行政と民間の間に「壁」はあるのか?民間の知見を求める自治体が急増している背景とは
こんにちは。株式会社Another works代表の大林です。複業したい個人と企業・自治体を繋ぐ総合型複業マッチングプラットフォーム「複業クラウド」を運営しております!
今回のテーマは、「官民連携」。
地方創生・地域活性が叫ばれる中、行政が民間の知見や経験を取り入れながら行政課題の解決、そして住民サービスの向上を目指す動きが広がっています。実際、株式会社Another worksが提供する複業したい人と自治体のマッチングサービス「複業クラウド for Public」でも、提供開始から約3年で80以上の自治体に導入いただいています。
どのような狙いで行政の民間人材登用が広がっているのか、民間人材が行政で働く上で障壁はないのか、詳しくお話していきます!
行政が民間人材と協働するワケ
まずは、なぜ今行政の民間人材登用が増えているのか、理由を紐解いていきましょう。
第一に、住民サービスの向上において民間のノウハウが必要になった点が挙げられます。新型コロナウイルスの流行や災害の多発化など、時代の急速な変化に応じて今までにない新しい行政サービスの提供が求められるようになりました。例えば、オンライン化が進んだことによる住民サービスのDX化、災害時の連絡網の整備、情報発信の強化など、枚挙にいとまがありません。
これらの新たな課題は、行政にとっては未経験だったとしても、民間で先行事例があったり、既に当たり前となっている領域であることが多く見られます。このギャップは「民間人材の常識が行政の非常識」「行政の常識が民間の非常識」とも呼ばれることがありますが、決して悪いことではありません。双方をブレンドすることでいい化学反応が起きるためです。
実際にメール文化の自治体がSlackを導入することでより早く正確な情報発信が実現出来たり、紙ではなくPDFでやり取りをして生産性を上げたり、広報誌のリデザインを通じて情報発信効果の最大化を図ったりと、これまで多くの官民連携による化学反応が生まれてきました。
次に、職員の意識改革、スキルアップを狙うケースがあります。弊社では、「複業クラウド for Public」を導入している首長から「職員の意識改革、スキルアップに繋がる」と声が寄せられることが多くあります。
民間人材の仕事の進め方や考え方は、行政職員の通常業務に還元できるのです。例えば、民間人材が当たり前のように設定している“KPI”の手法、会議の進め方や議事録の取り方、期限の切り方(タスク期限の考え方も含め)、新規事業や企画の立ち上げ方、アイデアの出し方などが挙げられます。
最後に、関係人口の創出を狙うケースです。
民間人材は、移住定住を伴わないオンラインで関わることが可能です。そのため、全国各地から人材を募集することができ、自治体の知名度向上や関係人口の増加につながります。弊社の取り組みでも、プロジェクト終了後もその地域に関わり続ける複業人材が多くいらっしゃいます。
自治体が民間人材を受け入れるときの「壁」
このように、時代の変化に伴い、行政が民間人材を必要とする中、自治体が民間人材を受け入れる際に障壁となる点はあるのでしょうか?
まず、実際に手を動かす職員様の理解です。行政にとって民間複業人材を受け入れることは未知の領域であり、挑戦するにあたってネガティブなバイアスがかかってしまうケースがあります。「日々の業務を全否定されるのではないか」「全く分からない用語で話が進むのではないか」など、経験がないからこその不安がついてまわります。
また、いざ受け入れようと思い立ったとしても、民間複業人材の見極めは難題を極めます。解決したい課題に対してどのようなスキルや想いを持った人材がマッチするのか、プロフィールや面接から見抜かなくてはなりません。特に、求めているアウトプットが出なかった場合、継続して採用し続けることが難しくなるため、スキルにおいては特にシビアに見極る必要があります。今までの公務員採用とは全く違う採用という部分も壁となるのです。
そこで、弊社提供サービス「複業クラウド for Public」では、自治体と約半年間、実証実験という形で複業人材登用に関するプロジェクトを進めます。ポイントは、複業人材のほとんどがプロボノ(専門知識やスキルを生かして取り組むボランティア活動全般)として自治体に参画している点です。
「複業人材が本当に自治体のことを理解してくれるのか」「目線や使用言語を合わせてくれるのか」という職員さんの不安は、お試しでもやってみない限り、取り除くことは難しいでしょう。そのため、ファーストステップとして、まずはプロボノで自治体へ「複業」する人材を登用していただくことが大事なのです。
面接や採用段階では、弊社社員が伴走サポートさせていただき、「複業人材が自治体が抱えている課題を解決できるスキルを持っているのか」を確認することはもちろん「なぜその自治体で複業をしたいのか」という想いを見抜くポイントをアドバイスさせていただいています。
次に、行政の独特な予算形態についてです。民間企業とは違い、行政は費用が発生することに対して住民や議会への説明責任が求められます。そのため、効果が予測できない事象に対して予算を投下することが難しい、年間予算の取得のタイミングを逃してしまったためにすぐにプロジェクトがスタートできない、という自治体は少なくありません。
一方、まずは無償の実証実験をスタートし、その間に一定の成果を出すことで、行政は結果を「裏付けとなる根拠」として挙げ、説明責任を果たすことができます。
ここまで、行政が民間人材を求める理由と障壁についてお話してきました。今後、行政の民間人材登用はさらに増加し、近い未来、当たり前となると予測しています。是非、これからの動向にもご注目ください!
大林 尚朝 / NAOTOMO OBAYASHI
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