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「歩きタバコ」と「ゴミ拾い」の矛盾
毎朝8:20ごろ、マンションを出る。
マンションの前の狭い道を、よく歩いている人がいる。
50代くらいの男性で、おそらく数軒隣のビルに入っている会社の従業員だと思われる。
見かけたときは、だいたい歩きタバコをしている。
喘息持ちの筆者は、正直、この人物を見かけるたび脛に蹴りを入れてやりたい衝動が起こる。これがアニメなら「通報するぞコラ!」と言って躊躇なく実行していることだろう。(京都市内は路上喫煙禁止になったし)
副流煙を吸うと、それだけで脳に悪い成分が回る気がして具合が悪くなる。数年前、体調が良くない時に吸ってしまった副流煙が元で喉を痛め、その晩にでかい発作を起こしたことがあるので、そのトラウマもあるのかもしれない。
とりあえず、歩きタバコは子供の目の高さで振り回す爺さんも兄ちゃんも姉ちゃんもいて危ないし、路上喫煙者はもれなく地獄に堕ちるべきと常々思っているくらいには憎らしい。
公衆の面前で堂々と放屁するのと同レベル、もしくはそれ以上の迷惑行為ではなかろうか?
——と、ここまでは普段考えていること。
10月26日月曜日、今朝もその人はいた。
ただ、例のごとくぼーっと虚空を見つめているわけではなく、うろうろしていた。
うろうろしながら、時々屈み、何かを拾っていた。
彼が拾っていたのは、マンション付近の道にぶちまけられた燃えるゴミの袋の中身だった。
大学のキャンパスが近く、学生も多い地域だからか、ゴミへのイタズラは割とよく見かける。たぶん、暖かい時期に出てくるカラスよりも夜中にうろついている学生による犯行のほうが多い。
にしても、今日のは車の通行を妨げるレベルでかなりひどいものだった。
スマホで撮って、管理会社とかにでも連絡すべきだったなぁ、と思い返すくらいには。
(管理会社の人もちょいちょい見に来ているようだが……帰宅時にもまだ問題が残っていれば、念のため連絡しようかと思う)
それはまあいいとして、ここでの問題は「その人」の行動である。
ぶちまけられたゴミを1つひとつ拾うなんて、聖人君子か。素晴らしい。
今はコロナの心配があるから……仕事が始まるから……と、言い訳して素通りした自分が実に恥ずかしい。
彼が見ず知らずの人なら、新聞に投書でもして讃えたいところなのだが、しかし、この人物は「普段は路上喫煙者」だ。
彼にとっては、人が通る道で喫煙することも、落ちているゴミを拾うことも、何の疑問もない自然な行動なのだろう。
しかし筆者にとっては、前者は地獄にも堕ちる所業、後者は聖人君子の行いである。
通勤路を歩きながら、彼に対する評価をどうしたものか、かなり混乱した。
しかしそもそもだ、『羅生門』の下人、『山月記』の李徴、『こころ』の先生を挙げるまでもなく、人間とはそもそも矛盾した存在なのだ——というか当人にとっては矛盾ですらないのだろうが——白か黒か、善人か悪人か、なんて一律で決まるわけがないのだ。
全ては白と黒の間のグラデーションの中にある。人が、それをどう判断するかというだけのことだ。
かく言う(書く)自分とて、善人であるとは言い難い。
ニコニコと仕事して暮らしてはいるけれども、心の中では毎日舌打ち、悪態もつき放題、肺は純白と信じたいが、精神的な解剖なんてものが可能になったら、腹の中はきっと田舎の闇夜のように黒ずんでいることだろう。
そんなことを考えながら、いまだにどうしたものかと——別に「どうする」必要もないのだが——判断しあぐねているところ。
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