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サンキュー・スモーキング

1ヶ月

僕がこよなく愛したハイライトメンソールとお別れして1ヶ月。たかが1ヶ月、されど1ヶ月。

僕も人並みに学生時代を過ごした。卒業する度、苦楽を共に過ごした学友との別れを惜しんだ。しかしながら、新天地に飛び込んで1ヶ月も経てば、徐々に順応して居心地の良さも覚え始める。あれだけ惜しんだ別れも、着々と思い出から過去へと記憶の中で美化され形作られていく。

禁煙を継続すると、あの時の感覚を思い出す。
必要だったものが段々手離れしていくような。依存から解脱して違うステージに向かっていくような。悪くない感覚。

金銭的負担と健康配慮の為に禁煙令を敢行したが、今のところストレスは全くない。恐らく、この浮遊した快感を身体が覚えてしまったからだ。どの道、僕は目先の快楽に滅法弱いことが分かった。

ポッドキャストでタバコへの愛を散々話した手前、こんなことを書けば、「急に手のひら返しかよ」「帰れよ」「外道」と喫煙者から言われるだろう。ごもっともだ。肩パンでもしてくれ。僕の眼球に龍のタトゥーでも彫ってくれ。

タバコが悪影響の魔窟であることを今更言うのはナンセンスだが、一方で良かったことも少なくない。手垢がつくほど散々言われているが、やはりコミュニケーションツールとしての比類の無さが1番だろう。

普段中々話せない偉いジェントルや、女友達が紹介してくれた彼氏、全然会わない親戚。これらの面々が喫煙者だった途端、オーバーゼアだった存在が急にフレンド申請を承認してくれる。ソッコーでファイナルディスタンスまで行ける。マジ宇多田ヒカル。

マー君との思い出を振り返っても、大体タバコを咥えてた気がする。いつかの京都旅行、ホテル側の手違いでスイートルームに通された時に吸ったメビウススーパーマイルドは本当に旨かった。隣にマー君がいなければ多分もっと旨かった。

なんでふたりでスイートルームなんだよ。
新しい地獄を見せんな…

当時の記憶が鮮明に蘇る。

また、喫煙所はエスケープポイントにもってこいである。僕のように強制的にでもひとりの時間をつくり出したい人にはうってつけだ。逆に、吸わない人は自分の隠れ蓑をどこに拵えているのだろうか。僕のこれからの課題でもある。

さて、禁煙1ヶ月の雑魚がこんな大風呂敷を広げた以上、僕はもう一生タバコを吸えない許されざる者となった。それくらいやめる時は覚悟が必要だ。



それにしても、あんな愛煙していたのに最後の1本をどこで吸ったかまったく思い出せない。
それでもいいかな。






いや























繰り返すけど、1ヶ月程度の禁煙でこの熱量やばいだろ。
おまえ誰だよ。

#あの沈

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