ブラッドボーン 夜明けを追う狩人 第五話 『狩人の夢』
「はじめまして。狩人様。私は人形。この夢で、あなたのお世話をするものです」
整った顔立ち、人形の名にふさわしい上品で可愛らしい服装。手の球体の間接が見えなければ、目の前で立っている人物を本当に人形であると思わなかっただろう。はじめてここに来た時は動いてなかった。なぜ動き出したのか……いや動いていたのに気付かなかったのか。何故かそんな考えが浮かぶ。
「狩人様。血の遺志を求めてください。私がそれを、普く遺志を、あなたの力といたしましょう」
何故を考える俺をよそに人形の説明は続く。どうやら血の遺志というのを使うと力に変えられるらしい。獣を狩るたびゾワっとした感触があった。アレが血の遺志のようだ。
「獣を狩り…そして何よりも、あなたの意志のためにどうか私をお使いください」
あなたの意志のためか……記憶のない自分には、何が自分の意志なのかわからない。ただ襲い来る獣を狩っているだけだ。自分は何者なのか、青ざめた血とはいったい何のか、そんなことを尋ねたかったが言葉にしようとしても霧のように消えて声にならない。夢……ここは現実でなく夢だから自分の思い通りにならないのかもしれない。
ひとまず手を差し出し血の遺志を力に変えてもらう。体力、持久力、筋力等々の欲しい力が頭に浮かぶ。敵を狩るには筋力か……そう思いかけたが「聖職者の獣」のような巨大な相手には、多少筋力がついたところで意味はないだろう。ならば少しでも生き延びるために体力、そして逃げ伸びる力を上げるために持久力だ。持久力が上がれば息切れが減り、武器を振る回数もとびのける回数も増えるはずだ。
「ゲールマン様にお会いしましたか?あの方は古い狩人、そして狩人の助言者です。今はもう曖昧で、お姿が見えることもありませんが…それでも、この夢にいらっしゃるでしょう。…それが、あの方のお役目ですから…」
どうやらまだ人がいるらしい。曖昧な存在とはどういう意味だ?会って確かめるしかないか。俺は感謝の言葉の代わりに一礼をし、ひとまず坂の上に見える建物を目指し歩き始めた。
中には古ぼけた大量の本と作業用と思われる机、たくさん物が入りそうな箱、女性の石像と祭壇の場所。そして車いすに座った老年の男性がいた
「やあ、君が新しい狩人かね。ようこそ、狩人の夢に。ただ一時とて、ここが君の『家』になる」
車椅子の男を見ると反射的に最初に輸血をした男を思い出したが、それとは別人のようだ。
「今は何も分からないだろうが、難しく考えることはない。君は、ただ、獣を狩ればよい。それが、結局は君の目的にかなう。狩人とはそういうものだよ。直に慣れる…」
ただ狩れか……わかりやすい反面何の説明にもなっていない。狩る意味は一体何なのか。こちらも人形と同じく考える俺をよそに説明を続けていた。簡単にまとめると、ここは血によって肉体と武器を強化出来るとのこと。肉体は人形がしてくれたことだとして武器はあの作業台だろうか?
作業台に向かって武器を置く。武器を改造するなど初めてだが何をすればいいか、浮かんできた。ただ今は必要な素材が足りない。ひとまず血の遺志を注ぎ込み武器を修理するだけにとどめた。ふと横を向くとメモが落ちている。
「忌々しい狩人の悪夢に囚われ、だが逃れたければ獣の病蔓延の原因を潰せ。さもなくば、夜はずっと明けない」
悪夢、そして病の原因。どこにあるのだろうか?狩り続ければ会えるのだろうか。夜が明けないというのは比喩なのか文字通りの意味なのか。
尋ねたくてゲールマンを見るが声は出ない。説明してくれる気配もない。ただゲールマンを見つめていると違和感があった。一体なんなのかわからない。だが違和感がなにか確かめる方法はなんとなくわかっている。武器を構え、獣を狩るように振り下ろす。
当たった瞬間霧のように消えた。たぶん死んではいない。存在が曖昧というのはこういうことだろうか?
俺は他に何かないか探す。武器をくれたあの気持ち悪い白いのが、血の遺志と引き換えに輸血液などを売っていた。人形が言うにはアレはこの夢の中の住人で「使者」という。狩人を見つけ、慕い、従う…そしてカワイイらしいとのこと。最初使者出会ったとき、あの時見つけられたのだろうか。慕い従うのは嬉しいが、かわいくは見えないな。人形ならではの感性か。まだ探索を続けると啓蒙というのを引き換えに売るところがあった。
啓蒙とは聖職者の獣を見たときにあったあのゾワっとした感覚のことのようだ。アレを渡すというのはよくわからないが、今は買い物はよしておいた。
一通りやることが終わったので夢から出ることにした。どこへいけばいいか。今のところ頼りになるのはギルバードだけだ。ギルバードの前にも奇妙なランプがあったことを思い出す。
あそこを思い浮かべて使者の導きに従い、そして目覚めた。
さぽーとすると映画館にいくかいすうが増えます