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高橋一生はやっぱり主役級の役者だったって話
映画「星の子」の舞台挨拶で芦田愛菜ちゃんが言っていた言葉にひどく感銘を受けた。
ーその人のことを信じようという言葉をよく使うと思うのですが、それってどういう意味なんだろうと考えた時に、その人自身を信じているのではなくて、自分の思う理想像を期待してしまっているのではないかと感じました。だから、『期待してたのに』とか『裏切られた』というような言葉が出てきてしまう。でも、普段見えなかった側面が見えただけで、裏切られたわけではないのかなと思います。知らなかった側面が見えた時に、それもその人なんだって受け止めて決断できる揺るがない自分がいる。それが信じるっていうことなんだと思いました。ー
言葉に対してここまで解像度を上げられる10代はなかなかいないのではないか。
そんな尊敬してやまない芦田愛菜ちゃんの脳みそを創り上げているものは他でもない、趣味の読書だ。
本を読むと語彙力が身につくことはもちろん、想像力が広がる。映像があるわけじゃないから自分の脳内で劇場を開いてストーリーを作り上げるしかない。読む人によってその本は全く違うものになる。だから、書籍の映画実写化は「なんか違うんだよなあ」が多いんだと思う。
最近ビジネス書ばかりで小説を読んでいなかったから、本屋に平積みされていた朝井リョウの「世にも奇妙な君物語」を読んだ。
短編小説でありながら、複数の伏線が引かれ、しっかりオチで回収していく。非常に読みやすい小説だった。
第5章の「脇役バトルロワイヤル」では、長年脇役としてしか活躍できない役者たちが主役を勝ちとるオーディションの様子を描いたものだ。
そこで語られる#脇役とは が非常に明快で納得がいく。「破天荒な主人公と客観性ありまくりの友達役というありがちな構図」ーたいてい重い過去を抱えた主人公に対して「普通忘れたいでしょあんなこと」と言ってそれとなく背景を説明する脇役ー最終回では主人公の味方になる実はいい人ー
ナレーターがないドラマや映画にとって脇役は「説明役」として非常に重要な存在なのだ。
じゃあ#主役とは 何か。
寡黙でありながら一目置かれる存在であることもあれば、破天荒で熱いハートを持っていることもある。ただ、主役を飾れる役者は他のどんな作品でも主役であることが多い。
つまり脇役を演じることの多い役者ほど役者像が固まっていると言える。
先日、「スパイの妻」の主役を演じた高橋一生がGINZAのインタビューに対して
ー世の中にはついた方がいい嘘がある・・全てを正直に語ってしまったら、幻滅させてしまうだろうし人も物ごとを遠ざけてしまいます。・・俳優がバラエティ番組に出たときの受け答えが、役柄にあるイメージを付加してしまったり。・・・作品を純粋に楽しむためには、演者と観客は距離を持っていた方がいいと思っているんです。ー
確かに。主役級の役者がバラエティで場を回す司会者を担っていることはほとんどない。
番宣にくる役者はいつも「おじゃまします」くらいのノリで出てくるし、そこで強烈なキャラクターを演出していることもない。
役者に重要なことは観客との距離だと語る高橋一生は、やっぱり脇役ではなく主役なのだということがよく理解できた。