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(仮)トレンディ電子文 第18回:筑紫哲也の対論本まとめ(2)

④若者たちの大神 (1987.8.31)

井上ひさし、大島渚、山崎正和、富岡多恵子、李恢成、筒井康隆、森毅、山口昌男、手塚治虫、石原慎太郎、西部邁、澤地久枝、阿久悠、横澤彪、岸田秀、大城立裕、磯崎新、武満徹、菅直人、野坂昭如、別役実、堤清二

 86~87年の連載「時代の気分を語る」を朝日新聞社から単行本化。「筑紫と同世代の面々との対論」とのことだが、生年は20~40年代と意外と幅広い。山崎正和の「褒め上手」の論理や西部邁の「ロマン派」自任など、保守系とのやり取りは特に面白いところに着地している。また「新人類~」以来筑紫は86年の「死んだふり解散」をたびたび持ち出して若者の無気力批判に落とし込もうとしているが、大島渚にそれは「大したことではない」といなされている。

⑤元気印の女たち (1987.12.25)

吉永小百合(女優)、猪口邦子(国際政治学者)、松田千枝(マラソンランナー)、山田詠美(作家)、中島伊津子(ファッションデザイナー)、木野花(演出家/女優)、奥谷禮子(人材派遣会社社長)、長谷川逸子(建築家)、吉永みち子(エッセイスト)、宮迫千鶴(画家)、五輪真弓(シンガー・ソングライター)、江上節子(「とらばーゆ」編集長)、アグネス・チャン(歌手)、中村あゆみ(ロック歌手)、松本小雪(タレント)、島森路子(エディター)、石岡瑛子(アート・ディレクター)、源啓美(ラジオ沖縄プロデューサー)、都築直子(スカイダイバー)、半田真理子(環境プランナー)、杉浦直子(池子米軍住宅反対運動)、佐藤綾子(パフォーマンス研究家)、西山栄子(コーディネイター)、三好礼子(ライダー/ライター)、清水真砂子(児童文学評論家)、高橋アキ(ピアニスト)、吉成真由美(MIT学生)、横山正美(写真家)、久和ひとみ(キャスター)、佐野洋子(絵本作家)、矢野顕子(シンガー・ソングライター)、河野美代子(産婦人科医)、山崎洋子(推理作家)、姜信子(普通の在日韓国人)、篠原滋子(ソフト制作会社社長)、氷室冴子(少女小説家)、平野レミ(料理研究家)、土井たか子(社会党委員長)、瀬戸内寂聴(作家)

 86年の同名朝日ジャーナル連載をまとめたもの。こちらはすずさわ書店から刊行。対論相手は全員女性だが、当時の朝日ジャーナル編集部は女性社員ゼロだったらしい。石岡瑛子らスターだけでなく、逗子の米軍住宅建設反対運動代表などの一般市民も並列で掲載されているのが流石(約10年後住宅は着工)。アグネス論争直前の彼女の様子(一人称は"ボク"!)がわかるのも貴重で、それが今に続く「バッシングの一形態」だったのだと想像がつく。中曽根のネクタイ失言を受けて「スカイブルーが好き」と混ぜ返すおタカさんが眩しい。

⑥茶の間の神様 (1988.4.26)

ジェームス三木、和田アキ子、久米宏、デーブ・スペクター、大橋巨泉、伊奈かっぺい、三枝成章、小林克也、古舘伊知郎、諏訪博、和田勉、板東英二、山田太一、樹木希林、笑福亭鶴瓶、黒木香、堂本暁子、木村栄文、川口幹夫、景山民夫、山内久司、小山内美江子、安部譲二、今野勉、永六輔

 朝日ジャーナル最後の連載となった87年の「テレビ現論」は何故かちくま文庫から刊行。TV関係者という括りで明らかに「ニュース23」への布石となっている気がする(久米の回で触れている"クロンカイトの一顰一笑"はキャスターの指針として重要だろう)。大橋巨泉が当時ぶちあげていた概念「インフォテイメント」は、日テレっ子だった自分にも懐かしく思い起こせる感覚だ。しかし連載を締めくくるあとがきで、筑紫はこの時代を「横澤彪の時代だった」と総括する。

⑦筑紫対論 (1993.11.30)

立花隆、山田洋次、井上ひさし、盛田昭夫、椎名誠、永六輔、倉本聰、遠藤周作、水木しげる、伊集院静、ミヒャエル・エンデ、草森紳一、小松左京、ヤン・フート、佐高信、佐野三治、黒澤明、野村克也、YMO、丸谷才一、五木寛之、渋井修、パトリス・ルコント、梅原猛

 朝日ソノラマより刊行。いよいよ「ニュース23」の時代に突入し、90~93年の番組第2部「筑紫対論」を文章化している(中島みゆきらが登場する続編もあるが、トレンディ期外なので割愛)。対論相手のパースペクティヴが一段上がった印象で、ソニー会長からエンデ、そして当時流行っていたのか?パトリス・ルコントまで登場(しかしそこに電通YMOが加わるのは癪に障る)。「天下国家的な論点に何が欠けているか」という視座の元、政治・経済・文化とを「混合論」として分け隔てなく取り上げる。それには角栄・竹下・金丸ら当時の支配者に欠けていたものへの批判精神があるという。

 以上7シリーズ、すべてに共通するのは「空になり相手の話を引き出す」という筑紫の態度だろう。故に時代性は濁りなく記録されていると思う。



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