気をつけているのは独りよがりにならないこと。なぜBなのかを自分の好みとか自分の考えだけでなく伝えるにはやっぱり世の中をちゃんと見ている必要がある。この業界にいると内にこもって作業しちゃって外の情報が入ってきにくくなることって多いと思うんですね。

だからいろいろなところに遊びに行ったり見たり食べたり、友達とワイワイしたりとか自由時間を多く持つことによって、世の中を知り、結果、自分の思ったことをちゃんと曲げずに言う。そんなことを大事にしています。

ーありがとうございました。

はい!写真でもアートディレクションでも、まずは、何かお力になれるお仕事ありそうだったらご相談ください。よろしくお願いします!

西谷 圭介 Keisuke Nishitani
奈良生まれ、シンガポール育ち。デザイン制作会社でアートディレクターとして広告制作に従事しながら独学で写真を学びフォトグラファーに転向。主に広告写真、スポーツ、ポートレート、CMなどで活動。セオリーにしばられないライティングとエモーショナルで動的な表現を得意とする。

グラフィックデザインのビジュアルディレクションもおこない。2022年から自身のARTWORKとPHOTOGRAPHYを発信・プロダクト化する場として「ARKTIFY」をローンチ。2024年から自身の活動領域を広げるべくants creation ではArt Directorとして活動を開始