
一方通行のコミュニケーション
私は娘が不登校になるまで、「娘のことは私が一番わかっている」つもりだった。そして「親子なら気持ちが通じる」と信じていた。
「親の背中を見て子どもは育つ」という言葉を自分勝手に解釈して、「何も言わなくても子どもは私の考えをわかってくれている」と思っていた。
なんて傲慢なんだろう。
たしかに、同じ家で生活していればわかり合えることもあるだろう。だからといって以心伝心で何でも通じるわけではない。
それに私は思い込みも激しい性格なので、相手の気持ちを確認せずに「きっとこうだ」と決めつけてしまうことも多かった。
結局、「自分が一番わかっているつもりの娘」とのコミュニケーションは、実は一方通行でしかなかったと気づいた。
ある時、娘が「お母さんに何が食べたい?」と聞かれても本当に食べたいものが言えなかった、とつぶやいたことがある。私は最初、意味がわからなかった。「ハンバーグがいい」「唐揚げがいい」と言うのに何の抵抗があるのかわからなかった。
でも娘は、自分が好きなものよりも、家族が食べたいものや、私が作りやすいものを優先して答えていたらしい。それを知った時に頭を鈍器で殴られたような衝撃があった。そこまで考えないと答えられないのは、私の接し方のせいかもしれないと思った。子どもに何かを選択させているつもりでも、親の気持ちを汲むように仕向けていたということにショックを受けた。
今ではかなり、自分の好き嫌いもはっきり言うようになった娘は、「お母さんやさしくなったね」と言ってくれる。これまでは、コミュニケーションではなく、「指示」や「アドバイスという名の否定」をしてきた私は、学校に行かなくなった娘と接するうちに話が聴けるようになった。自然とすんなりできるようになった訳ではない。本を読んで、不登校の親の先輩たちの話をうかがって、失敗を繰り返しながらできるようになった。コーチングは学んでいないが、「承認」「傾聴」「質問」を意識して接するうちに、少しはやさしくなれたようだ。
思春期の不登校の娘と接する時に私が心がけた3つのポイントを紹介します
1.子どもの話をじっくり聴く
子どもが考えていることや感情を受け止めて、「わかるよ」と共感すると、子どもは受け入れられていると安心し、「信じてもらえた」と感じるようになります。聞き流すのではなく、時にはしっかり向き合って聴く姿勢が必要です。
2.一緒に時間を過ごす
子どもの趣味(ゲーム、アニメ、マンガ、アーティスト、映画、ドラマなど)を一緒に楽しむ時間を持つと、会話も増え子どもを理解することができるようになります。忙しい毎日でそんな時間がとれない場合は、「日曜日の2時から1時間」とあらかじめ約束して時間を確保するのもお勧めです。
3.感情を共有する
コミュニケーションはお互いの感情を分かち合うことが大事です。子どもだけに要求するのではなく、親も感情をオープンにする必要があります。いつ、どんな時に喜びや悲しみ、怒りなどを感じるのか、話してみるとお互いの違いや共通点を知ることができます。