全世界No.1に注意!?特許ランキングを見る際に気をつけるべきこと
イギリスのコンサル会社オックスファースト(OxFirst)(オックスフォード大学のスピンアウト企業)が人工知能関係の特許保有件数ランキングについて発表しました。
オックスファースト(OxFirst)社のウェブサイトにはオリジナルの記事がありませんので、こちらを掲載します。
また、日本語版はこちらになります。
概要をまとめると、特許件数で
がトップ3であるということ。こういうランキングというのはとても分かりやすいのですが、注意しないとミスリードしてしまうことにもなりかねません。
今回はこの人工知能関連特許を例にしてランキング記事を読む際に気をつけるべき3つのポイントについて述べていきます。
1.ランキング算出の基礎となる母集団検索式は?
実は今回と似たような記事について、1年半前にブログにまとめました。
要は母集団検索式によってランキングはいかようにも変動するということです。
母集団検索式とは、人工知能というテクノロジーをキーワードや特許分類等でどのように捉えているか、その思想です。母集団検索式を見れば、どこまで人工知能として含めて、どういう技術は含めていないのかが分かります。
ちなみに、2019年1月にWIPOが公開した人工知能関連出願のランキングは以下です。
どうですか?今回のオックスファースト(OxFirst)のランキングと比べると違います。特にテンセントはトップ30に入っていません。
WIPOレポートの母集団検索式については、以下のページのMethodologyをご確認いただければと思います。
ちなみに、今回のオックスファースト(OxFirst)の調査結果については特に母集団検索式は開示されていません。
もちろん、自分たちの都合の良いように検索式を作成しているとは思いませんが、どういう条件か分からないと、私としてはこのランキングについても良い/悪いの評価をすることができません。
ぜひとも今後は特許ランキングを見たら、どういう母集団をベースにしたランキングなのか?をチェックするよう心がけてください。
2.ランキングの対象期間は?
1.の母集団検索式と似ていますが、ランキングを取る対象期間によってもランキングの顔触れはだいぶ変わります。
ちなみにWIPOレポートでは、
にあるように特に期間を限定していません。なので、
グラフは1960年代からスタートしています。ちょっと古すぎますね・・・
さて、特許権の存続期間は出願日から20年ですので、ランキング算出対象も20年とするのが一般的であると思います。
しかし、テクノロジーによっては20年ではなく直近10年間だけにフォーカスしてランキングを算出した方が、よりトレンドを明確に浮かび上がらせることができる場合もあります。
今回のオックスファースト(OxFirst)には特に期間が明記されていませんでした。
3.特許カウントの単位は?
最後は特許カウントの単位です。これが一番特許的な意味で注意すべきポイントになろうかと思います。
特許をカウントする単位としては、
の4つがあります。実際のGoogleのディープラーニングのパテントファミリー例を用いて説明します。
これはPatbaseというデータベースで「a.パテントファミリー単位」で収録されています。これが1つのパテントファミリーになり、カウントとしては1になります。
日本(JP)をはじめ、様々な国の特許が含まれていますが「a.パテントファミリー単位」だと1になるのです。
次に「b. 登録単位」です。よく権利保有件数とも言いますが、特許権として有効な権利として何件持っているか?でカウントするものです。このパテントファミリー内の登録特許(末尾にB・Cのコード)は、
の3件。公報番号先頭の緑色は権利存続中ということなので、このパテントファミリーを「b. 登録単位」でカウントすると3件となります。
「a.パテントファミリー単位」では1ファミリーだったのが、「b. 登録単位」では3件になりました。
次は「c. 出願単位」。ユニークな出願番号だけを抽出すると16あります。
よって、このパテントファミリーを「c. 出願単位」でカウントすると16件となります。
「a.パテントファミリー単位」では1ファミリー、「b. 登録単位」では3件だったのが、「c. 出願単位」では16件になりました。
最後の「d.公報単位」は、公報ベースで何件発行されているか?でカウントするものです。公報単位はパテントファミリーに掲載されている公報全てをカウントすれば良いです。カウントすると20件あります。
よって、
となります。
特許のカウントの仕方で数値がだいぶ変動することがお分かりいただけたかと思います。
まとめ
以上、特許のランキング記事を読む際に気をつけるべき3つのポイントについて述べてきました。
最後にまとめると、
になります。今後特許ランキング記事を読む際に心掛けていただければ嬉しいです。
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