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住民の多様化するニーズに応えたい。全国で2番目に小さい町・三宅町が複業人材を登用するワケとは?
大正11年に始まったグローブの製造が2021年に100周年を迎えた三宅町は、歴史と文化の香る町。
1時間電車に乗れば大阪・京都にも行くことができます。都市部と山間地帯の中間に位置する三宅町はまさに「ちょうどいい田舎」。
面積は4.06平方キロと、全国で2番目に小さい町としても知られています。そんな小さな町が、複業人材登用をはじめとする官民連携に力を入れている理由や感じた効果を、三宅町の町長である森田浩司氏に伺いました!
32歳という若さで町長に
ーー町長になることを視野に入れ始めたきっかけは何だったのですか?
実は、町長になるとは思ってもいませんでした。まだ民間で働いていた当時、住民が求めていないことが街の中で起きていました。たとえば、恋人の聖地に選定されたり、何百万もかけたオブジェができたり。
僕らが外で文句を言っていても何も変わらないのは事実。なぜなら、選挙に出て落選のリスクを背負いながら議員になっている方に、発言権があるのは当たり前だからです。
若い世代の想いや意見を届けるためには、僕がその方達と同じリスクを背負い、同じポジションに立つ必要があると感じました。
ーーまずは議員としての活動に注力していたのですね!そこからなぜ町長になろうと考えたのですか?
議員目線で町政の問題を目の当たりにし、おかしいことをおかしいと素直に言い続けていました。
そんな中、町会議員に当選した1年後の町長選挙において、無投票当選が予想されました。僕が出馬した理由は、無投票当選となれば議員として町政を批判していた僕も、その町政を認めたことになるからです。
もし僕が負けたとしても、出馬して反対している人がどれだけいるのか可視化することに意味があると思いました。
またある日、地区のおばあちゃんたちに泣いて出てくれと頼まれたりして。この人たちの想いを裏切れないと思い、出馬を決めました。
ーー住民の想いを大切にされているのですね。住民とのコミュニケーションはどのように取っているのですか?
5年ほど前から平日はほとんど毎日駅に立って、そこでコミュニケーションを取っています。朝の6時50分頃から8時頃まで。大変というよりは、住民の皆様からパワーをもらっているので、日課になりました!
毎日顔を合わせることで住民の方と気軽に雑談でき、困っていることも直接聞くことができます。
もちろん大人だけではなく、小学生も声をかけてくれます!1回目の選挙の公約で、暑い中10分以上話されると嫌だという声を聞き、子供たちと運動会の挨拶を短くしますと約束しました。
多様化する住民のニーズに応えるために
ーー三宅町では官民連携を積極的に進めていますが、複業人材を受け入れようと思ったきっかけは何だったのですか?
公務員は決まったことを積み重ねてコツコツやっていくことは得意なのですが、ゴールが見えない取り組みを新たに始めることが苦手で、そこが課題でした。
住民のニーズが多様化する中で、今まで通りのやり方を貫いていると解決できないことが必ず出てきます。
新たな手法にトライするため、外部からプロの人材を受け入れたい。
ただ全国的な事例を見ても、多大な予算をかけて優秀な人を募集している場合が多く、なかなか踏み切れなかったのです。そんなときにAnother worksに出会いました。
連携を決めたのは、代表である大林さんの人柄とビジョン、見ている景色にワクワクしたからです。
当時は、複業プラットフォームは浸透していませんでしたが、働き方はもっと自由になると思っていました。Anotherworksが描く「自由な働き方」という未来を一緒に作っていきたいと思い、連携を決めました。
ーーそしてAnother worksとともに三宅町に参画してくれる複業人材を探すことになったのですね!今回「DX」「広報・PR」「人事」の3職種で複業人材を募集した理由をお聞かせください!
DXの面では、まずDXとは何か?ということを、役場職員も僕自身も理解するところから始めたいと思い募集しました。
DXだと言って、結局誰も使いこなせないシステムを導入することを防ぐために、プロの人材からレクチャーを受けたいと思ったからです。
人事の面では、新しく何かを生み出せるような方を採用するためにも意見を聞きたいと思い公募しました。
今まで行っていた採用試験では同じようなタイプばかりが採用される傾向にあるので。
広報の面では、住民の方から街が何をしているかわからないという意見をよくいただいていて、自分たちの活動を伝える発信が下手だと課題に感じていました。
これは行政の考え方と課題、住民の考え方と課題に溝がうまれてしまうということです。この溝を埋めるのが広報の力。住民と一緒に町のことを考えられる環境づくりを手伝っていただきたく募集しました。
ーープロジェクトが始まる前に不安だった点や、実際はどうだったのかをお聞きしたいです!
うまくいくと確信していましたが、一つ懸念していたのは、役場職員とマッチするのかという点ですね。そのため、採用の際は組織に合う人を意識して選出しました。
実際にはうまくいき、複業人材の方からの影響で職員の表情が良い方向に変わっていく姿を間近で感じました。
最初は警戒心を抱いていた職員も、プロジェクト会議に入れて情報をオープンにすることで、複業人材の方への信頼感が高まりました。
組織の横のつながりも複業人材の方が作ってくださり、役場内においても部署を超えた議論が活発になり良かったです!
ーー他にAnother worksと連携してよかった点はありましたか?
名の知られていない地方の小さな町に、全国から優秀な複業人材が集まるのか不安でしたが、蓋を開けると100名を超える応募がありました。
都市部でも地方の役に立ちたい、地方創生に関わりたい、町を盛り上げていきたいと思ってくださる方が多くいると感じられたのは嬉しかったです。
小さい町でも、一緒にやろうよと力を貸してくださる方がいて、勇気もいただけました。
官民連携・複業人材の可能性
ーープロジェクトを終えて、これからの地方×複業人材の可能性はどの様に感じられましたか?
コロナ禍でマイナスではなくプラスだと思っているのは、働き方が自由になったことです。
今までは「働く=住む」という考え方になりがちでしたが、住む場所と働く場所が離れていても支障が出ないことがわかりました。自由に自分の居場所を選べる環境になった今、地方での複業はますます加速すると思います。
今回民間の方から、行政が何を考えているか、どうやってアプローチすれば良いかわからないというお話を聞きました。行政でも民間の考えてることがわからないという、変なミスマッチが起こっています。
民間の方が行政で複業したり、公務員が民間で複業したり、そのような動きが活発になればなるほど、今以上に可能性は広がるでしょう。
お互いを行き来することで、垣根をなくしてフラットにする。お互いが得意なリソースを補完し合うことで、地域がよくなっていく。そんな未来を期待しています。
ーー今後地方での複業を考えている方にメッセージをお願いいたします!
迷ったらやってみてください。迷ったら楽しそうな方に動いてください。不安なこともあるかもしれませんが、ワクワクしたら飛び込んでください。僕自身、ワクワクする方に飛び込んで、その先にあった複業人材の方々との出会いは、人生の宝になりました。
三宅町とAnother works の取り組みに関してはこちら
取材:石川 共笑
編集:高岡 慧