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ウクライナ問題に寄せて(その1)

渦中にある者は、自分が回っていることに気づかない。

回っている渦に気づくためには、渦の外に出る必要がある。
しかし、それは勇気のいることだ。大怪我を覚悟しなければならないかもしれない。
たとえば、「運命の車」に乗り込むことは簡単だ。しかしそれがいったん走り出し、スピードを増したときに、その車から降りることは難しい。大抵の人間は、怪我を惧れて車から飛び降りたりはしない。

回っている渦も、走っている車も、その外に出てみない限り、自分がそこに巻き込まれていることにさえ気づけない。同じ軌道をぐるぐる回っているときは、特に気づけない。そういうときは、一緒に回ってくれる仲間を欲する。多くの人が同じスピードで同じ軌道を回っている限り、皆が穏やかに止まっているように感じられるからだ。そういうとき人は、渦の外こそが危険なスピードで回っているように感じる。
だから、自分の運命に他人を巻き込みたい衝動にかられたら、自分が危険な堂々巡りをしている可能性を疑った方がいい。

そのサークル運動に気づき、勇気をふり絞って、大怪我を覚悟で、その外に出ようとする意志は、ある種の「成長の欲求」だろう。つまり「成長の欲求」とは、危険な堂々巡りに気づいたとき、特に発揮されるのだ。この欲求は、誰しもが持っている。
いったんそのサークル運動の外に出て、外側からその動きを眺めたとき、あなたは初めて気づくのだ、誰がどのような理由でどのような軌道を回っていて、それがどれだけ危険かを。
なぜなら、あなたはさらに見るからだ、違う軌道を回る二つの渦が、それぞれの吸引力に引きつけられて、ぶつかり合う姿を。
そこで、新たな力学法則が働き始める。
まず、私たちがあえて目を背けて見て見ないフリをしている方の渦が増大することになる。一方の渦が増大すれば、その反作用でもう一方の渦も力を増す。こうして人災はエスカレートする。
渦に巻き込まれないためには、その渦の動きを外側からしっかり見るしかない。

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