![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/52196070/rectangle_large_type_2_d0068b3b08e8c1437b2c8d0b32563bd5.jpeg?width=1200)
僕がハゲタカファンドでゴルフ場を買い漁った理由(前編)
外資系企業再生ファンドが「ハゲタカ」と呼ばれたわけ
かつて僕は外資系ファンドの日本法人で、日本のゴルフ場を次から次へと買い漁っていました。
「ハゲタカファンドの『How to ゴルフ場M&A』」で書いたように、ゴルフ場の取得プロセスや、預託金債務の整理の過程では僕たち外資ファンドはいささか強引な手法を取りました。
当時の日本では、「よそ者」へのアレルギーもありましたし、商取引はなんでも「お友だち優先」で、仲間うちのナアナアで済ませる風潮がまかり通っていましたから(今でもたいして変わりませんね)、僕たち外資勢が市場に入り込み、ビジネスで成功を収めるには、法的ルールの枠組みを最大限利用するしか方法はありませんでした。
僕たちは、行儀が悪くて強引な手法で敵対的に日本の不動産や企業を安く買い叩く、スーツを着たアウトロー集団、のように認識されていて、小説や映画のモデルにもなるほどでした。
ビジネスとしてはルールに則っておりなんの問題もないのですが、死に体のゴルフ場とはいえ「ガイジン」やその手先に預託金を逆さに振っても鼻血も出ないほどに減額され、ゴルフ場を乗っ取られる会員としては面白くないでしょう。
屍体を食い漁る「ハゲタカファンド」という呼び方はうまい表現だなあと我ながら思います。(やることは外資も内資もたいして変わらないのですけどね)
なぜ僕は「ハゲタカ」になったのか?
報酬?…否定はしませんが、収入は実はそれほどのモチベーションではありませんでした。そもそも世間で思われるほどの高額報酬でもありませんでしたし。
僕が「ハゲタカ」と呼ばれてもいいからやりたかったのは、日本の再生でした。
2000年代初頭は、バブル崩壊の後遺症で長引く不景気に日本全体が苦しみ「失われた10年」からの出口が見えずにいた時期でした。
その根源にある要因は、まだ銀行の再生が途上だからだと僕は考えました。
経済の血液である「お金」を供給する銀行がお金を企業に貸せずにいることが、日本経済が停滞し続けている大きな原因の一つだと、僕の目には映ったのです。
金融機関が経済の血流を止めている!
銀行はなぜ機能不全から脱せないのか?
それは過去の不良債権処理がまだ終わっていなかったからでした。
バブル崩壊によって多くの貸付金が回収不能となり、銀行は巨額の損失を計上し、日本国民が尻ぬぐいして公的資金注入し「バブルのツケ」を払いました。
しかいまだまだ「塩漬け」になっている不良債権は残っていたのです。
これを処分して本当の体質改善をしないと、銀行は金融機関としての機能を取り戻せず、日本は世界との競争に破れ去る、という危機感が僕にはありました。
不良債権処理をするには、いったん債権を第三者に譲渡し、帳簿上の価格と実際に売った額の差額を損失として計上する必要があります。
銀行はすでに不良債権化した貸付金を、自ら貸付先を倒産させることはしませんでした。その理由は「ハゲタカファンドの「How to ゴルフ場M&A」Part Ⅱ、”銀行、その罪”」に記した通りです。
不良債権(とはいえゴルフ場が抵当に入っているから無価値ではありません)を引き取ってくれる相手を見つけて買ってもらい、処分してしまえば銀行としては一件落着なのです。
当時の日本国内には、大量の不良債権をまとめて買い取る資金力のあるプレーヤーはあまりいませんでした。バブル崩壊の大火傷でそれどころではなかったのです。
日本の不良債権市場に関心を示し多額の投資をするジャッジをし、実行するだけの資金量があったのは、外国資本の投資ファンドだけだったのです。
しかし、放漫な貸付金を焦げ付かせた銀行ばかりが悪いわけではありませんでした。
トカゲのしっぽ切り 〜 悪役は外資に押し付けろ!
ぜひ付け加えたいのは、負債超過になったゴルフ場を見限り、外資ファンドに押し付けて知らん顔をしたのは銀行だけではなかったことです。
本業とは関係ないのにバブルの勢いでゴルフ場を作ってはみたけれど、儲かるどころか今ではお厄介なお荷物になってしまった…そんな会社がいくつもありました。
それも誰でも名前を知っているような、日本の金看板とも言える大企業たちです。
そんな大企業から、直接ゴルフ場の買取りを打診されて買収することもありました。
もちろん、過剰な預託金債務でにっちもさっちもいかなくなって、もはや法的整理にかけて倒産させるしかないゴルフ場です。
それを「我々が自分で倒産を申し立てるわけにはいかない。ファンドさんに譲り渡した後で法的整理にかけるのはご自由にどうぞ」と言って預託金債務のついたゴルフ場を僕たちに譲渡するのです。
大企業であろうと、経営の負担になった事業を切り売りするのはビジネス上の判断として当然ですから、それは仕方ありません。
しかし、債権者であるゴルフ場会員に対しては、
「経営に失敗して預託金償還はできなくなりました。皆さまの預託金を大幅に減らさないと、もはや立ち行きません。申し訳ありません」
ときちんと謝罪して自ら法的整理を申し立て、外資なりなんなりをスポンサーとして迎えるべきではなかったかと、それが社会の公器たる企業としての責任の果たし方ではなかったのかと、僕の倫理観はそう叫ぶのです。
それを、会社の体面を気にして多額の負債を抱えたまま外資ファンドに売り飛ばして、あとは知らん顔。
会員や取引先から文句を言われても、
「会社としては苦しい中でも精一杯やってきたのですが、譲渡先の外資ファンドが債務切り捨てのために法的整理を申し立ててしまったのです」
と言い逃れをする絵図を描いたのです。
ハゲタカファンドに汚れ仕事を押し付けた、という以外の表現を僕は思いつきません。
(後編に続く)