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日本における女性の乳がん発生率は、欧米に比べると5分の1と比較的少ないと従来は考えられていました。ところが日本でも乳がんの発生率が年々増加傾向にあり、現在日本の女性が罹患するがんの一位となっています。近年、胃がんと子宮がんが減少傾向にあり、乳がんと大腸がんが増加してきました。

年齢別にみた女性の乳がんの罹患率は30歳代から増加し始め、50歳前後にピークを迎え、その後は次第に減少します。女性では、乳がんにかかる人の数は乳がんで死亡する人の数の3倍以上で、これは女性の乳がんの生存率が比較的高いことを意味しています。つまり乳がん術後の人生も長いということですね。

乳がんにかかる人の数が増加している理由として、日本人の食生活が豊かになり欧米化したからだと言われています。特に、動物性脂肪の多い食品を幼児期から過剰摂取する結果、中高年から肥満となります。脂肪組織には女性ホルモンを合成する酵素があるため、肥満であることは女性ホルモン量が多いということになります。これが閉経後女性の乳がん発症に肥満が関係すると考えられている理由です。

乳がん検診として乳房超音波検査やマンモグラフィーを受けていると、早期の乳がんを見つけることができます。上皮内癌とされる非浸潤性乳管癌などはこれらの検査により見つかります。乳房の非浸潤癌(ICD-O3.2  /2)としては次のようなものがあります。

非浸潤性乳管癌(ductal carcinoma in situ; DCIS)
非浸潤性小葉癌(lobular carcinoma in situ; LCIS)
被包型乳頭癌(encapsulated papillary carcinoma in situ)
上皮内乳房パジェット病(Paget's disease, mammary, in situ)

乳房に原発する腫瘍のほとんどは乳管上皮から発生します。多くは導管癌と呼ばれる腺癌です。生命保険の支払査定者としては、上記の診断名は保険金や給付金請求の際に良く見る診断名ですから、覚えておくと良いでしょう。非浸潤性乳管癌と非浸潤性小葉癌は、それぞれ英語の略語名としてDCISLCISと診断書に記載されることが多いです。

がん保険のがん診断給付金は支払該当ですが、重大疾病保険(特定疾病保険)は浸潤癌でないため支払事由非該当となります。


(参考)院内がん登録の下記資料を参考にしました。

2019年に乳がんのWHO分類が改定されたようです。非浸潤性小葉腫瘍として異型小葉過形成(Atypical lobular hyperplasia; ALH)が新たに定義されています。ALHは現時点で良性の取り扱いとなっています。英語表記は下図のとおりです。

非浸潤性小葉腫瘍とDCIS



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