激情の朱い花
イビツな水晶が生え、霧が立ち込める街で豚顔の男は首を掴まれて持ち上げられていた。少女は鷹のような鋭い爪と朱い結晶が生えた右腕で、男の首を締め上げた。
「よく魔王って名乗ったわね!この程度の異界化で!」
豚顔はうめき声をあげ、手足はばたつかせていた。
「死ね!」
朱い水晶が発光した。
(だめだよ、アキちゃん)
頭に声が響き、胸にズキリと痛みが走る。
アキはバランスを崩しながらも豚顔を地面に叩きつけた。
術者が気絶したことで、霧が晴れ、水晶は崩れ、街が元に戻っていく。
アキの右腕から朱い水晶が少しづつはがれていった。彼女は未だ戻り切っていない爪を自分の首に突き立てようとした。
(生きてよ)
少女が腕を掴みとめる。
(死なせて……マイ)
アキの視界は黒く染まった。
「朱姫さん、起きてます?」
「……池田ね」
病院のベットの上でアキは天井を眺めていた。
「また死のうとしたんですか、もうやめてくださいよ」
「あの子に支配されてるって思うとミジメでね」
アキは窓に目を向けた。
「舞子さんの気持ちをわかってくださいよ」
「わかってるわよ。償えない罪を償えってあざ笑ってる」
「そんなことのために殺した相手に自分の命をあげたりしませんよ」
「アレで結構人を困らすのスキなのよ。それにアンタも私に死んでほしいでしょ?兄を殺されたのだし」
池田は視線を落とした。
「そんなに死にたいなら一度舞子さんに向き合ってはどうですか」
「どういう意味?」
「あなたにとりついている舞子さんの意識としっかり話し合えば死ぬのを納得してくれるかもしれませんよ」
アキは池田のほうへ向いた。
「舞子さんの肉体は死んでないのはわかってますよね?この病院にいるのであってきてください。肉体が近い方が意識とのやりとりもしやすいはずです」
池田は出ていった。
──
「お人形さんみたいね」
眠り続けるマイの髪をアキはそっと撫でた。
【続く】
さぽーとすると映画館にいくかいすうが増えます