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【特許から見る】CatTech(猫関連テクノロジー)-日経のネコノミクスの記事に触発されて
「知財情報を組織の力に®」をモットーに活動している知財情報コンサルタントの野崎です。
先日、日本経済新聞に「ネコノミクス2兆円、消費動かす 百貨店売り場拡大」
という記事が掲載されまして、そういえば猫関連の特許出願ってどうなっているんだろう?と気になったため、J-PlatPatで分析してみました。
1 J-PlatPatで分析母集団を形成する
J-PlatPat特許・実用新案検索メニューの[論理式入力]で
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のように「猫」を発明の名称、要約、特許請求の範囲に含んでいる、2004年1月1日以降の出願で検索してみます。
結果として1,430件ヒットしました(2024年2月24日時点)。
2 CatTech(猫関連テクノロジー)に関する特許・実用新案出願トレンド
まずはCatTech(猫関連テクノロジー)に関する日本の特許・実用新案出願件数推移です。
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2004年以降減少傾向にありましたが、2015年以降横ばいに転じて、2021年には増加しました。日経新聞にも
新型コロナウイルス禍では在宅時間が増え、癒やしを求めて新たに猫を飼う人が増えたとされる。犬と比べて飼育費用が安く、毎日散歩する必要もない。狂犬病などの予防接種も猫には義務付けられていないため飼育のハードルは低い。
とあるので、新型コロナウイルスも影響しているのかもしれません。
3 CatTech(猫関連テクノロジー)について出願している出願人
続いて出願人・権利者ランキングマップです(登録は権利存続中および消滅済みのいずれも含む)。なお出願人・権利者は筆頭のみを対象にしており、出願人・権利者名は私の方で名寄せしています。
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トップはアメリカのペットフード会社であるHILL'S PET NUTRITIONです。
花王もペット事業を営んでいますが、3位のHELPERBY THERAPEUTICSは医薬品メーカーです。なんで医薬品メーカーが上位にランクインしているかというと。。。
特開2023-040144
【発明の名称】ジドブジン及びカルバペネムを含む組み合わせ
【要約】 (修正有)
【課題】大腸菌(E. coli)又はクレブシエラ・ニューモニエ(Klebs. pneumoniae)、ならびに薬剤耐性株によって引き起こされる感染の治療のための併用療法を提供する。
【解決手段】ジドブジン又はその薬学的に許容される誘導体と、カルバペネム又はその薬学的に許容される誘導体とを含み、任意にポリミキシンB及びポリミキシンEから選択されるポリミキシン又はその薬学的に許容される誘導体を含む組み合わせを提供する。前記カルバペネムが、メロペネムであることが好ましい。
【請求項1】
ジドブジン又はその薬学的に許容される誘導体と、カルバペネム又はその薬学的に許容される誘導体とを含み、任意にポリミキシンB及びポリミキシンEから選択されるポリミキシン又はその薬学的に許容される誘導体を含む組み合わせ。
【請求項16】
膿瘍、喘息、細菌性赤痢、細菌性結膜炎、細菌性角膜炎、細菌性膣炎、骨及び関節の感染症、気管支炎(急性若しくは慢性)、ブルセラ症、火傷、猫引っ掻き熱、蜂巣炎、軟性下疳、胆管炎、胆嚢炎、嚢胞性線維症、膀胱炎、腎炎、びまん性汎細気管支炎、虫歯、上気道疾患、蓄膿症、心内膜炎、子宮内膜炎、腸チフス、腸炎、精巣上体炎、喉頭蓋炎、眼感染症、フルンケル、ガルドネレラ菌性膣炎、胃腸管感染(胃腸炎)、生殖器感染、歯肉炎、淋病、鼠径部肉芽腫、ハーバーヒル熱、感染熱傷、歯科手術後の感染、口腔領域の感染、人工器官に関連する感染、腹腔内膿瘍、レジオネラ症、レプトスピラ症、リステリア症、肝臓膿瘍、ライム病、鼠径リンパ肉芽腫、乳腺炎、乳様突起炎、髄膜炎及び神経系の感染、非特異的尿道炎、眼炎(例えば、新生児眼炎)、骨髄炎、耳炎(例えば、外耳炎及び中耳炎)、精巣炎、膵炎、爪周囲炎、骨盤腹膜炎、腹膜炎、虫垂炎に伴う腹膜炎、咽頭炎、胸水、肺炎、術後創傷感染、術後ガス壊疽、前立腺炎、偽膜性大腸炎、オウム病、腎盂腎炎、Q熱、ネズミ咬熱、リッター病、サルモネラ症、卵管炎、敗血症性関節炎、敗血症性感染、敗血症、全身感染、へんとう炎、トラコーマ、腸チフス、尿道炎、尿道感染、創傷感染;又は大腸菌(Escherichia coli)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebs. pneumoniae)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebs. oxytoca)、プロテウス・ミラビリス(Pr. mirabilis)、プロテウス・レトゲリ(Pr. rettgeri)、プロテウス・バルガリス(Pr. vulgaris)、インフルエンザ菌(Haemophilis influenzae)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)及びエンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)による感染の治療のための、請求項10~15のいずれかに記載の使用。
請求項16に「猫引っ掻き熱」が登場するからです。他にもなんで三菱重工業が?と思ったのですが、特許を確認してみたら
特許6742939
【発明の名称】回転機械
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受台に設けられた軸受によって支持された回転軸と、該回転軸を少なくとも部分的に収容した車室と、を具備した回転機械であって、
前記車室には、前記車室を支持するための少なくとも1つの猫足が設けられ、該猫足は、猫足台に支持されており、
前記回転機械は、前記車室の高さを調整するための高さ調整機構をさらに具備し、
該高さ調整機構は、前記猫足に形成された猫足の傾斜面と;該猫足の傾斜面に対向するように前記猫足台に形成された猫足台の傾斜面と;前記猫足と前記猫足台とを互いに相対移動させるためのアクチュエータと、を含み、
前記猫足の傾斜面および前記猫足台の傾斜面は、それぞれ第1の傾斜角度を有する第1の傾斜面および第2の傾斜角度を有する第2の傾斜面を備えていることを特徴とする回転機械。
猫足が含まれているためにヒットしていました。意外と猫という言葉使われるんですね。
次にランキング上位の出願人・権利者の件数推移を見て見ましょう。
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2004年から直近まで継続的に出願している企業は存在せず、断続的な出願ですね。猫やペット用品の特許や実用新案となると、製品・サービスを保護するためにそれほどの出願規模は必要なさそうですから、なんとなく納得です。
次に直近出願を急増させている出願人・権利者を特定するために、横軸に累積件数、縦軸に直近5年の出願比率を取ったポジショニングマップを示します。
左上に位置しているキヤノンが、出願規模は小さいが、直近出願を急増させている注目企業と考えられます。
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キヤノンと猫?と思われるかもしれませんが、いずれも下記のように被写体としての猫について言及している特許でした。
特開2023-133889
【請求項17】
前記検出手段は、検出対象の種別として、犬、猫、鳥、車、バイク、鉄道、飛行機の少なくともいずれかを検出可能であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
特開2023-066952
【請求項7】
前記制御手段は、犬と猫と鳥と車と瞳とで異なる被写体アイテムを表示するように制御する
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の撮像装置。
特開2023-065069
【請求項12】
前記検出手段は、犬または猫の鳴き声を検出し、
前記制御手段は、前記犬または前記猫の鳴き声を止ませる効果のある周波数の駆動音が発生するように前記駆動電圧を制御することを特徴とする請求項11に記載の撮像装置。
特開2023-009947
【請求項6】
前記特定種別の被写体は、人体、猫、犬、及び、馬の少なくともいずれかを含む
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の撮像装置。
特開2022-190237
【請求項16】
前記第2設定手段は、検出対象の種別として、犬、猫、鳥、車、バイク、鉄道、飛行機の少なくともいずれかを検出可能であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
特許7214681
【請求項2】
前記動物は犬、猫、鳥の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の被写体追尾装置。
特許6797871
【請求項14】
前記解析処理では、人物の顔と、人物の顔以外のオブジェクトとして犬又は猫を認識可能であることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載のプログラム。
4 CatTech(猫関連テクノロジー)に関する技術分野
それでは、CatTech(猫関連テクノロジー)として、どんな技術分野の出願が多いのか?筆頭FI(ファイルインデックス)メイングループから確認していきたいと思います。
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上位は猫を飼うためのケージやキャットフード、猫トイレ・猫砂となっています。ペットとして猫を飼う方のための特許や実用新案ですが、一方で猫を飼っていない方にとっては自宅に侵入して欲しくないという場合もあります。そんな方のための出願がA01M29(動物用忌避機)です。
たとえば直近の出願では、
実登3243252
【考案の名称】動物忌避具
【要約】 (修正有)
【課題】スズメ、カラス等の鳥類及び猫、犬等の小動物の両方に対して忌避効果を有する忌避具の提供。
【解決手段】動物忌避具10は、外面に位置する忌避装飾部30と、内部に収容された忌避剤含有体40とを備え、前記忌避装飾部30は中央開口31と中央開口31の外周に位置する着色部32とを有し、前記中央開口31から前記忌避剤含有体40が露出している。
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のように猫などの小動物を近づけないための忌避具や、
特開2022-057350
【発明の名称】猫用排泄抑制組成物及び猫の排泄抑制方法
【要約】
【課題】猫用排泄抑制組成物及び猫の排泄抑制方法の提供。
【解決手段】含硫化合物、飽和脂肪酸及び飽和脂肪族炭化水素化合物から選択される1種以上を有効成分として含有する、猫用排泄抑制組成物。
【背景技術】
【0002】
愛玩動物(ペット)の歴史は古く、その中でも猫は、古代エジプトの時代から現在のペットのような位置づけとして、または、ネズミの駆除などの実用目的で飼われてきた。現在では、犬・猫・ウサギ・小鳥などの動物が多く飼育され、人間の日常生活と密着した馴染みの深い愛玩動物(ペット)として定着している。その代表的な存在である犬と猫であるが、最近では、犬の飼育頭数が減少傾向である一方、猫の飼育頭数が増加しており、飼育頭数では猫が犬を上回っている。
猫は、その室内飼育が進んできてはいるものの、未だに自由飼育(放し飼い)が多く、人間に飼育されていない野良猫も加え、戸外で活動する猫が意図しない場所へ侵入し、人間の迷惑となる行為を行うなど問題となっている。特に、猫の糞尿などの排泄物に関する問題は、その強烈な臭気や掃除の手間などにより、大きな社会問題にすら発展している。また、室内飼育の猫も、トイレ以外の場所での排泄を意味する「不適切な排泄」や、「スプレー行動」と呼ばれるマーキング行為に悩まされる飼い主も多い。
この問題を解決するため、例えば、猫や犬が嫌がる忌避剤を処理するほか、超音波やホログラムシートによって忌避させるもの(特許文献1~3等)など、多くの忌避剤が開示されている。しかしながら、これらの方法による忌避効果は十分でなく、一時的に猫を忌避できてもすぐに元の状態に戻るなど、忌避効果の持続性に問題があり、糞尿などの排泄物による被害を十分に抑制することができていないのが現状であった。
猫の排泄を抑制する、つまり決まった場所でトイレをするように誘導するための組成物のような出願もありました。
最後に、上位出願人・権利者と技術分野(筆頭FIメイングループ)の件数分布について示します。
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トップのHILL'S PET NUTRITIONは飼料=ペットフード中心ですが、花王はペット用品の通販サイトにも掲載されている通り、様々な猫用ペット用品を手掛けています。
その他、上位企業でもあまりたくさん特許・実用新案出願している領域ではないということは分かります。
一昨年、絆創膏に関する特許出願を行い、昨年無事に登録になったのですが、今度はペット関連でアイデア出しを行って特許出願してみようかな、と思います。
5 おわりに
今回は「猫」というキーワードに限定していますので、その点は注意が必要です。今回はあくまでも、日本経済新聞の「ネコノミクス2兆円、消費動かす 百貨店売り場拡大」をきっかけにして、CatTech(猫関連テクノロジー)について調べたので、猫に限定していますが、通常であれば「猫」で限定しない方が良いでしょう。
最後になりますが、猫に関するテクノロジー、ペット用品なので手触り感もあり、分析していてもなかなか興味深いですね。
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