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被引用回数を特許評価(レイティング・スコアリング)に利用する際のコツ
「知財情報を組織の力に🄬」をモットーに活動している知財情報コンサルタントの野崎です。
価値評価といっても金銭的な特許評価ではなく、非金銭的な特許価値評価を行う際によく用いられるのが被引用回数です。
一般的に被引用回数が多い出願は基本特許や重要特許と言われます。”一般的に”とわざわざつけたのは、必ずしも被引用回数が多ければ良いというものではないからです。ただし、この記事では被引用回数が多い=重要特許であるという前提で話を進めていきたいと思います。
なお、私の認識している範囲で、被引用回数を用いて特許の重要性を評価した論文で最古のものは、World Patent Informationの1981年の論文「Citation rates to technologically important patents」だと思います。
まずは、被引用回数を特許評価(レイティング・スコアリング)に利用する際の問題点から見ていきましょう。
今回サンプルとして用いるのは「注目テクノロジーの特許検索式・リスト」に掲載している「量子コンピュータ」です。
1 被引用回数を特許評価(レイティング・スコアリング)に利用する際の問題点
被引用回数を特許評価に用いる際の問題点、それは古い出願ほど被引用回数が多くなってしまうということです。
前提として、
データベースはPatbase
ファミリー単位でまとめた被引用回数を利用
自社・他社被引用の両方を含む
となります。自社被引用を除いて他社被引用のみで評価する方法もありますが、私が利用しているデータベースでは自社・他社被引用の区別がつけられないため、「自社・他社被引用の両方を含む」としています。
量子コンピュータを例に見てみましょう。
以下は横軸が最先優先年、縦軸が被引用回数、バブルサイズが各最先優先年のある被引用回数の累積ファミリー数になります。
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量子コンピュータは直近の出願が多く、直近の出願はほとんどの被引用回数がゼロであるため、右下のバブルが大きくなっています。
傾向が少々分かりにくいので、2020年以前だけに限定して、さらに突出した被引用回数である5,007を除いたマップを示します。
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直近の出願でも500回以上引用されているファミリーもありますが、2000年代前半の出願の方が被引用回数が多いことが分かります。
もう少し定量的に把握するために、各最先優先年の平均被引用回数の推移を見てみましょう。
Excelでどのように集計するかというと、
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のように行に最先優先年、Σ値に被引用回数をドラッグ&ドロップします。そうすると各最先優先年の被引用回数の合計値が集計されます。
ここで被引用回数の集計値のセル上で右クリックして、[値の集計方法]→[平均]を選びます。
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すると、各最先優先年の平均被引用回数が計算できました。これをグラフ化すると以下のようになります。
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2011年に上述した5,007回の被引用回数出願があるためにピークが立っていますが、2000年代前半から直近2023年にかけて緩やかに平均被引用回数が減少していることが見て取れます。
つまり、そのままの被引用回数を用いると、古い出願ほど特許の価値が高くなってしまうのです。
2 問題点を解決するために私が取っているアプローチ
それでは、この問題点に私が対してどのようにしているかというと、
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