絵本「ビニールがさのぼうけん」
ぼくは、ビニールがさ。ぼくは、ある女の人に買われた。でも電車の中に置いてかれちゃった。
それから、ぼうけんがはじまったんだ。
電車の中に置いてかれたぼくを、拾ったのはおじいさん。「これは助かった」おじいさんは、右手で傘を持ちながら、左手でぼくを杖にした。
ぼくは杖じゃないけど、おじいさんの役に立ててうれしかった。
おじいさんはコンビニへ行くと、入口の傘立てにぼくを置いた。しばらくして、ぼくを取ったのは、高校生くらいの、おにいさんとおねえさん。
2人は、1つの傘の下で、たくさんおしゃべりをした。
橋の下を通ったとき、ダンボールに入った捨て猫を見つけた。2人はコンビニに引き返すと、猫のごはんと水、タオルを買うと、ダンボールに入れていた。
風が吹いて子猫にあたらないように、ぼくをダンボールの横に置いた。2人は雨に降られてはいっちゃった。やさしい、おにいさんとおねえさん。さようなら。カゼひかないでね。
子猫はごはんを食べて、タオルの中でスヤスヤ。子猫が起きないように、ぼくは体を張って雨音が響かないようにした。
次の日になると、雨は上がった。ぼくは傘をしばるヒモを揺らしたり、傘全体で転がってみて、子猫をあやした。子猫はじゃれてきて、ぼくたちは一緒にあそんでた。
しばらくすると、小さな女の子を連れた3人の家族がやってきた。子猫は家族に拾われ、行っちゃった。あぁよかった!さようなら。幸せになってね。
ぼくは橋の下で、また1人になった。そうすると、男の子たちがやってきた。ある男の子は、ぼくを剣にして、みんなと戦いゴッコをした。
ある男の子は木のぼう、ある男の子はカバン、ある男の子はダンボール、それぞれ武器を持ってた。
よーし、負けないぞ!えい!ぼくは力いっぱい戦った。
夕暮れのチャイムがなると、男の子はぼくを捨てて、帰っていく。イテテ…。ケガしたけど楽しかった!さようなら。また戦おうね。
ぼくは橋の近く、河原の草はらで横たわった。虫や鳥、川のせせらぎを、聞きながら。
風の匂いは天気によってちがう。
朝も夜も、空がキレイだった。
しばらくして、ぼくを拾ったのは、おまわりさんだった。「誰かの、落とし物かもしれない」僕は交番に届けられた。
持ち主を待ったけど、来なかった。だから、ぼくは今、おまわりさんと交番に住んでる。かさが無くて困った人に貸し出す、かさになった。
雨が降るたびにぼくは、はじめて会う人と、ぼうけんに、でかける。
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