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黒田 美紀のアンティーク・ストーリー マルカジット篇

皆さんこんばんは。
今回はマルカジット・ジュエリーのデザインについて、書いてみようと思います。その前にマルカジットについての歴史と特徴を先に書きました。
「細かいことはあんまり…」という方は、読み飛ばしてくださいね(^_-)-☆

Marcasite と書いて
『マーカサイト』⇒英語読み
『マルカジット』『マーカジット』(Markasit)⇒ドイツ語読み
みんな同じですが、当店では『マルカジット』とします。


Marcasite とは?

「キラキラと輝く、地球が生み出した天然の鉱物」
銀色で金属光沢のある、その昔ダイヤモンドの代用として使われた鉱物です。

基本情報

・『黄鉄鋼』(現代ではマルカジットは『白鉄鉱』を指します)
・硬度:6〜6.5(モース硬度階級) ダイヤモンドは10
・六面体にカットされて、シルバー台にセットされている

特徴と魅力

・太陽の下だとシブい
・暗いパーティー会場やお食事の席で光に当たると、強い輝きを放つ
・その輝きはダイヤモンドと見まがうほど
(昔はダイヤモンドもシルバー台にセットされていた)


こちらのブローチは先端にダイヤモンドが使われています。
マルカジットと似てますね(笑)

Gold&Silver
パール、ルビー&ダイヤモンド ブローチ
19世紀後期 ヨーロッパ

歴史的背景と特徴

独断でわかりやすい様に3期に分けてみました

一期(18世紀~19世紀中期)

ヨーロッパの貴族に人気
・18世紀頃、貴族の旅も馬車。盗賊に襲われても被害を最小限に抑えるため、ダイヤモンドの本物をオーダーした際、旅用に同じデザインで作った。そのころの物は今はなかなか手に入りません。

二期 (19世紀後期から20世紀初期)

20世紀初期までの物が、アンティークジュエリーとして認知されています。
立体感があり、アウトラインに流れがある。
作りが繊細。
・手作業による精緻な技法(石の数種類のサイズの石を使用。爪で留める)
・19世紀後期
ブーケ、花、葉、動物、ボウ(リボン)、鳥、羽根のモチーフで流行。
大きめ、曲線、女性らしい

こちらも小さめ
耳と牙は石を入れずに、ツヤをプラス♡
象も幸せの象徴なのです
可愛い
でもなにこれ?象にリード?
いえいえ、これはセーフティーチェーンなのです。
今ではブローチを落とさない為に、シリコンストッパーを付けますが、それが無かった時代に使っていたものです。ほら、先端に安全ピンの赤ちゃんみたいなのが付いているでしょう?
ちなみにこのチェーンは着脱可能です。
本体の内側にその名残があるお品はたくさんあります。
ちょっと脱線

Silver&マルカジット象ブローチ
20世紀初期
英国


・1900年頃
生き物(虫、動物、鳥、トカゲ)モチーフが流行

幸せのモチーフ
Silver マルカジット アイビーブローチ
20世紀初期 英国
SOLD


・1930年頃 
アールデコ様式の影響を受け、 幾何学的で精密な構成
・シンメトリーの重視
・エレガントで控えめな美しさ
・上流階級のアクセサリー
・フォーマルな装飾品
・エレガンスを表現

アンティークのマルカジットのブローチにしては、透かしが美しく重さをを感じさせない。
美人ブローチ
養殖パールながらこのころは、巻きが厚い。
Silver,マルカジット&パールブローチ
20世紀初期 英国
SOLD

三期(20世紀後期)

・当時は1930年代の品のリプロダクションともいわれた
・機械技術の導入により以前の作品と比べてラフ
(石のサイズのバリエーション少ない、接着留め)
・アウトラインがすっきりしたデザイン
・あと数年でヴィンテージとなる
・現代女性のファッションに合わせやすいデザイン
・品質の差が激しい
・自立した女性に似合うデザインが多い


こちらはすでにヴィンテージ。
こちらのグループよりは少しお姉さん。
チェーンとの接続部分のつくりも秀逸。美意識は細部に宿る。
横から見てもきれいなのです。
Silver、マルカジット&マザーオブパール(M.O.P)ネックレス
20世紀中期 英国

デザインについて思うこと

アンティークだからってクラシカルに装うのではなくて、仕事にプライベートに全力投球している女性に着けていただきたい。
そんなことを考えていたら
ふと、大谷真美子さんの黒のパンツスーツ姿の画像を見て、
彼女にマルカジットのネックレスを着けて欲しくなった。
そして思った。
今のファッションに、すっきりしたマルカジットのネックレスが合う。

無地のロング丈のお洋服に、甘さを排除したマルカジットのネックレスがチラリ。クールでカッコいい。マルカジットのネックレスは、みんな短め、だからどうしても視線はお顔周りにいきます。
デコルテがきれいでパーンとした張りのある首だからこそ、ジュエリーと首の境目も美しい。

アンティークの常識からはちょっと離れてしまいますが、お客様の視点から考えると、作りを厳選すれば20世紀後期(三期)のネックレスをヴィンテージのコスチュームジュエリーと同じ位置づけで取り入れてみても良いのかな?と思っています。
一月のロンドン仕入れで、探してみようかなと思います。


Antiques MIKI
黒田 美紀

注意
こちらは、作者の思いの詰まった文章です。
許可なく転載することはお控えください。



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