SF未来日記 - 雨はいずれ海に向かう
*
法律から今夜のご飯まで、
したたかに張られた包囲網。
気付いた頃には身動きが取れず、
あとは自動的に
私は時代の側溝へと流された。
私にも貧困という言葉が
よく似合っている。
でも、知っていた貧困とは
全く違った。
・・・実は、何も
不便はしていない。
何も束縛されていないし、
生活はベーシンクインカムで
やりくりできるから、
体も至って健康なわけだ。
少々節約しては、
社会的価値のある企業に出資し、
リターンを貯めて、
趣味などに浪費したりもする。
仕事はする必要がなくなった。
そういえば聞こえはいいけど、
私などが必要とされる仕事は
すでに社会にはない。
大規模な雇用があっても、
私は評価の対象にもならない。
そりゃーね。
ロボットやAIが労働する方が
圧倒的にコスパが良いもん。
だから、私は、
私の代わりに労働する彼らに
出資などをして、
間接的に社会に貢献する。
*
「人間とは」という
流行りのテーマの広告を避け、
本日見つけた動画は
「貧困の再定義」
まさか、自分が貧困だなんて。
いや、意外ではない。
例えるなら、放牧されている獣。
与えられた牧草地を、
自由とは言わない。
確かに、仕事をやめて、
遊んで暮らしたいと思ってた、
実際、こんな形で実現するとは
思わなかったもんなー。
もう、毎日
生かされているという感じ。
*
毎日、郵便ポストには、第三の選択肢の勧誘が
政府から配達されている。
- 肉体を捨てて、
クラウドに意識をのせる -
とな。
勧誘の裏には、
こうも書いている。
- 肉体を手放すことで、
環境に良くて、
経済的負担も減ります! -
つまり
あなたはもはやただのゴミです!
っと優しく宣告してるわけだ。
感情論は横に置いておいて、
社会から自分を見たら、
肉体を手放す方が、
自然な行為に見える。
倫理的なことはよくわからんが、
その点の法整備もぬかりない。
最後は、私の決断が尊重される。
永遠の意識は保証されるし、
どうせ遅かれ早かれ、
行くんだよみんな。
なんか、もう飽きた。
もういっかーって感じ。
向こうでもやれることは
別に変わらない。
むしろ面倒から解放されて、
自分のやりたいことが
全部できる。
肉体じゃないと
できないことなー。
いやー、
ないなー。
*
終わり