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「夢の王国」へのチケット

息子が4歳になったばかりで、盛んにおしゃべりを始めたぐらいの時のこと。鏡に映った自分の姿を指さして、こう言った。
「アッ、 〇〇ちゃんのもうひとつの世界がある!」
「〇〇ちゃん」とはもちろん自分のことである。
息子のこの一言を聞いたとき、私自身はどちらかというと、息子の言う「もうひとつの世界」の住人だと感じたものだ。
彼の言う「もうひとつの世界」とは、「実」に対する「虚」ではない。「鏡像=虚像」という考えは、いかにも唯物論者の言いそうなことだ。「意識とは、脳が作り出した幻想である」と言っているのに等しい。
夢は鏡には映らない。むしろ心のありようが夢に映るのである。夢は心を映す鏡である。そこで唯物論者は問うだろう。
「幻想を映す鏡とは何か?」「幻想が幻想を映すのか?」「ゼロがゼロを映すって?」
確かに、ゼロをどれだけ足し算しようが、あるいは掛け算しようが1にはならない。

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