見出し画像

成長のバロメーターとしての夢

■意識進化の「隠された地図」

前回、人間の意識の状態(ステート)には、粗大(グロス)、微細(サトル)、元因(コーザル)、目撃者(ウィットネス)、非二元(ノンデュアル)の5段階があると言った。すでに何度も登場しているスパイラル・ダイナミクスなどの意識の発達段階モデルでは、だいたい8段階のレベルがある。意識のレベルとステートは、今までほとんど同じスキームの中で語られることがなかった。なぜかというと、ウィルバーは、双方ともまったく違う理由で「隠されて」いたからだという。意識のステートの方は、世界宗教などの偉大な叡智の伝統の中で、意識の状態が進化することは「秘儀」だったため、一般には伝えられてこなかった、という事情がある。意識のレベルの方は、秘儀だったわけではなく、人はそれを意識することなく発達してきた、という事情によるという。
意識発達の段階(レベル)は、言葉にとっての「文法」のようなもので、誰でも知らず知らずのうちにそれを使い、そのルールに従う。文法を意識しなくても、問題なく言葉を話せるのと同じように、人は発達の段階モデルを意識しなくても、自然に意識を発達させる。それはいわば「隠された地図」「隠された法則」のようなものだ。つまり、無意識のうちに働く自動装置のようなものだが、この隠された地図が無意識になっているのは、それを抑圧しているからでも、避けているからでも、それが嫌いだからでも、それを認めたくないからでもなく、単にその地図がそこにあって機能していることを知らないからだ、とウィルバーは言う。
ただし、「隠された地図」である限り、その人の意識発達のレベルは、環境に大きく左右される。たとえばオレンジ(合理的)レベルの集団の中で生活していれば、特別意識していなくても、オレンジのレベルまでは発達する可能性が約束されているだろう。しかし、その人がより上位のレベルまで発達しようとしたら、地図を意識する必要がある。
段階(レベル)ごとに地図は異なる。登山の高度が変わるごとに、見える景色が変わるのと同じだ。自分がすでに辿ってきた高度の景色はわかるが、まだ登っていない高度からの景色は、「まだ見たことがない景色」であり、「手にしたことがない地図」であり、「味わったことがない境地」である。

ここから先は

3,327字 / 1画像
この記事のみ ¥ 300

無料公開中の記事も、有料化するに足るだけの質と独自性を有していると自負しています。あなたのサポートをお待ちしています。