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「八戸せんべい汁研究所」フツーの市民による"まちおこし"のこれまでとこれから!
設立21年目となった「八戸せんべい汁研究所」の活動を、メンバーの1人が『まちおこしアイディアBOOK』にまとめてくれることになり、僕も「汁゛研のこれまでとこれから」を書き下ろしたけど、本として世に出るのか微妙な感じになってきたので、僕の想いをここに残すことにしました。
自分が住む地域のまちおこしや地域活性化に興味がある方も、そうじゃない方も含めて、目を通していただけると嬉しいです。
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まちおこしに、終わりなし!
「選ばれ続ける八戸」を目指すフツーの市民によるチャレンジは続く
八戸せんべい汁研究所 所長 木村 聡
2002年12月、東北新幹線が八戸駅まで延伸開業したのをきっかけに、"この新幹線で全国からたくさんの人に八戸に来て欲しい"と考え、【せんべい汁プロジェクトS(全国ブランド化計画)】を企画し、歴史や食文化、飲食店などの調査を始めたのが2003年7月のこと。そのプロジェクトSの一環で、せんべい汁に代表される八戸地方独特の「南部せんべい食文化」に関する情報収集・整理・発信を継続的に行うことで、自分たちが暮らす街のPR・イメージアップを図り地域活性化を推進する団体として、市民有志で『八戸せんべい汁研究所』(以降「汁゛研」(じるけん))を11月に旗揚げした。以来、僕も含めてメンバー全員がボランティアで平日の夜や休日にも休む暇なく活動していたら、あっという間に21年が経っていた。
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その間、多くの市民のみなさんや企業・団体のみなさんに汁゛研を応援してもらい、様々な企画にご支援・ご協力をいただいたおかげで20年以上も活動を継続することができたのだと思う。これまで本当にありがとうございます。
あらためて汁゛研の活動を振り返ってみると、大きく3つのフェーズに分けることができる。最初のフェーズは2003年の汁゛研設立から2013年までの10年間、その後2023年までの10年間が2 つ目のフェーズ、そして3つ目がまさに今年、2024年からの10年間になるだろう。
最初の10年間は、「八戸せんべい汁」の認知度を上げる活動に注力した期間。八戸せんべい汁をフックに全国に八戸の情報を発信して、日本中の誰もが漢字の「八戸」をちゃんと「はちのへ」と読めて "あの八戸に行ってみたい" と思って欲しかった。知らないものは "食べたい" と思わないし、地名も読めないような場所に "行ってみたい"と思う人はいない。だから全国各地に行っては八戸せんべい汁を振る舞いながら八戸のPRをして、応援ソングを歌って踊って《八戸せんべい汁=美味しい》に《楽しい》という要素を加えた。また、今や伝説となったまちおこしイベント『B‐1グランプリ』を発案・企画・開催して全国的なB級ご当地グルメブームを作り出し、2012年の「第7回B‐1グランプリin北九州」で汁゛研がゴールドグランプリ(日本一)を獲得し、八戸せんべい汁と八戸を全国に知らしめた。
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次の10年間は、《八戸の人の魅力》を高めるための人材育成にも注力した期間。B‐1グランプリの効果もあり八戸せんべい汁の認知度は飛躍的に向上し、2010年の調査ではビジネスや観光で八戸に来た旅行者の約半分は八戸せんべい汁を食べているという結果も出た。(2011年3月「緑の分権改革の推進に係る取組の経済効果等の分析に関する調査業務」報告書から) 当時八戸に来る旅行者の数は年々増えていたから、旅行者を迎える八戸の人たちの《おもてなし力》を高めるため飲食店や観光関係者を対象にした『八戸せんべい汁おもてなしアカデミー/おもてなしマイスター』認定制度を開始した。また、僕らの次のまちおこし人材を育てる活動として、子供たちが八戸のことを大好きになって“自分も八戸を元気にするため何かしたい”と考えて欲しいと思い、汁゛研メンバーが小中学校を訪問する『まちおこし出前講座』もスタートさせた。アカデミーではこれまでに200名近い「おもてなしマイスター」を認定し、ある店の女性マイスターは八戸せんべい汁を注文すると応援ソングを歌って踊って盛り上げてくれる大人気の名物店長になっていたりする。出前講座はこれまで約40校を訪問し2,800名以上の「おもてなしマイスター汁゛ドレン(じるどれん)」が誕生している。今後大きくなった汁゛ドレンたちが、どんなまちおこしを始めるのか楽しみにしている。八戸の人の魅力が高まり飲食店や観光関係者・市民のおもてなし力が総じて向上すれば、旅行者は“八戸は楽しかった・人も温かかった”と感じて八戸にいいイメージを持ち、きっと“また来たい・次回は〇〇と一緒に”などと思ってくれるであろう。
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そして現在進行形の3つ目のフェーズであるが、1度八戸に来てくれた旅行者を《八戸ファン・リピーター》にして、何度も通ってくれるような「関係人口の創出」に向けたチャレンジの10年間にしたいと考えている。少子高齢化による人口減少問題は他人事ではなく、僕らが愛する八戸市でさえ残念なことに「消滅可能性自治体」に分類されている(人口戦略会議の令和6年・地方自治体「持続可能性」分析レポートから)。人口減少問題への対策は移住等も含め行政も積極的に進めているのだが、僕らのような民間団体でもできる取り組みもあると思う。
VISITはちのへが2023年12月にインターネットで実施した「八戸圏域の観光資源認知度調査」の結果では、八戸せんべい汁が関東圏で1位44.5%(2位八食センター10.0%)、関西圏でも1位35.8%(2位キリストの墓6.8%)と他の観光資源と比較して圧倒的な認知度があると発表された。
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この認知度を活用しないのは勿体ない。まさに八戸せんべい汁をフックに、八戸の食・自然・祭りなどの暮らしぶりの体験に加えて、八戸人の魅力を体感してもらえるイベントを首都圏等で繰り返し実施して八戸に対する興味・関心を高め、“一度行ってみたい”とツアー等で実際に現地に来てその魅力を実体験することで、通りすがりの旅行者ではない何度も通いたくなる《八戸ファン・リピーター》になってくれるだろう。2024年11月から翌年の2月まで毎月東京都内や静岡県で八戸をPRするイベントを実施するし、2025年度は都内で3万人以上が暮らす巨大な団地を舞台に、よりDEEPに繰り返し八戸をアピールする体験企画を計画している。首都圏には故郷を持たない世代も多いからこそ、八戸が持つ独特の文化や温かい人との出会いを体験することで、八戸を「第二の故郷」と思ってくれる関係人口を創出できるのではないかと思う。首都圏×八戸の関係人口創出は、地域の課題である人口減少・少子高齢化による産業や祭りなどの担い手・後継者不足の解消にもつながり、地域への愛着心が移住へのハードルを下げる効果をもたらすのではないだろうか。
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◆「八戸PRイベント」の新聞記事(12/19デーリー東北)
せんべい汁で八戸PR 汁研、都内で積極的に活動 「関係人口創出したい」 – デーリー東北デジタル
また、首都圏など地元以外での八戸に対する評価を高めることで、八戸の人たちもあらためて“八戸っていいなぁ・八戸が大好きだ”という気づきを感じ、それは《郷土愛の増幅》につながるだろう。今ここに住んでいる人は《一生住み続けたい街》に、進学や就職で八戸を離れた子供たちは《いつか帰りたい街》にしたい。一方で地元以外の人たちは 《行ってみたい街・あの人に会いたい街》になって、そこからさらに踏み込んだ《いつかは暮らしてみたい街》にすることができれば、誰からも「選ばれ続ける八戸」にできるものと考えている。汁゛研のこれからの10年は、「持続可能な八戸」を実現するための普通の市民によるボランティア活動でのチャレンジだと思っている。
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21年目に入った汁゛研であるが、活動を続けるためのポリシーがある。【まちおこしに、終わりなし!】、とにかく「楽しく」、常に「遊び心」を忘れず、自分達も楽しめることを続けること!汁゛研を旗揚げしてから何度となく言われたのが“ボランティアは続かないよ”であったが、既に20年以上活動を継続することができた。それは応援していただいたみなさんのおかげでもあるが、常に楽しみながら活動して、しかもその成果をしっかり出してきたからだと思う。
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最後にかけがえのない汁゛研の仲間たちと、八戸のまちおこしに取り組むみなさんにこの言葉を贈りたい。【「天才」は「努力する者」に勝てず、努力する者は「楽しむ者」には勝てない 】
愛する八戸のため、これからもできる限りチャレンジを続けて行こうぜ‼