BNK修行記(世界選抜総選挙の次の次の次の日の話)
日本
東京
秋葉原
JAPAN
TOKYO
AKIHABARA
東京にはたくさんの外国人旅行者がいる。
知っていた。
知っていたのだがここまで多かったとは。
そう自覚する場面がつい最近、東京は秋葉原、日本の中で京都に次ぐと言っても過言ではないであろう、日本を代表する観光地、東洋一の電気街、COOL JAPANのど真ん中、KAWAIIとMOEに溢れし街、秋葉原で体験することになる。
AKB48グループ世界選抜総選挙。
2018年の選抜総選挙は世界選抜総選挙と銘打たれた。
そして今回の世界選抜総選挙を「世界」たらしめたのはBNK48の力だろう。
チャープランが39位に、ミュージックが72位にランクイン。
選挙の結果はもとより、事前のYoutube政見放送の再生数、BNK48のチャープランが断トツの1位だったことで48界隈をざわつかせたのは記憶に新しい。
スマートフォン1つで18票投票できる日本のヲタク有権者に対してタイから投票するには輸入CDに付いている投票券のみという、生半可ではない相当なハンディマッチ。
それでもタイで国民的アイドルになっていることを鑑み、たとえ一人一票でもチャープランはなんとかランクインするのではないか?
ミュージックも日本にいるファンと現地ファンが連携しているからランクインするのではないか?
予想は当たり、ミュージックがランクインした時に思わずガッツポーズして「チャープランは30位くらいまである」と言った。
39位なのは大健闘。BNKメンバーの票は×4の価値があると言っても過言ではない。
完全なノーハンデマッチだったら確実に神7にチャープランがいたはずだ。
世界選抜総選挙と銘打った割にゲーム設計が悪すぎて、海外48躍進みたいなニュースにならなかったのは残念だが、「仏の顔もチャープラン」とでも言うべきか、仏教国の超意地みたいなものを感じることができた。
そして音楽に、ミュージックに国境なし。それを証明した。
さて、そんな世界選抜総選挙が終わった次の日。
BNK48及びTPE48メンバーは「総選挙ありがとう握手会」には参加しなかった。
……。
アホかと。バカかと。
選抜総選挙のことは嫌いでも海外48と握手することは嫌いにならないでください!
嫌いどころか、したくてしたくてたまらなかったのに。
渡航費考えると、日本で強制的に握手会やってくれると助かるんです。
大東亜共栄圏の負い目があるのか、アジアの同胞に握手会参加を強制することはできなかったのです。先の大戦は仕方なかったのですが日本が負けたのです。
そのまま中部国際空港からの帰国もあるのかと思っていたが、そこはそれ。SNSは世界を結んでいるわけで。世界から日本に来ている外国人と日本にいる日本人も繋がっているわけです。
新幹線移動しているInstagramの画像を見て「東京にBNKが来るぞ!」となったわけです。
さっそく自転車にて秋葉原へ移動。
秋葉原駅前のAKBカフェ&ショップ前で路飲みを始めたのです。
選抜総選挙時期なので選挙ポスターが店頭に飾ってある。
きっとここに来て記念撮影をするに違いない。
そもそも、日本に来たのなら絶対に訪れたい場所であろうし、「48」を背負いし者が来なくてはいけない約束の場所、そうそれが秋葉原。
総選挙翌日ということもあってか、AKBカフェにはたくさんの人、ヲタク一般人問わずたくさんの人が選抜総選挙ポスターの前に群がっていた。
見るからにヲタクな人も一般人も外国人観光客もポスターに群がっているのを見ると、やはりクールジャパンとは政府お墨付き以外のジャンルからしか生まれてこないなと思うのであった。
暴利貪る運営の手のひらで札束の殴り合いを行う選抜総選挙だからこそ生まれた熱。秋葉原から湧き上がった地熱
品行方正なアイドルでは、世界に届くことはなかったであろう。
それは、唯一世界的アーティストゾーンに足を踏み入れたアイドル、BABYMETALを見ても分かる。
まあ、さくら学院は「品行方正の極み」みたいな優等生タイプアイドルだったが、それを逆手に「Death Death」叫ぶデスメタルアイドルユニットを作ったら世界で受けたという。
秋葉原駅前の人の流れを、アルコールを喉から流しながら眺めてみる。外人さんが多い。外人さんが多い、以外の感想は実質ない。それくらい多い。
17時を大分過ぎたくらいで、その多さから、特定の外人さんを見つけることは無理だと諦めてしまい飲み屋へとレッツ・ゴーする。
あとからBNKの支配人のインスタに秋葉原駅前の画像が上がっていた。ずっと待っていたらBNK一行に会えたのかもしれないがそれはそれ。これはこれ。俺たちヲタクにはアルコールが必要なのである。
18日月曜日。
平日。通常ならこの日にでも帰国したかもしれないが、ランクインメンバーはフジテレビONEの生放送があるので、帰国は早くても火曜日朝と予想できた。
とりあえずメンバーのインスタをリロードチェック。
ここでなんとBNK48サッチャンが渾身のヒント、否、正解を投稿する。
秋葉原駅から乗車した切符の画像を上げたのだ。額面は170円。
秋葉原起点で170円の駅となればこれはもう原宿だろと。新宿かもしれないが原宿だろと。
海外、日本ということで、メンバーは自分の居場所を堂々とSNSにアップする。
これは日本という南国の空気がそうさせているのだろう。旅の恥はかき捨て効果。
「原宿の駅前ステージで、私たちに会いに来て」と歌っていたどこぞのグループに通っていた過去を思い出しながら、東京で遊んでいるであろうBNKメンバーを探す旅に出たのでございます。会いに行くのでございます。
原宿→渋谷を歩きながら、それっぽいタイの女の子集団を探して、いざ見つけたら「Wow!BNK48?I Saw選抜総選挙!」みたいな感じで、偶然気づいた日本の48ヲタとして声をかけようと画策したのでした。
結果をお伝えしましょう。
原宿。渋谷。
それっぽいタイ人が、アジア人が、観光客が数多の天の川の星のごとく、日本人5割に対して外人5割と言っても過言ではない、超高比率外人さん現場、そうそれが現代の東京。NeoTOKYO。
「は、はめられたー…」
スマホに目を落とさず、渋谷の街を特定のタイの女の子を探すという行為をしてみて分かったことは、渋谷の街はタイ含めたアジアの観光客だらけ。
「タイっぽい女の子の観光客集団」なんてものは、全然珍しくもなんともなく、それっぽい集団を探そうとしていた私は東京に住んでおりながらようやっと気がついたのです。
この東京で特定のタイ人を探すことの難易度は体操技の「シライ」に匹敵する。
今の渋谷は若者の街ではない。
ただひたすらダイバーシティだったのである。
渋谷の街を歩きながら「あー、こりゃ無理だ。ミュージックチャープランの2人ならギリギリ気がつけるかもしれないが、ここでカイムックやサッチャンとすれ違っても無理だ。無理っすわ」と諦めムードになるっすわ。
そして諦めた。渋谷のHMVで無銭のアイドルイベントを眺めて非生産な1日を終えたのである。
日本は、TOKYOはすでに超観光地。それに気がつけたのはBNKのおかげだ。
そう考えれば怪我の功名とも言えよう、言えない、バカ、言えるか、会えなきゃ意味ないんだよ。
東京の街なかで見つけることができないのならどうすればいいか?
答えは簡単、空港である。空港待ち伏せである。
なんか、外国から来たアイドルに対してならやってもいいというあれ。
あれしかねー。もう手段なんか選んでいられない。
翌19日。
午前9時過ぎには羽田国際線ターミナルに到着。
電源シートに座りひたすら待つ。待つ。待ち続ける。
来ない。来ないってことは今日帰国じゃない。
しまった、成田か?成田離婚ならぬ、成田離陸か?離陸はまあ普通の空港での出来事でございますが。
羽田にいる自分を呪って呪って、異常に高額な空港までのモノレール代480円でどんなランチを食べることができただろうと悔い、愚行に思いを馳せようとしたら、またここでも文明の利器、文明の利器から発せられる思念を具現化するアプリ、インスタが私を誘う。
サッチャンが投稿したストーリーの画像が明らかに秋葉原。
秋葉原観光!その手があったか!
そうと分かれば、我が庭であるところの秋葉原、どこにいても絶対に見つけてやるぞと息巻いて急ぎUターン。
往復のモノレール代960円を見事に溝に、側溝に捨てて、自転車でも行ける秋葉原に舞い戻る。
基本的には駅前の、AKBカフェ前の選抜総選挙看板前とアニメイトと虎の穴の前、及びAKB劇場があるでお馴染みのドンキホーテあたりを徒歩にて詣でけり。
インスタをチェックしつつ、駅前あたりで数時間。
いない。
秋葉原観光は終えてもうどこか違うところに行ってしまったのだろうか?
事実、この日の夜のインスタでカイムックは浅草観光の画像を上げていた。
どこや、どこにおるんや、BNK……。
秋葉原でいもしないAKBを必死に探すやつは、初めて東京に出てきた人の中では、実は結構いる気がしている。
あるいは、ギャグっぽく「秋葉原だからAKB探そうぜ」と嘯く輩も数多いるのだろうけれども、まさかまさかの、秋葉原でBNK48を探しまくる、AKB48大好きマンこと私。
何度駅前とドンキ前を往復したか。
ぼちぼちBNKの幻覚でも見始めるかと思ったら、AKBカフェ前にマスクをした少女の姿を見つけた。
「(ジェニスだ!)」
5月のタイフェスでBNK48を初めて見てから約1ヶ月。
短期間の集中講義を自らに課すことによって私はなんとマスク姿のジェニスを遠目に見て「ジェニス」と判別できるほどになっていたのである。
そしてその人はジェニスだったのだ。
ジェニス。
Jennis Oprasert。
เจนนิษฐ์ โอ่ประเสริฐ。
BNK48の副キャプテンで歌唱メンということは知っていた。それ以外は実質知らないに等しい。
しかしてしかし、AKBカフェ前にいたマスク姿の人はジェニスだったのだ。
自分でも驚いた。
これなら外人さんの人海の中でも私はBNKメンバーを発見できるのではないだろうか?
今後は麻薬探知犬のごとく、空港問わずBNKを探知する人として生きていけるのではないだろうか?だろうかnotんなわきゃない。
だって。
だってですよ。
マスクジェニスですよ。
ミル・マスカラスじゃないんですよ。
獣神サンダーライガーじゃないんですよ。
ケンドー・カシンじゃないんですよ。
グレート・サスケじゃないんですよ。
スーパー・ストロング・マシンじゃないんですよ。
マスクドジェニスじゃないんですよ。
マスクジェニス
な・ん・で・す・よ!
正直、あなたはあなたの推しメンをマスク姿でも見分けるかもしれませんが、私は自分の推しメンがガッツリマスクだったら気づける自信がない。
BNKへの強い思いが、想いが私に一時的な特殊能力を与えてくれたのかもしれない。
ジェニスはジェニスでもマスクをしたジェニスに気づける能力。
マスクジェニスはAKBカフェ併設のグッズショップに入っていった。
単独行動である。
ここらへんはタイ人あるあるなのか分からないが、人間関係も知らないから本当のことなど到底分からないが、後からインスタを見比べていくと、結構単独行動で東京観光しているという。「へー、そうなんだ」である。
店内に入ったのを見届けたのならば、することは唯一つ。
店内から出てくるのを待ち伏せる。のみ。
AKBカフェ前で話しかけるのは、いかにも48ヲタクがいる場所なんだから向こうもそこまで嫌がらないだろう。本心などもちろん知らぬが、異国で現地のヲタクに話しかけられるのはそんなに嫌なことではないのではないか?
などと自分を納得させながら店外待機。天涯孤独の身で。
幾分が過ぎた後、ショップの袋を下げてマスクジェニスが出てきた。
三文芝居よろしく、さも偶然AKBカフェ前にいた48ヲタを装っていざ声をかける。
「そーりー。あーゆーBNK48?」
発音などを鑑みると、あの時の私の話した英語ははっきり言ってカタカナ英語ではない、ひらがな英語だったろう。緊張もあったが。
するとマスクジェニス、少し慌てた様子で「Ah,Yes」と答えた後申し訳無さそうな顔で「No make」とジェスチャーしてきた。
日本以外撮可でお馴染みの撮影文化。芸能人がいたら即撮影なのが常識なのかもしれない。
おそらくは私が「Photo please」と言ってくるのを予想して機先を制してきたのであろう。
「あ~、いえすたでい、あいうぉっち選抜総選挙」
「Ah,Oh,Thank you」
「BNK48べりーぐっど。あいむはっぴー。握手いいですか?」
とここでHandshakeがとっさに出てこないあたり、さすが日本大学を卒業しただけあるなと自嘲。
「OK」
と了承していただき、なんとBNKメンと初の接触、握手をしてもらう。
「ขอบคุณค่ะ」
…。
……。
キター!
来ました、きました、キマりました!
タイの女性、タイのアイドル、タイの国民的アイドルから直に、生で「コップンカー」を言ってもらったのだ。
こ、これが、これがあの、かの有名な「コップンカー」。
それを、BNK48の中心メンバーであるジェニスから言ってもらう。
しかもしかも。
しかもですよ。
手はあの合唱の形。
そう、タイの挨拶「ワイ」の形で「コップンカー」と言ってくれたのだ。(「ワイ」については後から教えてもらった)。
秋葉原にバンコクの風が吹いた瞬間。
「さんきゅー、さんきゅーべりーまっち」
と舞い上がった私は、ここはあえての日本語返しでも良かったのではないかと後で思いもしたが、兎にも角にも謝意を伝えることには成功した。
だって生「コップンカー」ですよ。
それを我が第二の故郷秋葉原でタイの現役国民的アイドルから直で言ってもらう。
しかも1対1。1タイ1日本。
嘘偽りなく、心の中で「(生コップンカーキター)」と叫んでいた。
テンションぶち上がり。
羽田空港空回りも報われた瞬間である。
マスクジェニスはそのまま秋葉原駅の方に歩いていったのであった。
手を振り見届けた私はといえば余韻に浸るわけでもなく、すぐさま他のBNK48メンバーを探すべく、秋葉原の街をさまよったのでした。
結論から言うと、その日AKB48劇場にBNK10人全員が見学に行ったのだが、その入待ちみたいなことはできなかった。
勘が悪すぎてその重大な場面を逃したのである。
チャープラン…。ミュージック…。
それに関しては己の勘が悪すぎるという、どこをどう考えても自分が悪いので、今はただ当時の自分の行動を非難しつつ、今となってはジェニスありがとうという気持ちでいっぱいである。
48は46、坂道に押されていると言われている、もしくはそのように肌で感じている人がいるのかもしれないが、視点をちょっと海外に移せば、48が全盛期を迎えようとしている世界線が存在している。
存在しているんです。
視点をちょっと海外に向けた私は、わずか1ヶ月少しでジェニスではない、マスクジェニスを街で発見するスキルを身に着けた。
すなわちそれは、まだまだヲタクスキルを、ヲタク力(をたくりょく)を上げることができるということの証明だ。
PRODUCE48に挑戦する48メンバーのように我々48ヲタクも海外留学をしてヲタク力を上げていかなければいけない局面のかもしれない。
少なくとも、国内での短期間修行でマスクジェニスまでBNKへの知見レベルを上げることができた。
海外には無限の可能性がある。
慢心せず確信。
次はサイゴンやな…。
いざ行かん、ベトコンの本場、ベトナムへ。ホーチミンへ。