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風のない場所【anthem交換日記 エピローグ】

言葉が浮かび上がるまで待ってそれを掬い取る
ここ数年続いた風も止んで今は凪にいる
風が吹いていた事も忘れていたし
「コップの中から溢れるものをこぼさない様に」
生活していたことにも気づかなかった

風がないのは心地いい
拍動と呼吸が聞こえる
周りの人を気遣う余裕も生まれて
会いたい人に「会おう」と言える

アイデアが浮かび上がるまで待ってそれを掬い取る
時間を忘れることを禁じていた
空が狭い土地に引っ越したことが
「音楽なんて何の役にも立たない」
という思いがそうさせたのかは分からない

ずっと付き合ってる友人は
「夜静かすぎると頭の中のモーター音がうるさい」
と言っていた

脳のモーター音の大きさは人によって違う
幸い自分はそこまで大きくないので
周りが静かでも心地よくいられる

ただまた少し経てば激流の中
渦が巻く音が微かに聞こえる

anthemという場で
この3アーティストが手を組んだことが
それぞれの目的地へと向かうための
地盤固めになったのではないかと思う

音楽的なリスペクトを持てる奴同士
ギュッと纏まることが今は必要だったと思う
”anthem” という時にナショナリスティックに
時代錯誤的に響く言葉を冠したこのイベントが

豪雨の時に逃げ込むシェルターや
夜明け前、海に出る船乗りを照らす灯台
のような存在になっていくはず

3組のアーティストが
それぞれ大きな場所に羽ばたいていく為に
下北沢のとある地下の怪しい場所
コンクリートの打ちっぱなし、酸素の薄い空間で
たくさんとは言えないが同じく
それぞれの目的地を胸に抱くお客さんたちと
同じ目線で音を介して話をすること

そんな事が今の僕らには必要だったと強く思う

アーティストだって人間で
人は孤島のようには生きれないし
いつも近くにいる人によって支えられている

anthemが持っていた熱量とその後の沈思が
混沌を抱え右も左も不確かな状態で歩いていた
自分を風のない場所に連れて行ってくれました
ありがとう

そして当日来場してくれた人も本当にありがとう
皆さんがそれぞれ何かを感じてくれていたら僕らも幸せです

これにて交換日記は終了になります
是非この文章からお読みになった方は最初の文章から振り返って読んでみてくださいね、ではまた会いましょう

Black petrol MC SOMAOTA

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