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黒田 美紀のアンティーク・ストーリー -金細工編-

こんばんは。

獲得メダル数に沸いたパリ・オリンピック。
当店の看板商品である、Gold ピンクトパーズ マフチェーンとそのオリジナルボックスを共に撮影したら、日本選手団の健闘を称える写真になりました(笑)
アンティークのお品で、箱付き=大切に保管されていた証にもなります。
更にマフチェーンの箱付きとは、激レアなのです。
欲しいと思ってから手に入れるまでに、十年以上かかりました。

さて、前置きはそのくらいにして、
この『黒田 美紀のアンティーク・ストーリー』シリーズ、
いよいよ今週から内容が『素材』になります。

素材に関しては、価格等刻々と状況が変わるため、
ネット検索すれば簡単に出てくる事柄については控え、
アンティークならではの内容に絞ってまとめてみました。

「細かいことは、興味ないわ」という方
せっかくのご縁ですから
最後の『細工はアンティーク・ジュエリーの真髄』だけでもお読みいただけたら嬉しいです


1.Gold の特長

  1. よく伸び加工が容易。1gの金を、3000mの線に。0,0001mmの厚さに。桁間違っていません。本当にビックリです(⊙o⊙)

  2. 耐久性が高い

  3. 強度を上げるための合わせる金属によって色が変わる

金鉱脈発掘の歴史

1848年 砂金鉱床の発見 カリフォルニア
1851年 砂金鉱床の発見 オーストラリア = ゴールドラッシュ
1886年 金鉱脈の発見 南アフリカ(全世界の金産出量の半分を占める)
    シドニー・シェルダンの小説『ゲームの達人』を思い出します♪

2.技法の種類

①カンティーユ Cannetille 又は フィリグリー Filigree

 金の特長を生かし、細い金線をよじって網目状にし渦巻き、紐、花模様を型取って透かし細工にしたもの。線条細工の一種。
金が歴史上最も希少だった1800~1840年頃、少ない金で華やかに、効果的にみせるための技術。
見た目よりずっと軽い。
細工だけ見ても楽しめます。裏を眺めながら「うふ♡こうやって作ったのか」と。
そもそも、今この細工を作ろうと思ったら、工賃どれだけ?
です。
実用面では、少し大きめのブローチなどは、冬の厚手の生地でないと『お辞儀』して使いにくいのですが、この工法だと軽くできるので、ボリューム感があっても、いろいろな生地に着けて楽しめます。

Gold アメシスト、エメラルド&パール カンティーユ・ブローチ
19世紀初期 英国
なんと サフラジェット(女性参政権運動)カラー
Give (green)= エメラルド
 Women (white) = パール
 Vote(Violet)= アメシスト

サフラジェットの時代より数十年早いのです。
留め具が車留めに交換されている&パールが後付けの様に思うので
1900年頃にはサフラジェットとして使用されたのかもしれません。
憶測です


K18Gold  フィリグリーネックレス
1900年頃 フランス
フレンチのネックレスのつくりは『フィリグリー』と呼ぶことが多いような。
こちらは部分の拡大画像です。

②レポゼ Repouss'e

薄い金の板を裏から打ち出して、立体的に型抜きをして、デザインをつける技法。
これも少ない金で華やかに見せることができる技法です。
一見シンプルな工法ですが、当初は時間も手間もかかった様で、高級で大きさのある西洋ジュエリーにのみに使われたようです
ブローチのフレーム部分に見ることが多い様に思います。
下の写真は、
おそらくレポゼの原始的作品

Victoria and Albert Museum  公式HPより引用
Gold  Ornament
ガーナ 1874年以前


Gold ハードストーン・カメオ・リング
レポゼの参考例
ビクトリアン時代のレポゼは、裏を金属で塞いであります。
中空です。それにより金の使用量を減らすことに成功しています。

③粒金 Granulation グラニュレーション

1mm以下の小さな金の粒を並べて、装身具などを装飾する
古代イタリアにあったエトルリアで考案された技法。

〖黄金伝説 古代地中海世界の秘宝 THE GOLDEN LEGEND〗展 図録表紙
以下図録より引用

Gold ペンダント 
紀元前6世紀~5世紀
シリア、エジプト
ライデン国立古代博物館蔵

2015年秋に上野の国立西洋美術館にて、
〖黄金伝説 古代地中海世界の秘宝 THE GOLDEN LEGEND〗展
が開催されました。
同時期に同じ上野にある東京国立博物館にてあのブルガリの『130年にわたるイタリアの美の至宝』展も開催していたので、
「午前と午後各3時間ずつ観て、一日で…」なんて目論んでおりましたが
甘かった(>_<)
お正月とクリスマスが同時に来たような感じでした。
結局そろぞれに丸一日をかけて堪能しました。

ブルガリ展も美しく大きな宝石づくしで、発狂するくらい素敵でしたが、
この黄金伝説の展示内容の素晴らしさは、頭をハンマーでガツンとやられたほど衝撃でした。
これまでに見た美術展の中で5本の指に入るほどです。
作品一つ一つに最敬礼したくなりました。

ちなみに図録の表紙のペンダントのサイズは、直径4.2㎝です。
粒金細工の
・最も困難を極めたことは、金にその小さな粒金(1mm以下)をの丸みを壊すことなくGoldの表面にろう付けすることだった。溶接しようとすると、粒金が溶けてしまう…
・更に集合箇所毎に一度に付けなくてはならない。

よく知らない者は、聞いただけだと簡単に思えるものですが、
よくわからない私でもそれが神業だとわかります。

Victoria and Albert Museum  公式HPより引用
Carlo Giuliano(カルロジュリアーノ)作
Gold  エトラスカンスタイル・グラニュレーション イヤリング
1865年~1870年 英国 ロンドン
この細かい粒金細工のイヤリングは、エトルリアの技術を模倣したもの。
Goldペリドット&ガーネット・リング
19世紀後期 英国
リングにして粒金細工が。
この細工が無いと、まったく別物になります。
石の合わせ方も可愛いです。
欲しい



細工はアンティーク・ジュエリーの真髄

今よりもっともっと金が高価だったアンティークの時代
ジュエリーは、一部の貴族の為のものでしたが、当時から流行がありました。
他の人と被らない素敵なものを欲しいと貴族のオーダーを受けて、
デザインをおこさせ、素材(石その他)を集めさせ、少ない金で華やかにするために、職人が手間暇かけて手動の機械でコツコツと作りあげたのが
アンティークジュエリーです。

金属は主に鍛造(タンゾウ 読んで字の如く、叩いて、強度を上げ、繊細な作りが可能)で加工していました。
今は鋳造(チュウゾウ 型に流し込んで作る)が主流です。
そもそも、大量生産でなかったから、鋳造は少なかったのは必然ですが、鍛造は手間暇と職人の腕によります。

貴重な石を色やサイズ考えてを苦労して、探し求めて。
ところで、アンティークはよく見ると、石のサイズが違うことが多いです。
同じ種類の石でも色も微妙に違います。厚みが違えば色も違って当然ですけど。
今じゃ考えられませんよね。
そして、石留の枠のサイズを注視するとやはりまちまちです。
要するに、石の微妙な色の違いを考えて並べた後、それぞれの石のサイズに合わせて枠を作っているのです。

石の厚さや大きさがバラバラなのを、
私はかわいくて『へご』と表現しています。
人間の顔が仮に左右対称だと、温かみが感じられない様に
ジュエリーも中途半端に完璧だと、私には工業製品に見えてしまうのです。

また、パヴェセッティング(石畳の様に小さい石を敷き詰めるセッティング)やリングの5Stones などでは、石と石の隙間が無いくらい、石の間をキッチリ詰めています。
更に石の美しさを邪魔しないように、石留の爪を磨き上げてその存在を消す。

石一つ一つの個性を認めて枠をそれに合わせる
私がもし石だったら、最高に嬉しいですね。
まさに『型にはめずのびのびと』ですね。

地味な工程の繰り返しで、いったい一つ作るのにどれだけ時間をかけているのですか?
ですよね。

大量生産でなかったから、出来た事だと思いますし
あえてアンティークと定義しなくても、
現代宝飾でも手作りの作家さんのお品物も同様に魂を込めて作っていらっしゃると思います。

昔、20年位前は「アンティークは高い」というお声をよく聞きました。
ただし、実際にきちんと同程度のお品を比べたのか、単にそう聞いただけで言っていらしたのかはわかりません。

長くアンティークと向き合って来て、断言できるのは、
それをオーダーした方が、その高額なお品代を丸ごと払ってくれているという事です。
言い換えれば、今の通貨価値での価格をオーダー主が知ったら、
「そーんな価格で売っているのか~」って怒るだろうな…と思いながら
お客様に喜ぶお顔見たさに、頑張って値付けをしています。

ぶっちゃけ私も現代物も買います( ´艸`)
ハイブランドの商品を見て欲しくなるし、あのパッケージでプレゼントされたら飛び上がって喜びます。
ハイブランドでなくても、手作り作家さんのお品で欲しいなと思っている物もあります。

なので、良い悪いは別として、
アンティークと現代の大量生産品のコストのかけ方の違う。
乱暴な考えと承知で言えば、それだけの事だと思っています。

というのは、今はハイブランドでも、売れる物をたくさん作る大量生産が主流の様に思います。
限定数は、販売手法。
人気のデザインで石を変え、型にアレンジを加え。
華やかな広告宣伝、一等地に店舗。
高級品のお墨付き
それが全て、あの価格に反映されているのです。

とはいえ、ハイブランドも、今ほどの大量生産でなかった時代にオーダーで作った素晴らしいお品を買い戻して、そのお品が美術展で私たちの目を楽しませてくれています。その時代があったから、今のステータスがある。

接客時、私はよく言うのですが
「宝飾品は無くても生きていける。
だからこそ、着けた時に気持ちが上がるもの、頭の中に音符♪がたくさん付くものをお選びください」

価値観は人それぞれ。みんな違ってみんな良い。

本篇が、アンティークの魅力を少しでもお伝えできれば嬉しいです。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

アンティークス ミキ
黒田 美紀

プロフィール











 












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