USJを劇的に変えた、たった一つの考え方 #自己用書籍要約
価格弾力性……1%の値上げに対して、何%売上が減少するかという反応度を分析する。
ちょっとの値上げでガーンと売上が下がる状態を「価格弾力性が大きい」、
その逆が「価格弾力性が小さい」
値段を最終的に決めているのは市場であり、消費者である
→先にブランド価値を顕著に高めておき、価格弾力性をできるだけ小さくしておく
◆マーケターの仕事
会社のお金の使い道や従業員たちのあらゆる努力を、消費者にとって意味のある価値につながるようにシフトさせること
◆なぜ、消費者視点は簡単にできないのか?
たくさんの人が集まっている集団の中では、会社の利害と個人の利害が必ずしも一致しないから
『なぜ自分は一日中、会議のための会議資料を作ってばかりいるのだろう?』
一つの事案の社内合意を取るためにも、多くの部門間の利害に配慮し、時間がかかるようになり、企業の意思決定のスピードは鈍化していく→従業員は社内の利害調整ばかりに多くの時間を割き、消費者価値にとって何が良いのかということを必死に考えるべき「外向き」の時間や労力が、どんどん内向き」の社内政治に使われていく
部門間や個人間の利害やしがらみをぶった切ってでも、消費者価値としてのベストを押し通す強力な意思決定の仕組みが必要
→会社のトップが意識的に権限を与えなくてはならない。自然に仕組みは出来上がらない
◆「技術」と「マーケティング」の両方を手に入れた企業が勝つ
「良いものを作れば売れる」時代は終焉、「売れたものが良いもの」時代
◆マーケターって誰のこと?
マーケティングができる人のことをマーケターと呼ぶ
いつもの馴染みの散髪屋。
「髪をカットする」というサービスならば他でもできるが、主人は抜群の知性と話術で「客の心のウサや悩みまで見事にカット」してくれる。
ヘンに客に媚びることはなく、その時々に必要なことを洞察してズバッと進言してくれる。
髪を切り終わった後のなんともスッキリすること!
「散髪を超えたカット力」こそが、異様に高いリピート率を獲得しているその店の魅力
◆マーケティングって何?
商品を売れるようにする、のがマーケティングの仕事。売れる仕組みを作ること
商品を売る、のは営業の仕事。
放っておいても顧客が商品をバンバン買っていく状態を作り上げるということ。
マーケティングが優秀になれば、営業はものすごくラクに商品を売ることができる。
自社商品が顧客に「選ばれる必然(選ばれて当たり前の理由)」を作れているということ
◆マーケティングの本質
1.消費者の頭の中を制する
2.店頭(買う場所)を制する
3.商品の使用体験を制する
○ブランド・エクイティー
消費者の頭の中にあるブランドに対する一定のイメージを「ブランド・エクイティー(Brand Equity)」と呼ぶ
Brand Equityを築くための一連の活動を「ブランディング」と呼ぶ
○配荷率(Distribution)
「自分が欲しいと思った商品を買おうと思って店頭に行ったけど、その商品を見つけられなかった、品切れだった」
「自分が欲しいと思ったブランドは別にあるのだけど、それを売ってる店が遠いので近くの店で売っている似たような商品を買った」
「いつも買っているブランドを買う予定だったけど、店頭で別のブランドが安く山積みされていたので思わずそちらを買ってしまった」
➜すべて自ブランドが店頭での戦いに負けているために起こったこと
ブランドの配荷率をめぐる戦いは、流通業者(卸と小売)に対して競合ブランドよりも自ブランドを扱うメリットをどう作るのか、その「流通に選ばれる必然」が勝負
➜消費者に強く求められる状態を作り出すこと
○価格(Pricing)
~USJのネットダフ屋との戦い~
事象: ファストパスのネットダフ屋による転売問題に頭を抱えていた
解決に着手: USJが中長期で消費者に信頼されるブランドになるため
WHY: なぜチケットのキャンセルを受け付けないのか?
→消費者利益を守るため
キャンセルを受け付ける→いつでもキャンセルできるからダフ屋にとって在庫リスクがなくなり、さらに買い占められるようになる→ますます一般客は買えない
鬼の一手: 転売されたことが確認できたチケットをパークで使えないようにする
→買う側の需要を激減させることで、転売屋のメリットを破壊した
○商品の商品の使用体験を制する
「売上個数」=「消費者の数」×「認知率」×「配荷率」×「購入率」
「売上金額」=「売上個数」×「平均価格」=「消費者の数」×「認知率」×「配荷率」×「購入率」×「平均価格」
Awareness 認知率
Distribution 店頭での配荷率
Display 店頭での山積率
Trial 購入率
Repeat 再購入率
Pricing 平均価格
Purchase Frequency 購入頻度
一番上流にある「市場の大きさ」という湖に100%溜まっている水を、川を使って一番下の「売上」という企業の池へと、できるだけ多く流していくゲーム。
その道すがら、認知率や配荷率や購入率などの川幅が狭まる場所があり、いくつか不必要に狭いせいで水が流れる量が少なく限定されている。
どこの川幅が問題なのかを明確に洞察し、狭い川幅を広げていく。そうやって水が流れる仕組みを作っていく
◆戦略って何?
戦略の定義:目的を達成するために資源(リソース)を配分する「選択」のこと。
「何かを達成したい目的を叶えるために、自分の持っている様々な資源を、何に集中するのかを選ぶこと」
○なぜ戦略が必要なのか?
1.達成すべき目的があるから
2.資源は常に不足しているから
○カネ/ヒト/モノ/情報/時間/知的財産 =6大経営資源
○選択と集中
20/20/20/20/20 VS 15/15/15/15/15=すべてのグループで負ける
➜20/20/20/20/20 VS 30/25/25 =5つ中2つ負け、3つのグループで勝利
➜数的優里は必ずしも、勝利を保証するものではない
やることを選ぶということは、同時にやらないことを選ぶということ
「とりあえず全部やろう」はバカやろう。無意味に資源を分散させているだけ。戦略なき愚か者。
~余談~
仕事にも当てはまる。上司から振られる仕事もたとえば、10振られたら最も重要な3選んで、それ以外はまず着手しない。10すべてギリギリ合格の60点を取っても大して評価されない。
重要なのは戦略眼。最も重要なインパクトを与える仕事と、その次に重要な仕事2つ、計3つ程度をよく考えて選ぶ。この3つに集中することで、最も重要な仕事は100点を、次点の2つはそれぞれ80点を狙いにいく。
その他の7つは、できるだけ早めに着手しないことを明るく報告する。やらないことを合意する、納期を遅らせることを合意する、あるいはやったフリをする。
重要でない7つをやる時間と労力を、重要な3つに集中してより高い成果を出す
◆「目的」と「目標」の違い
目的(Objective)とは、達成すべき使命のことであり、戦略思考の中では最上位の概念。
目標(Target)とは、その目的を達成するために経営資源を投入する具体的な的。
◆「戦略」と「戦術」の違い
戦略(Strategy)は目的を達成するための資源配分の選択。
戦術(Tactic, Execution)は戦略を実行するためのより具体的なプラン
戦略的思考= 目的➜戦略➜戦術
最上位概念がすべて「目的」となっていること、その目的に直結しているのが戦略。その戦略をより具体的に実行する施策が戦術。
戦略用語の基礎知識
目的:命題、最上位概念
目標:資源集中投下の具体的な的
戦略:資源配分の選択
戦術:実現するための具体的なプラン
マーケティングでの戦略的思考
目的:OBJECTIVE
目標:WHO(ターゲットは誰か?)
戦略:WHAT(何を売るのか?)
戦術:HOW(どうやって売るのか?)
~思考トレーニング~
➀よし頑張って瘦せよう(A)!!自分は運動する時間がなかなか取れないから、食事制限でカロリーをコントロール(B)しよう。毎晩の夕食をすべて野菜ジュースに変える(C)ぞ!
➁ちょっと豪華なロールケーキを買って帰った(A)。嫁さんと仲直りしたい(B)が、謝るのは癪なので彼女の好きな甘いものから攻める(C)ことにした
➂部下たちがもっと生き生きと働くため(A)に必要なことは何かを考えた。うちの会社はあまりにも多くのプロジェクトが平行して走る(B)から、一つ一つの区切りがどうしてもつけにくくて疲労がたまる(C)傾向がある。原則として本部全員に2週間の連続した有給休暇を毎年とらせる(D)ことにしよう。そうすれば、一年に一回は地球の裏側まででも行ける(E)し、仕事の疲れを癒してリフレッシュする(F)ことができるだろう。
目的→戦略→戦術=➀ABC,➁BCA,➂AFD
◆「戦略」と「戦術」はどちらが大切?
戦術より戦略のほうが大事。戦略の大きなミスは戦術ではリカバリーできないから。
「いや、経験上、戦略はまずかったけれど、戦術の強さで何とかなったケースはいくらでもある」
→それは戦術で補って目的達成できる程度の戦略、つまり良くはないけれども特別に悪くもない「OKな戦略」だったということ。
戦略が強いと正しい方向へ進む、戦術が強いと遠くまで飛べる、ということ
◆「良い戦略」と「悪い戦略」をどう見分ける?
○戦略の4Sチェック
Selective(セレクティブ:選択的かどうか?)
やることとやらないことを明確に区別できているか
Sufficient(サフィシエント:十分かどうか?)
経営資源がその戦局での勝利に十分であるかどうか。
セレクティブであれば、重要な局面ではサフィシエントになる。
サフィシエントでないならば、もっとセレクティブに選び、リソースを足りらせる
Sustainable(サスティナブル:継続可能かどうか?)
戦略が短期ではなく中長期で維持継続できるか
Synchronized(シンクロナイズド:自社の特徴との整合性は?)
自社のの特徴(強みと弱み、あるいは経営資源の特徴)を有利に活用できているか
実際には4つすべてOK!となる戦略はない。
いくつかの強みといくつかの不安が共存したまま、その戦略を発動するかはギリギリの判断。
著者の経験上、すごくうまくいった戦略は3つ当てはまったうえで、どこかに突出した強みを持つものが多かった。
4つすべてに当てはまらないとGOできないということではない。
◆マーケティング・フレームワーク➀戦況分析
戦略を立てることがニガテの人の大半は、自然の摂理を見極めるための市場構造の理解が足りないのと、そもそもの認識が甘い。
戦況分析を本気でやる理由は、市場構造に逆らって確実に失敗する「地雷」を避けるため。
また、その市場構造を自分の味方につけられるような戦略がないかを考えるため。
○5C分析
➀Company(自社の理解)
➁Consumer(消費者の理解)
➂Customer(流通など中間顧客の理解)
➃Competitor(競合する他社の理解)
➄Community(ビジネスをとりまく地域社会の理解)
➀Company(自社の理解)
自社の全体戦略を理解する。
自社の使いうる経営資源をできる限りたくさん把握する。
自社の能力や性格としての特徴(強み・弱み)を把握する
➁Consumer(消費者の理解)
消費者を量的に理解すること(数値データを用いて広く全体像を理解するのに役立つ)
消費者を質的に理解すること(質的調査などを通して消費者の深層心理に迫ること)の両方が重要
量的な理解では、消費者のデモグラフィック(年齢、性別、収入などの人口統計学的なデータ)な理解や、対象商品の世帯浸透率(世帯で使用されている割合)や認知率・購入頻度といった購買行動の理解や、主だったブランドへの消費者認識(ブランド・エクイティー調査)をりかいすることなどが中心となる。
マーケターを成果別で分けたとする。経験上、【上、中】と【下】を分けているのは、
「ビジネスの文脈を超えて、消費者心理を人として包括的に理解できているかどうか」
【上】と【中】を分けているのは、
「ビジネスの文脈を超えて、消費者心理を人として包括的に理解できているか」
良いマーケターは、商品に対しての消費者ニーズの理解に努めるだけでなく、底辺に流れる価値観や悩みはどんなことか、常日頃どんなことに関心を持っているのか、別の文脈ではどんな消費行動をとるのか、それは何故なのか、人としての総合的な質的理解に努めようとする。
➜消費者インサイトを突く
➂Customer(流通など中間顧客の理解)
協働して市場価値を作り上げているパートナーでかつ、市場価値のパイを奪い合っている競合。
取引先の戦略や強み・弱みの理解が特に重要。
➃Competitor(競合する他社の理解)
ライバル社だけの研究だけではNG。
たとえば、USJの狭義の意味での競合他社は「近隣遊園地」「TDR」など同業者。
しかし、広義の意味では「ストレス解消」という消費者ニーズの土俵で争っている競合と考え、水族館、映画館、カラオケ、ボーリング、ショッピングモールなどはもちろん、アウトドアなども競合になり得る。
➄Community(ビジネスをとりまく地域社会の理解)
社会がビジネスに与える外部要因のこと。法律などの規制、世論、税率、景気、為替レート等。
自社でコントロールできるものではいため、自社ビジネスに多大な影響を与えるCommunity要素のドライバーをあらかじめ明確にしておくことと、その動静をモニターして変化の兆しに細心の注意を払うことが大事。
◆マーケティング・フレームワーク➁目的設定
○実現可能性(ギリギリ届く高さを狙う)
適切な目的とは「高すぎず低すぎず」という相反する条件を満たすもの
○シンプルさ
人が理解できる、覚えられる、すぐに思い出せることが大切
○魅力的かどうか
一人一人が奮い立つような魅力を備えた目的設定すること。
頭だけではなく、心からどうしても達成したくなるような目的が設定する。
➜「組織の裁量的に、自分では決められない!」
決定権がなくとも、降ってきた目的をより明確に再設定する提案や調整を行う。それが上位組織にとってもより良い目的設定であれば、提案は受け入れられるもの。そういう戦略的リーダーシップに優れた人は、いずれ上位組織に上がっていく。
◆マーケティング・フレームワーク➂WHO誰に売るのか?
「私は成功のカギというものはわからないが、失敗のカギは知っている。それは全ての人を喜ばせようとすることだ」ビル・コスビー
○消費者設定をする理由
限られたリソースを消費者全員に投下すれば、一人当たりのリソースは薄くなってしまう
○戦略ターゲット
ブランドがマーケティング予算を必ず投下する最も大きなくくりのこと。
メディアを集中させてブランド・エクイティーを構築する対象であるため、短期でコロコロ変更すべきではなく、中長期的な視点で定義する。
この戦略ターゲットのくくりが目的達成に照らして小さすぎないようにすることに注意する
<例>かつてUSJが「ハリウッド映画が好きな消費者」と定めていた事実→関西の立地条件で集客を達成するのは、消費者全体の8割くらいをカバーできる設定にすべき
○コアターゲット
戦略ターゲットの中で、さらにマーケティング予算を集中投資するターゲット消費者のこと
目的次第で複数設定もOK、戦略ターゲットに比べて短期で変更OK。
コアターゲットも目的達成に照らして小さすぎないようにすること
○コアターゲットの見つけ方
【ペネトレーション】
カテゴリーの中で自社ブランドの世帯浸透率を増やせるグループはいないか?
自ブランドの浸透率を伸ばすための「空白地」を見つける。
【ロイヤリティ】
既存使用者の中で「SOR(share of Requirements)」を伸ばせるグループはないか?
SOR=1年の間に消費するそのカテゴリー全体の消費量に対する自ブランドの消費量の割合、カテゴリー消費量に占める自ブランドのシェアのこと
【コンサンプション】
既存の使用者の中で一回あたりの「消費量」を増やせるグループはいないか?
【システム】
既存の使用者の中で使用商品の種類(SKU数)を増やせるグループはいないか?
シャンプーだけしか使っていない消費者にコンディショナーやトリートメントなとも使わせることができないかを考えること
【パーチャス・サイクル】
既存使用者の中で購入頻度を上げる(購入サイクルを短くする)理由を作れるグループはいないか?
【ブランド・スイッチ】
競合ブランド使用者の中にブランド変更の可能性の高いグループはいないか?
リソースがより多くかかるため、ハードル高し。上記5つでコアターゲットが見つかるのであれば敢えて選ぶ必要はない
○消費者インサイト =消費者の隠された真実
インサイトを衝かれることで消費者は自社ブランドのベネフィットを理解しやすくなったり、欲しくなったりする。
マインド・オープニング・インサイト =消費者の認識を大きく変えるインサイト
【アリエール】部屋干しの衣類からニオイがするのは衣服にたくさん菌がいるから→消費者「なるほど!服には菌がついていたのか!」→除菌ができるアリエールバカ売れ
ハート・オープニング・インサイト =感情をえぐる
【USJのクリスマス】子供と本気で楽しめるクリスマスはあと何回もない→子供はすぐに大きくなって、あなたと一緒に過ごしたがらなくなる→自分がそうであったように、自分の子供もあっという間に大人になっちゃう→今年のクリスマスは貴重な一回なんだ!→クリスマス入場者数UP
◆マーケティング・フレームワーク➃WHAT何を売るのか?
「人々はドリルが欲しいのではない。人々は穴がほしいのである」byレヴィット博士
【フェラーリ】→「成功者としての優越感」が購入者の根本的な価値では?
➀社会的なステータスでフェラーリを愛していて、自己顕示欲を満たすために買っているユーザーグループ。
➁マシーンとしてフェラーリへの愛が強い車好きなユーザーグループ。
成功者としての優越感を得られるものがすべて競合品となる。クルーザー、プライベートジェット、別荘、タワーマンションのペントハウスなど。
【東京ディズニーリゾート】→幸福感?
ミッキーマウスに興味がないお父さんだって、子供にせがませたらTDRに連れていってあげたくなる。それは子供の幸せな顔が見たいから。それを見て自分も幸せな気持ちになりたいから。
○ポジショニングについて
ポジショニングは相対的である。
自分が動かなくても相手が動くことで自分のブランド・エクイティーが動かされてしまうことがある。
反対に考えれば、自分のポジショニングを動かすことによって、全く動かない相手を消費者の頭の中で動かしてしまうこともできる。
商品カテゴリーで重要だと思われている価値観をブランド・エクイティーとして単独で所有できればベスト。単独で所有できなくとも、軸となるエクイティーにできるだけ自ブランドをポジショニングすることで、消費者に選ばれる確率が上がる。
➜しかしほとんどの場合、カテゴリーNo.1ブランドがすでに単独で所有しているか、競合に対して有利に保持している場合が多い。だからこそ、そのブランドがNo.1なのである。
➜ブランド・エクイティーを奪いにいくか、ブランド・エクイティーを陳腐化してしまうほど新たな別の価値を消費者に打ち立てていく
◆マーケティング・フレームワーク➄HOWどうやって売るのか?
自分のセンスで判断するのではなく、深く理解した消費者の視点からHOWを判断すれば良い
Product
Promotion
Price
Place