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前澤工業の24年度決算 考察

昨日、前澤工業の本決算が出ました。

まず、本決算翌日の本日の値動きを解説します


本日は〝いろんな意味での失望売り〟から始まって、下落したところを買い戻される展開になりました。しかし最後は少し利確売りに押されます。

チャートからわかることは…
① 失望売りの悪材料がなんなのか
② 安値で買いたい人が大勢いること

この二つが前澤工業を考察する上で考えなければいけないことです。


そもそも前澤工業を簡単に解説すると…
・時価総額300億円程度の小型株
・PER7倍 PBR1倍の割安株
・水道管、水道設備の会社
・水道管老朽化に対する国策銘柄

こんな属性を持っています。

前澤工業は今まで、その割安さと国策銘柄として注目が集まっていました

しかし問題なのは、今持っている人は「このまま持ち続けて良いのか?」という点と、今持っていない人は「ここから買っても良いのか?」という点ですよね。

わかります(๑˃̵ᴗ˂̵)



⑴ 24年度の業績と、来期予想は?

まず24年度の結果発表は…
売上高 365.1億円
営業利益 48.7億円
実績EPS  196.7円
実績PER 8.1倍

そして来期25年度の予想は…
売上高 375億円
営業利益 44億円
予想EPS  162.5円
実績PER 9.8倍

簡単にまとめると、24年度は絶好調、25年度はあまり良くないよーという内容です。

実績PER8.1倍は割安だけど、減益になることで予想PERは9.8となるので、「多少割高」という評価なのでしょう。

おそらくこれが、〝失望売りの正体〟です。




⑵ 今年度の財務まとめ

財務に目をやってみると面白いことがわかります。実は前澤工業が持っている投資有価証券が値上がりしているんです。

32億円→41億円と約9億円も増えています。
ちなみに受取配当金は1.1億円ほど。

前澤工業の24年度の配当金の支払額が5.5億円ですので、株式の値上がり額+受取配当金だけで約5億円もお釣りが来ます

つまり前澤工業は今期の利益が無くても、配当を余裕で支払えるという状態なのです。

配当マシーンとしては大変優秀です。

そもそも前澤工業はどんな株式を保有しているのかというと、前澤給装と前澤化成工業という「前澤グループ」の会社を保有しているようです。

逆に前澤給装と前澤化成工業も前澤工業の株を持っているので、お互いに持ち合いになっているんですね。

その前澤給装も水道管関連株として注目が集まっているので保有株の値上がりや増配による恩恵も享受できる立場なんです。

だからもっともっと株主還元か設備投資など積極的な経営をしてほしいところですが、アクティビストみたいなところが出てこない限り、そんなやる気のある会社ではありません😌



⑶ キャッシュフローから見える短期的な将来性

キャッシュフローを見てみると、来期は営業CFが大幅に増大しそうです。

というのも…
売上債権は増加、仕入れ債務は減少となっているからです。

つまり未回収のお金が溜まっていて、未払いのお金がほとんどないという理想的な状況です。他の会社なら取引先の倒産などの「取りっぱぐれ」が起き得ますが、前澤工業の取引先は国土交通省などの国なので大丈夫です。とても信頼性の高い取引先なので、売掛債権はそのまま手に入るでしょう。

来期はフリーキャッシュフローが溢れる予定なので、強気な増配も考えられます。現状は増配に期待できる、と言えそうです。




⑷ セグメント別利益の推移から見える安定性

前澤工業を長期保有できると考える1番大きな理由は「ストックビジネス」です。

23年度は利益のおよそ6割がストック収入(=無くならない収入)です。つまり19億円の利益は今後無くならないと考えて良くて、そこに本業として環境事業とバルブ事業が利益に加算される仕組みです。

そして24年度はストックビジネスが24億円に拡大して、その他二つの事業も絶好調でした。

このことから安定的に利益が拡大していくことが想定され、前澤給装や前澤化成工業からの受取る配当金も加味すれば、お金が溜まって溜まって仕方ないでしょう。

このお金の使い道は3つあります。
① 自社株買い
② 配当

③ 事業投資

③はなかなか難しそうなので、①と②に充られるでしょう。特に①は市場の流通株式がどんどん減ることに繋がるため、株式の在庫不足からどこかで急騰する可能性を高めることになり、②の配当が増額されれば手放したくない個人投資家が増えてますます株価の急騰が起きやすくなります。

つまり現金が蓄積される毎に、株式の数が減っていく好循環が起きるのです。

ただし株価の急騰はそんなすぐに起きるというわけではありません。




⑸ 株主還元方針のゆるーい修正

前澤工業の中期経営計画の内容は正直言って、欠伸の出る中身の薄い内容でした。語るほどの事はないので、一つだけご紹介すると…

配当性向を現在の18%→30%に増やすというもの。しかし明確な時期が書いていないので期待せずに見ておきましょう🥰

サンコーテクノのように〝書いているだけ〟という可能性も十分にありますので!



⑹ 長期保有に向く理由とその根拠

結局、前澤工業は買えるの?持ち続けられるの?という疑問が湧きますよね。わかります(๑˃̵ᴗ˂̵)

結論を言うと、「バリュー株のど真ん中。会社の魅力が増えていくのを見守り続けるだけの価値がある会社」です。

ただでさえも⑷で書いたように流通株式数が減ってきていることや、配当が増える見込みが高いこと、さらにストックビジネスと保有株式からの配当が今後増大していくことで現金がどんどん増えることが、長期保有できる理由です。

さらにその根拠となるのが、「資金調達コスト」と、「その資金調達から稼ぎ出す現金」の差が大きいからです。

実は今年度の前澤工業のWACC(資金調達コスト)はたったの1.0%で、ROIC(=投下資本利益率)は13.3%もあります。つまり低コストで資金調達をして、その資金で大きな利益を上げています。

前澤工業は価値創造力が高い会社なので、株式を持ち続けることがメリットになります。仮に高値掴みしたとしても、「時間の経過で着実に割安になっていく会社」と言えるでしょう。



ただし、この会社の魅力はなんといっても「国策銘柄」というところです。

水道管は我々国民の命に直結する最も大事なライフラインですので、災害大国の日本では最重要項目だと思います。

そんな水道管が老朽化により、漏水や断水の危険性が高まってきています。日本全国の水道管を入れ替えるには莫大な資金と時間が必要なので、「その莫大な資金」が「長期に渡って」前澤工業に注がれ続けます

だから普通の理論株価はこの会社には通用しないと思っています。理論上は年間約12%のペースで株価が上昇していくはずですが、そこに〝国策銘柄〟という属性が加わることで予想もできない急騰の可能性を秘めています。

日本国民は「安全」が大好きですから、民間保険にもいっぱい加入するし、安全のためならいくらでもお金を使います。原発の再稼働や先端半導体工場の建設には反対するけど、「安全のための」水道管入れ替えには税金を使うことに反対する人は少ないはずです。だからインフラ工事の財源は「比較的確保しやすい」と私は見ています。

前澤工業はそういう日本人の精神性にマッチした会社だと思います😌

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