マロリーワイス症候群
東急田園都市線溝の口駅の近くに「カフェ マロリーワイス(Cafe Mallory Wise)」というカフェバーがオープンしたという話を耳にした。マロリーワイスと言うと、大酒家を頭に思い浮かべてしまうのは職業病であろうか。このお店には飲み放題コースもあるようで、益々気になってしまった。新型コロナウイルス感染症の流行も第6波が懸念される中、飲食店に挑戦して行くところが頼もしい。さらに盛況となることを祈念しております。
そもそもマロリーワイス症候群(Mallory-Weiss syndrome)といえば、酔っ払いが血反吐を吐いて倒れる病気なのです。大量飲酒をして食道と胃の接合部が切れて吐血する。George Mallory博士とSoma Weiss博士が世界で初めて報告したことにちなんで名付けられた症候群です。 飲酒後に嘔吐を繰り返し大量吐血にて死亡した4例を論文として報告しました。これに因んで名付けられたという。
症候群とは、同時に起きる医学上重要な関係にある一連の症状や兆候のことです。原因不明ながら共通の病態を示す患者がある場合に、そのような症状の集まりに名をつけ扱いやすくしたものです。英語のシンドローム(syndrome)の原義は「同時進行」という意味です。症状や兆候を少なくとも3つ以上の思い浮かべなければ、症候群とは言えない。
飲酒後の激しい嘔吐の反復により急激な腹腔内圧の上昇が起こります。これにより食道胃接合部付近に粘膜下層までの裂創を生じ、粘膜下動脈が破れて吐血をきたす疾患がマロリーワイス症候群(Mallory Weiss syndrome)です。30歳~50歳代の中年男性に多く、本疾患の誘因としてはアルコール(大酒家)が最も多いです。上部消化管出血の5%を占めます。この他に、つわりの激しい妊婦(妊娠悪阻)、激しい咳・クシャミ、分娩時や便秘による排便時のいきみなどでも起こることがあります。いずれも急激な腹腔内圧の上昇が原因です。ちなみに、本疾患はMallory とWeissの2人により1929年に初めて報告されました。
飲酒などでの激しい悪心・嘔吐後の鮮血の混じった吐血が観察されます。また,出血量が多いときにはショック状態に陥ることがあります。
上部消化管内視鏡検査にて、食道胃接合部付近に1条から数条の縦走する裂創が見られたときにマロリーワイス症候群と診断されます。これは粘膜下動脈の破綻を示し、裂創は噴門部小彎側に多いです。
マロリーワイス症候群で開腹止血する必要は少なく、保存的治療により75%~90%が自然止血します。出血性ショックを起こしてなくバイタルサインが落ちついていれば、安静、絶食、輸液、止血薬の投与にて保存的に治療します。
大量出血が続いているときは、内視鏡によるクリッピングやヒートプローブによる止血を行います。この方法で止血できなければ、胃を外科的に切開して縫合を行います。
さて、生命保険の引受査定に当たっては、マロリーワイス症候群の原因としてアルコールがあるので、アルコール依存症などの混入に注意すべきでしょう。これに関連する疾患や症状がある場合には引受不可です。肝機能障害がないことを確認します。
内科的治療または縫合手術などにより完治したことが診断書で確認できれば、生命保険とがん保険は引受可、医療保険は数年間の部位不担保の特別条件付きとなるでしょう。また肝機能検査値などの健診結果があれば参考としたいところです。マロリーワイス症候群の再発したもの、アルコール依存症、縫合手術でなく胃切除術をうけたものなどは引受不可です。