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「lightmellowbu presents 90年代シティポップ名曲ランキング」anouta若山セレクトの20曲

※この記事は2020年に書かれたものです

lightmellowbu presents 90年代シティポップ名曲ランキング best50 Vol.2 25位→1位

 タツロー/まりやという権威を頂に仰ぐ形(ヤマタツ・ピラミッド)にすっかり見慣れてしまったこの数年の「シティポップ・ランキング」.....これではイカンザキ、とそこに鮮やかな軛を打つべく(?)、今夏に堂々公開された「 lightmellowbu presents 90年代シティポップ名曲ランキング 」。bu員&moreで好き勝手選びそれを集計した形をとったため、その結果は選んだ本人たちが驚くくらいカオスなものとなり(現在も1位の「村井博」は入手困難という...私は何故か持っていました)、また来年に集計すれば来年に知った盤が幾つか入るような状況であることも間違いなく、これらから導き出せるのは「このランキングは中間報告、あるいはプロセスなので引き続き各々digや理解を進める以外に道はない」という、ある種「修羅の道」のような事実なのでした。来年も再来年も生きなければならない。

というわけで、自分がチョイスした20曲も年内に公開しておくべきであるはずなのでそうします。「90年代」というワードにかなり敏感になりつつ選びました、というのも91年はトレンディですが97年はトレンディではないのだから...94年以降の盤はかなり「おずおずと」ピックアップしているのが透けて見えるはずです。

「90年代シティポップ」という定義は真剣に考えると意外と難しい。例えば80年代に(タイアップのヒット曲である)「RIDE ON TIME」をチョイスするかの如く、「hello, my friend」「ラブストーリーは突然に」を選ぶのはアリなのか?ASKAやミスチルの「シティ感のある楽曲」の扱いは?等々。それらを選ばない理由があるとすれば「J-POPだから」という感覚的な種別がありそうですが、「J」と「CITY」のその感覚的な差がどこにあるのか、自分は経年と共にだんだん忘れていってます。「CITY」と「渋谷」もそう。2020年なりの根拠不明な「踏みとどまり」を、以下のランキングから感じていただけたらまあ面白いのではないでしょうか。

1.君と僕と彼女のこと / 坂本龍一 Feat. 高野寛 
作詞 大貫妙子 作曲・編曲 坂本龍一
(From Album「Sweet Revenge」1994)

歌詞中の「10年後」というキーワードが象徴するように、 70年代の「都会」80年代の「色彩都市」由来の都市感覚を引き継ぐ楽曲であるという強い思いから1位チョイス。クィアネスがニューヨークの所謂「カッコイイ」イメージを触媒としつつ、新鮮さ(と奥ゆかしさ)をもって綴られているのも90年代ならでは。

2.心から好き / 宮沢りえ
作詞 KIKUJI 作曲 山田直毅 編曲 難波正司
(From Single「心から好き」1992)

奇跡のような出来栄えにアイドル歌謡枠に入れることすら憚られるミッドナイト・アーバン・ジャム。音数少なめの打ち込みに「エロティックな関係」を充分に孕む歌声が乗り、スムース感触を持続させる。伊東たけしのサックスが切り込んでくる瞬間を固唾を呑んで待つ。

3.チャイナ・カフェ / 高橋徹也
作詞・作曲 高橋徹也 編曲 高橋徹也、上田禎
(From Album「夜に生きるもの」1998)

「10年代シティポップ」の20年先取りに聴こえる強曲。タイトなビートにサチモス的深夜不良感を含ませつつも、歌声には東野純直的な「90年代の実直さ」もどこか垣間見え、のっぴきならない。スガ槇原らのようなタレント的な個性が全編さほど現れず、故にどの時代に聴いても瑞々しい。

4.21世紀の恋人 / 谷村有美
作詞 神沢礼江 作曲 柴矢俊彦 編曲 西脇辰弥
(From Single「21世紀の恋人」1991)

ceroのラジオで5年くらい前にかかっていた。子供のころに耳なじんでいた「ふつうの曲」が、時間を超えて「取り戻せない輝き」として聴こえることに驚く。あの頃のブラウン管越しにはまだあった「未来としてのシティ感覚」。

5.湘南ドリーミング / 村田和人
作詞 安藤芳彦 作曲 村田和人 編曲 中村哲
(From Album「空を泳ぐ日」1990)

当時賛否両論あったという「村田×打ち込みアレンジ」だが個人的にはど真ん中、大成功、トレンディ。ジャケのような、デジタル・グラフィックのひとつ前くらいの「絵の中の青空」を感じる。

6.せつなかった日 / 上田まり
作詞・作曲 上田まり 編曲 浅野祥之
(From Album「room」1998)

レココレのシティポップ別冊でその存在を知ったレイト90sレアグルーヴ。ミーシャ宇多田前夜の中間期グルーヴィー楽曲はまだまだ未発見盤が多い。この路線でアルバム1枚統一させていれば…

7.はじまりのkissをして / 長沢有起
作詞 鮎川めぐみ 作曲 熊谷幸子 編曲 松本晃彦
(From Album「kiss and make up」1993)

90年代日本が誇るべき天才作曲家、熊谷幸子。大大傑作のファーストセカンドから1曲というのがどうしても選べず、同時期の提供曲からピックアップ。按摩のようにほぐれてゆくメロディに聴き手はただ身を任せるだけ。

8.What do you want me to do -どうして欲しいの- / 中原めいこ
作詞・作曲 中原めいこ 編曲 中村哲
(From Album「303 EAST 60TH STREET」1990)

まあ80年代の延長ですが...90年代に中原は沈黙してしまうので「すべり込み」とチョイス。チャキチャキしたニューヨーク感覚、ブギーとラテンの狭間をトレンディに縫合していく打ち込みアレンジ。元気。

9.Candy / 具島直子
作詞・作曲 具島直子 編曲 桐ケ谷"bobby"俊博
(From Album「miss G.」1996)

この曲を「シティポップ」と呼んでいいのかかなり長い間ためらいがあったし今でも迷いがあるけど、いい曲だしみんな好きだしと日和ってチョイス。多分真の再評価はあと10年後くらいにやってくる。

10.雨がやまない / SMAP
作詞 久和カノン 作曲 寺田一郎 編曲 長岡成貢
(From Album 「SMAP 007 ~Gold Singer」1995)

BTSの「関係性発露」がSMAPを源流にした意識下にあることは間違いなく、殊に「6人組時代」の上下感の希薄さは彼らにより近い。「ダイナマイト」の次に「Life Goes On」と言うか「セロリ」とくるか、これは好みの問題。

11.キミとボク / 鈴木蘭々
作詞・作曲 EPO 編曲 清水信之
(From Single「キミとボク」1998)

2021年はボサノヴァが来るのでしょうか。誰よりも「痛み」を分かるシンガー、EPOが90年代の内外状態と向き合って静かに放った(提供した)赦しのラブソング。ゲイを救う歌詞とも思う。

12.Everlasting Love / 麗美
作詞・作曲 堀川麗美 編曲 堀川麗美、萩田光雄
(From Album「夢はおいてませんか?」1991)

あまりにも出来がいい、どこを切ってもザッツ91年なブラコン・ミディアム。これをやりたいという確かな意思を感じる。もし麗美に「ユーミン時代」が無かったら、却って現在の評価は高かったのではないだろうか…

13.抱きしめたい / 米米CLUB
作詞・作曲 米米CLUB 編曲 中崎英也
(From Album「Phi」1993)

米米やドリをシティポップと言っていいのか...しかしこの曲は良い。カップスープのCM曲だったこともあって「トレンディ生活」モードが幼年の記憶と共に刻まれていて、なしくずし的にチョイス。

14.私達を信じていて / Cindy
作詞 康珍化 作曲 Cindy、鳴海寛 編曲 鳴海寛
(From Album「ANGEL TOUCH」1990)

この曲も「トレンディ生活」な温度極まりない(温度極まりない?)マイフェバリット。アゲすぎない上品さは同時期の中山美穂(Cindy、鳴海共にクレジット)ともすごく相性が良く、こちらもサブスクで必ず聴くこと。

15.RAIN DOLPHIN / 有賀啓雄
作詞・作曲・編曲 有賀啓雄
(From Album「umbrella」1992)

「雨が降る、テンテケンテケン」の出だしがすべてとも言えそうなレイニー・モワレ・おセンチミディアム。この感じをより色気方向に結びつけた藤井フミヤ「わらの犬」(有賀編曲)も入れたかった。

16.ヴィーナス / Original Love
作詞 木原龍太郎 作曲 田島貴男 編曲 オリジナル・ラヴ
(From Album「結晶 SOUL LIBERATION」1992)

昔彼らを「ジナラヴ」と略すとTVでやっていて中学くらいまではそう呼んでいた。「クイズ!年の差なんて」で「ミスチルとは何の略でしょう」という問題が出たとき、加藤茶は「日本のスープ※」と答えていた。

17.COOL WATER / 浜本沙良
作詞 夏野芹子 作曲 山口美央子 編曲 有賀啓雄
(From Album「Truth of Lies」1995)

フォーライフから何か1枚入れなければ、とbuのthaithefishさんフェバリットを。アルバムの1曲目が中原めいこ調ラテン・ポップスでこれが2曲目というのが面白いのですが、いつもこっちから聴いてしまう。

18.Love Popsy Love / いしだ壱成
作詞・作曲 いしだ壱成 編曲 中村哲、いしだ壱成、迫田到
(From Album「Simple Thing」1994)

何気に中村哲アレンジ3曲目。全然意識はしてませんでしたが…このアルバムはマサカーで〆にかけるくらいに好きです。詳しくはトレ歌ブ第23回をご覧下さい。

19.新しい風 / 岩下清香
作詞 福士久美子 作曲 片寄明人、堀江博久 編曲 井上富雄
(From Album「眠らせないで」1996)

90年代シティポップ、と言った時にまず頭に浮かんだのは実はこの曲だった。buのinudogmaskさんミックス「Soul, Female, Mellow, Yellow」や片寄明人のシティポ始祖鳥的オムニバス「Mellow Best of J-AOR」に収録。

20.夏のおわり、近づいた空 / GWINKO
作詞 大山潤子 作曲・編曲 柿崎洋一郎
(From Album「I'M IN」1990)

この曲をサンプリングしたフューチャーファンクありましたよね(何だっけ…?)NJSとシティポップの結節点的な重要曲なので、今後もっと「名曲」扱いしてオムニバス等に収録してほしい。

※「ミスチル」と「みそ汁」をかけた

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