魔法少女応援隊!心に響け男の雄叫び
ゴワァアアアアアア!
ウォオオオオオオオ!
トラックほどの体格を誇る魔犬のうなり声に、男たちは肌と肌を合わせ、肩をつなぎ叫ぶ。両者一歩も引かず、火花を散らす。そんな激闘の後方で、魔法少女サオリが困惑していた。
知らない半裸のおじさんたちが、応援し始めたと思えば犠牲者が出る。そんな光景を目の当たりにしても下がらず前に出る。信じられないことの連続、ただ態勢を立て直すに機会は得た。
息を整え、集中する。体を巡る力を杖に集める。白いローブがはためき、金色の髪が揺れ、杖の先の宝石に光が集まる。強大な相手でも一撃で葬る必殺の光を構える。後は狙いを定めて撃つだけ。撃つだけ……。
ゴワァアアアアアア!
ウォオオオオオオオ!
威嚇合戦は続く。サオリは再び困惑する。魔犬の前におじさんたち、全開で撃てば巻き込む恐れがある。一点を狙うなら、光を収束させ狙い撃つ必要がある。狙うには集中がいる。
サオリが狙いをつけるべく集中している間に、魔犬は男たちの後ろで起きている異変に気付く。危険な光を感じ取る。
ウォオオオオオオオ!
男たちの叫び声を無視!体格に似合わぬ跳躍を見せ、男たち後方に着地。サオリの姿を捕える。攻撃の性質を感じ取ったのか、ジグザグに走り、距離を詰める。
「守りを突破された!」「イカン!このままでは!」「止められねぇ!」
男たちに焦りと絶望が走る。このままでは魔法少女を守れない。
「俺に任せろ!」「お、お前は!」
若林は死んでいなかった。かろうじて生き残り一時戦線を離れていただけだった。だが彼一人では走るトラックである魔犬を止められない!
「こいつを見ろ!」
その手に握られているのは……ほねっこ!
相手が犬ならば効果があるはずと、コンビニで急いで買ってきたものだ!
魔犬は走る方向を……ほねっこに変える!
犬である以上ほねっこに逆らえない。若林にまっすぐ突っ込む。
このまま突っ込めば今度こそ若林は死ぬ。だが動じず掲げ続ける。
飛び上がり大顎が開き、死が飲み込もうとする。
その刹那、閃光が魔犬を貫く。死より早く。
動きが直線的なら、狙うのはたやすい。上手く決まったことに、サオリはホッとし肩をなでおろした。
「若林よくやった!」「魔法少女ありがとう!」「われらの勝利だ!」
男たちが一斉に魔法少女へ向かい、胴上げ開始。
「やった!」「わっしょい!」「今夜はスキヤキだ!」
いつまでも続く胴上げに「帰りたい」サオリはつぶやいた。
【一話完】