【特許から見る】JR西日本の取り組み-福知山線脱線事故から15年
2005年4月25日に発生した福知山線脱線事故から今日で15年前。
2011年の東日本大震災時の津波の映像と同じぐらいに、福知山線脱線事故の映像も記憶に鮮明に残っています。
この悲惨な事故から15年経過して、JR西日本は安全(特に脱線防止)に対してどのような取り組みをしてきたのでしょうか?特許出願面から見てみたいと思います。
福知山線脱線事故に言及している特許
JR西日本の取り組みについて確認する前に、”福知山線脱線事故”について特許明細書中で言及している特許はあるのでしょうか?
検索したところ、
5件ありました。
1.特開2008-250596「移動端末装置を利用した緊急救助システム、移動端末装置を利用した緊急救助方法、携帯電話装置及び移動端末装置を利用して実行される緊急救助プログラム」
平成17年の福知山線脱線事故においても、一般的な交通事故においても、また、土砂災害、水害などに遭遇した場合などにおいて、以下のようなケースにより例え防水携帯電話装置を所持していても連絡ができない場合がある。
特に平成17年度は、JR西日本福知山線脱線事故の例に代表されるように航空、海運事業者においてもヒューマンエラーによる重大事故やトラブルが続発し、そのため国土交通省は運輸のより一層の安全の確保を図るために平成18年10月から運輸安全マネジメント制度を開始し、また平成21年3月に「事業用自動車総合安全プラン2009」を公表し、重点施策の1つとしてデジタルタコグラフの活用による運行管理の高度化に重点を置いている。
同上
同上
同上
1件目はNECの出願で携帯電話での連絡がつかないケースとして福知山線脱線事故を取り上げています。一方、2~5件目は菱木運送株式会社の出願で、国土交通省の運輸安全マネジメント制度運用開始するきっかけの1つとして福知山線脱線事故に触れています。
JR西日本の安全=列車脱線防止に関する特許出願
それでは、JR西日本の取り組みについてみていきます。
まずは、JR西日本(正式名称は西日本旅客鉄道株式会社)とキーワード”脱線”で確認してみます。
ヒット件数は38件です。
もう少し絞り込んでみます。キーワード”脱線”に”予測”,"予知","予兆"といったキーワードをAND演算してみます。
ヒット件数は6件となりました。
権利者:曙ブレーキ工業株式会社, 西日本旅客鉄道株式会社
2.WO2014192897A1「脱線予兆検知システム、制御装置、脱線予兆検知方法、及び脱線予兆検知プログラム」
出願人:曙ブレーキ工業株式会社, 国立大学法人東京大学, 西日本旅客鉄道株式会社
3.WO2010064453A1「脱線予兆の検知方法および脱線再現装置」
出願人:西日本旅客鉄道株式会社, 曙ブレーキ工業株式会社, 国立大学法人 東京大学
権利者:曙ブレーキ工業株式会社, 西日本旅客鉄道株式会社
5.特開2018-203024「脱線予兆検知システム、制御装置、脱線予兆検知方法、および脱線予兆検知プログラム」
出願人:曙ブレーキ工業株式会社, 国立大学法人 東京大学, 西日本旅客鉄道株式会社,
権利者:西日本旅客鉄道株式会社
脱線を防ぐための予知・予兆検知関連で6件の特許出願を行っています。
この6件はいずれも2005年の福知山線脱線事故後に出願されたものです。また、6件中5件は曙ブレーキ工業、またJR西日本と曙ブレーキ工業の共願案件5件中3件は東京大学・須田研究室との共同出願となっています。
JR西日本の安全基本計画には、
このような鉄道のシステムチェンジに向け、当社としてこれまで進めてきた研究の一層の充実や新たな技術開発等に取り組む一方で、脱線検知装置など早急に実用化が望まれる技術開発についても積極的に取り組んでいきます。
とありますので、事故を受けて東京大学と曙ブレーキ工業との共同研究・共同出願を行ったといえます。
曙ブレーキ工業は読んで字のごとくブレーキ専業メーカーであり、脱線時のブレーキ技術についての技術・ノウハウを有していることが分かります。
一方、東京大学・須田研究室ですが、研究室のウェブサイト以外に専門領域を確認する方法としては、以前に出願された特許を確認する方法(発明者名で検索していますが、同姓同名の方も混ざってしまっています)と
過去に執筆した論文を確認する方法があります。
こちらを見ると、須田先生が鉄道車両の運動制御に関して数多くの特許出願や論文を執筆されてきた大家であることが分かります。
まとめ
福知山線脱線事故から15年。
JR西日本は特許出願面から見ても、脱線防止について社外の専業メーカー・専門家と共同で研究開発・技術開発を行っていることが分かりました。
今後も安全第一に交通インフラ企業として我々の生活を支えていってほしいと思います。