杉木立
旅行先で友人のSと出会い言葉を交わす。私が同行していた女性(私が全く知らない人)はSと同業者だった。
「彼女はお前と同じ業種の会社で働いているんだよ」
私が女性の勤務する会社の規模を教えると、Sは「企業規模が違いすぎるな」。
Sが勤める小さな会社との協働は難しそうであった。
杉木立の中の舗装した傾斜路の途中で私たちは会話していた。黒々と覆いかぶさる杉の中で、傾斜路は白い。
私がSと女性をつなげようと思い立った仕事は、大きな会議の企画運営だった。出席者一名あたりの単価があり、出席者数に単価を乗じた金額が運営会社の収入になる。遅参者や途中退席者は単価が一定割合で低くなるため、運営実績を正確に記録するのが非常にやっかいである。
私は無人駅からトロッコのような小さな箱型車両に乗り込んで目的地に向かいながら、手帳を片手にまだ始まってもいない会議の実績計算に我を忘れていた。