TOPIX100企業のコーポレートガバナンス・コード「知的財産への投資」への対応状況
「知財情報を組織の力に®」をモットーに活動している知財情報コンサルタントの野崎です。
2021年6月にコーポレートガバナンス・コードが改訂されて、補充原則3-1③および補充原則4-2②に「知的財産への投資」が追加されました。
先日、日本取引所グループのウェブサイトに「コーポレートガバナンス・コードへの対応状況について(2021年12月末時点)」が掲載され、上記「知的財産への投資」が追加されたコードへのコンプライ率が発表されました。
ただし、このコンプライ率はサステナビリティの取り組みと、人的資本・知的財産への投資へ対するコンプライ率となりますので、知的財産への投資のみのコンプライ率とは異なります。
TOPIX100(東証一部上場銘柄の中でも時価総額および流動性の高い大型株100銘柄で構成される株価指数)に限定した場合に限って、人的資本や知的財産への投資について言及しているか否かのデータも開示されており、
こちらを見ると、TOPIX100社のうち67社、比率として71.3%が知的財産への投資について言及しているとのことでした。
100社であれば、コーポレート・ガバナンス情報サービスからコーポレートガバナンス報告書をチェックすることができるので、100社の開示状況および開示内容について以下のようにGoogleスプレッドシートにまとめてみました。
コーポレートガバナンス報告書内に「知的」というキーワードが含まれているか否かサイト内検索で確認しました(一部企業については自社サイトに掲載されているコーポレートガバナンス報告書でチェック)。
その結果、
日本取引所グループ調べ:開示67社
イーパテント調べ :開示71社
となり、4社の差分が出ました。この差分は、当社調べの場合では、補充原則3-1③や補充原則4-2②に直接関係ない開示であっても開示に含めているためです。
ちなみに、コンプライではなくエクスプレインしている会社は5社あり、以下のような記載となっています。
SMC
人的資本や知的財産への投資については、経営上の重要課題として取り組んでいますが、具体的な情報開示のあり方については、引き続き検討します。
スズキ
人的資本や知的財産への投資等につきましては、その中核を当社の思想・文化の根幹を表す「小少軽短美」に置いて、モノづくり・コトづくりの両面から取り組みます。また、この取り組みによって生まれた知的財産を権利化し又はノウハウとして活用していきます。情報開示につきましては、これらの取り組みを踏まえ進めてまいります。
HOYA
取締役会では、各事業部門での研究開発に関する報告ならびにM&A検討の際の技術やブランドの価値といった観点から知的財産への投資について審議し、モニタリングを行っております。
りそなホールディングス
りそなグループでは、これまでにないビジネスモデルを構築するDXに継続的に取り組んでいます。知的資本への継続的な投資と活用を通じてビジネスをさらに深掘りし、新たな収益の源泉となるビジネスモデルを如何に構築していくかについて議論を深め、それらを踏まえた戦略を議論し検証する体制を構築してまいります。
KDDI
当社は現在、2022年4月1日~2025年3月31日の3ヶ年を対象とした新中期経営計画を策定中であり、経営戦略・経営課題を踏まえた人的資本や知的財産への投資等の情報については、2022年5月に当該計画と合わせて開示する予定です。
コーポレートガバナンス報告書はフォーマットもほぼ決まっており、記載できる分量もなかなか多くないため、知的財産への投資に関する本格的な開示は来年度に発行される統合報告書や、各社の中期経営計画などのIR資料に注目ですが、本資料を今後の「知的財産への投資」に関する情報発信・開示を検討する上で役立てていただければ幸いです。