フーコック島からラックザーへ
フーコック島から
船で脱出してからのハナシ
フーコック島から
やっと本土に到着も
お金もないうえに
ココがどこだかさえわかってなかった
もしかしたら
ベトナムですら無い?
と不安の中
到着した港は
ほぼ真っ暗…
船の乗客は
いそいそと闇夜に溶けるように消えていく
気がつくとポツンと自分ひとり
金はほぼ無し
宿を探す気力もなく
バックパックを枕に
港に寝転んで
寝ようとしたら
「あんたっ!
そんなところで寝てたら
殺されちゃう、よっ!」
みたいなことを
キオスクのおばちゃんが叫んでる
ジェスチャーで
お金も無いし
ホテルの場所も知らないコトを伝えると
おばちゃんが
顎をクイッとさせて
「こっち来い」
というカンジ
何故かおばちゃんの荷物と台車を
夜の街で運ばさせられることになった自分
なんだかわからないまま
家に連れて行かれると
なかなか綺麗なおウチ
オバちゃんが家に入ると
しばらくして
2〜30代らしき女性が出てきて
「わたし
少し日本語話せます
小学校の先生です
母から聞きましたが
とりあえず
今夜は泊まっていきなさい」
とありがたい申し出!
超感謝して家に上がらさせていただき
とりあえず
入った瞬間
家で飼っている犬のウンチ
裸足で踏みました…
足の指の間から
ウンチがニュルニュル出てくる感触
今も忘れられません
オバちゃんもお姉さんも
超笑って
シャワーでも浴びたら?
と進められて
シャワーをお借りしました
部屋に戻ると
晩ごはんをご馳走してくれました
チキンが入った麺料理で
これまた絶品!
どうやら
旦那さんはいないようで
オバちゃんと娘さんの2人暮らし
華僑系の方達みたいでした
カタコトの英語と日本語で
フーコック島でのコト
船でこの街までやってきたコト
日本でのコト
色々話したら
「私達ですら
その船は乗らないよ
普通は飛行機で移動します」
という
衝撃の事実…
あの船
マジでキツいからな
精神と時の部屋みたいだ
そして
この街は
当時のガイドブックには載っていなかった
ラックザーという
交通の要所である港町
ホーチミンまでは
バスで1日で行ける距離
と言うことが判明
トラベラーズチェックの話をしたら
ベトナムナショナルバンクがあるから
明日の午後にはそこに案内します
午前中は
よかったら小学校に来ませんか?
という話になって
お礼を含めて
「なんでもさせてきただきます!」
とつげて
その日はリビングのソファーを借りて
就寝させていただきました
泥のように眠りに落ち
気がつくと
コーヒーのいい匂い
ベトナムの朝は
やはりベトナムコーヒー!
と
寝惚け眼をこすりつつ
起き上がると…
警察官がリビングに!
あれ?
俺なんかしたっけ?
共産主義の国だから
なんかマズイことに巻き込まれた…?
と思ったら
娘さんの彼氏らしく
変な日本人を母親が拾ってきて
トラベラーズチェックというものを
銀行で換金したいから
助けてあげて!
との相談に
朝から様子を見てきてくれた
ナイスガイでした
娘さん交えて
色々相談したら
「あとで
待ち合わせして
銀行に連れて行ってあげるよ!」
とのありがたい申し出
感謝をしていると
指を口的に持っていって
内緒のポーズをしながら
「外国人
本当は民家に泊まるのは
ダメなんだよ
たから泊まってあることは
内緒ね!」
と釘を刺されました
朝のコーヒーをご一緒して
警察官の彼とはいちど別れて
自分は娘さんと小学校へ
助けてくれたオバチャンは
港へ仕事に出かけて行きました
「あんた
今晩も泊まっていきな!
晩ごはん作って待ってるからね!」
と
何故かモテてる自分
後で判明したのですが
当時はベトナムで
中国のドラマが流行っていて
拳法の達人の主人公が
ロン毛だったらしく
ベトナム男性はロン毛が憧れ
女性にもロン毛で中性的な男性が
人気あったそうです
娘さんにそういえば
「あなたは
オカーマですか?」
って聞かれてけどね
音楽好きで
髪の毛伸ばしてるだけだよー
って伝えたら
笑ってました
さて
ベトナムの小学校に行くと
何故か学校の偉い人に紹介され
【日本の美術を勉強している大学生が
ベトナムを旅して
フーコック島とラックザーに
視察に来た】
ということになっていました…
いやいやいやいやいや
なんでそんなことになるの?
まぁ
儀礼的に挨拶だけして
あとは
助けてくれた娘さん担当のクラスに
今日は見学で滞在することに
で
何故が日本語の先生をすることに…
自分で言うのもなんですが
自分は字が
すこぶる汚いです
ヤバイ…
と思いましたが
「えー
自分は日本の美大生です
(本当は美術系大学生でしたが…)
今は美術を勉強してますが
将来の夢は
空手ムービースターです」
ってふざけて言ったら
※髪の長いことを何度も聞かれて
面倒なんで空手マスターだから
と適当に答えてました
子供達の目が
キラッキラに輝き始めて
(この人は空手マスターで
将来はムービースターだ!)
ということになったみたいです
黒板にチョークではなく
たまたまあった筆で
日本文字を書いたのも
かなりウケました
先生に言われるがまま
アレコレ日本語やら日本文字を
せっせと話したり書いたりして
あっという間に授業は終わりました
その後は
何故がサイン責めに遭い
みんなのノートなどに
「空手マスター将来のムービースター〇〇」
と書きまくりました
たぶん真実を知っていた先生は
笑っていたけど…
午後は別の生徒が登校するみたいな
入れ替え制?だったのか
みんなは下校
先生は学校に残るので
地図を渡され
警察官との待ち合わせ場所へ
「夕飯は彼も一緒に
たべますからね」
とつたえられ
知らない街を待ち合わせ場所へ
プラプラと散歩
昼過ぎぐらいに
かなり早めに待ち合わせ場所に着くと
警察官の彼はすでに来ていて
早速銀行へ
なかなかできるヤツ
彼は英語は超カタコト
日本語はあいさつ程度
でも
どうにかこうにかなる感じ
銀行に着くと
なんと2時までは昼休み…
ロビーで待っていると
警察官の彼はどこかに出かけ
豆味の中国茶を奢ってくれました
コレが旨い!
驚いていると
警察官の彼は
何故がバカウケ!
後で確認したら
こんな安いお茶を
日本人が喜んでいる姿が
面白かったらしい
さて
長い昼休み明けのナショナルバンク
トラベラーズチェックを見せると
「日本のトラベラーズチェックは
初めて見たから
取引できない」
という
とんでもない回答…
ヤバイ…
流石に想定外
もうなりふり構わず
「頼むから200ドルでいいから
交換して!
その200ドルがないと
ホーチミンまで帰れない!
日本にも帰ることができなくなる」
と泣き落としにかかると
警察官の彼も協力
どんなお願いをしたのか
自分にはわからなかったが
銀行のお姉さんと上司の偉い人
「とりあえず本社に確認して
200ドルだけ
チャレンジして見ます」
とのコト
祈るようにロビーで待っていると
警察官の彼も心配そうにしてくれてる
コイツ
いいやつだな
クーラーが効き
ひんやりとした大理石の床
豪華なソファーにたたずむ
ロン毛の短パン髭面Tシャツ姿の
外国人の自分
と
制服をキッチリ着た警察官
完全に犯罪者の護送中の絵面
銀行に来る人が
全員コッチ見てる…
時が止まっているような
長い時間が経ったあと
受付に呼ばれると
マネートレーに
ドル札が!
嬉しさのあまり
そのまましまおうとしたら
「目の前で数えて!」
と銀行員に注意されました
ベトナムの方
真面目ね…
銀行を出たら嬉しさのあまり
警察官の彼と抱擁!
お礼にコーヒーでも奢ろうとしたら
頑なに拒否
オバちゃんの家まで送ってもらったら
彼が家の鍵を持ってて
夕飯でまた会いましょうと言われて
いちど解散
自分は
ベトナムのキヨスク店員のオバチャンの家で
留守番してるという
謎の時間を過ごすのでした
犬と遊んでいると
夕方ごろに
オバチャンが帰宅
晩御飯を作り始めたので
よくわからないままお手伝い
たぶん
あまり役には立っていなかったけど
オバチャンはニコニコ嬉しそうでした
「マイサンっ!マイさんっ!」
って自分のことを呼んでるから
MY SUN?
俺ロン毛でニコニコしてたから
太陽ってこと?
って思ってた
娘さんと彼氏が帰ってきて
彼氏は制服から
パリッとして白シャツで
なんかイケメン度か増してました
中華な夕食をみんなで楽しんでいると
彼氏から彼女と結婚する報告が!
なんで
へんな日本人が紛れこんでる
今日なんだよwww
なんか
感動的なところにお邪魔しちゃって
恐縮してたんだけど
なんかオバチャンが
彼と俺になんか話してて
娘さんが訳してくれたんだけど
「今日は最高の日
ムスコがいっきに2人もできた!
あんたたちは
今日から私の息子なんだから
あんたたちは兄弟よ!」
ということでした
マイサンって
My sonだったのね…
よくわからないまま
夕飯は宴へ
自分はオバチャンと
チークダンスを踊らされるし
ハチャメチャな一夜でした
次の日は休日だったのですが
このまま
ラックザーで長居してしまうと
もうベトナムから帰れなくなりそうだったので
朝のコーヒータイムに
「今日の昼にホーチミンへ向かいます」
と告げると
まるで映画みたいに
オバチャンは
窓のほう向いて
じぶんには背中をみせて
レースのハンカチで涙を拭ってる…
娘さんがオバチャンの肩をそっと抱いて
なんか慰めてる
気づいたら
俺も泣いてるし…
オバチャンは
俺の顔を両手で挟んで
ナデナデしながら
何か泣きながら言ってて
娘さんが訳してくれたんだけど
「可愛い息子に
もう会えなくなるのは寂しすぎるけど
あなたは日本に帰る
それは知ってた
最後にゆっくり
ちゃんと私に顔を見せてから
振り返らずに
行きなさい」
と言っていたみたいで
何故か娘さんも泣いてる
あまりゆっくりすると
別れがつらいから
早々に別れを告げ
ホーチミン行きのバスターミナルへ向かうため
家から出ようとすると
オバチャン
歌を歌って送ってくれました
何の歌か分からなかったけど
娘さんが
バスターミナルまで送ってくれて
どのバスに乗れば良いかまで
教えてくれて
今までのことを感謝して
バスに乗り込もうとしたら
腕を引っ張られて
何かな?と思ったら
「私のお父さん
私の弟
事故で死にました
あなた
ちょっとだけ
弟に似ていたので
ビックリしました
お母さん
とても喜んでいました
最後の歌は
息子のことを思った歌でした」
と衝撃の告白
たった3日間でしたが
濃厚なラックザー滞在を終え
ホーチミンへ向かうバスの中
あれこれと思い返して
ベトナムで
息子に2回もなるという
不思議な体験に
ベトナムが好きになりました
これで
ベトナムのハナシはお仕舞い
その後
ホーチミンまで
約200km
8時間もかかり
ちょー狭い座席で
ケツが壊死して死ぬかと思いました…
満席になるまでバスは出発しないし
運転手は途中で降りて
屋台で飯食い始めるし
正にカオス!
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