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変態的美術館 第七話


前回の続きになっております。








四人で話している間テオは
 ずっと香織の方を見た。
それに気付いてるのは麗華と健一だけだった。


香織はお酒が入っている事もあり目線に気付かず
無邪気にギャラリーに来る風変わりな常連の話などをした。



そしてテオの熱い眼差しにも気づかない香織の無邪気さも麗華は気にいらなかった。



そうして互いの仕事の事情などを話している間にワインは空き、

カウンターから
「どうする?もう一本持ってこようか?」

と佐々木さんが提案してくれたが、

麗華が
「私もう疲れちゃったわ。
今日はもうお開きにしましょう。」

と言うので私も
「そうね、」と 腕時計に目をやると時刻は
23時38分だった。


ほんとはもう少しテオと居たかった、と
ちらっとテオを見ると目が合った。
テオもその目は香織と同じ事を考えてる様だった。


健一は早く帰りたそうだった。
四人で話している間も
テーブルの下でちょっかいをかけていて
早く香織と帰りたい様だった。

香織は自分から健一を呼んだが今日は
一緒に帰る気にはなれなかった。





「佐々木さんお会計お願いします」
とテオが言った。

「ok」
とにっこり笑って佐々木さんは会計に取り掛かった。




「香織さん、良かったら連絡先教えて頂けませんか?」

とテオが聞くので私は
「もちろんです。」

と言ってテオは私に「貸して」といい
私の携帯を手に取って自分の電話番号を打った。

健一はちょっと身を乗り出し嫌そうだった


少し強引だなと思ったが私はこういう強引さが
嫌ではないのだ。
むしろ香織はリードしてくれる人を好むのででこういった行為は更に彼を魅力的に思わせるのだった。


香織とテオのやり取りを見て
「あら、携帯なんてただのお飾りみたいで
私やご両親の連絡も取らないじゃない。
意味無いわよ。」
と少し笑いながら香織に向かって言って
すぐに健一の方に向きを変えて
「健一君、あたし達も番号交換しましょうよ」


と言って健一と麗華は連絡先を交換した。

「はい、こちらお会計ね〜 いつもありがとね」

と佐々木さんがテーブルまで会計を持ってきて
それにすかさずテオはさっと佐々木さんにカードを渡した。


それにすかさず
「いや!僕のでお願いします」と
健一はカードを出して言ったが
テオは「今日の所は僕が」とにこっと笑って

お願いします。と言って立派な黒いカードを
佐々木さんに渡した。

「あいよ」と佐々木さんはレジの方に向かった。
健一のカードも立派な金色のものをしていたが
テオにはカードも紳士さも数歩先を越され、やるせなさそうだった。


「ありがとう、四人で割ってくれて良かったのに」

と申し訳無さそうに香織が言うとテオは

「そう思ってくれるなら今度一緒に美術行くの
付き合ってください」
と微笑んで言った。

その笑顔に私は心を持っていかれた。
強引さもあってこんな可愛い笑顔も持ってるなんてずるい。と
香織は少し嫉妬の様な気持ちを抱いた。

それと同時にこの数時間、
テオの整ったクールで綺麗な顔がクシャッとなるかわいい笑顔に弱くなっており
この顔をされるとどうにでもなってしまえという
感情にさえなった。


佐々木さんが持って来た伝票にテオがサインをしてみなグラスのワインを飲み干し席を立ち

「佐々木さん有難うまたそのうち」


「香織ちやんまたね。今日はいい出逢いがあって良かったね」
と香織に小声で言いウインクをした。

「テオ君ありがとね。お二人さんもまた」

とテオと健一、麗華にも挨拶をしながら
一緒に店を出てお見送りをしてくれた。




佐々木さんがタクシーを呼んでくれていたので
各々乗る事にした

「家はどっちの方面?」
とテオが私達に聞いた。

「俺らは一緒の方面、三田の方なんで一緒に乗って行きます」

と香織の肩に手を置いて2台のうちの後ろのタクシーに乗った。

早く帰って事をしたいというのがそこに居る全員に伝わった。

香織は察していてが一緒には乗るけど
一緒の家に帰るつもりはなかった。

そんな事は健一には1ミリも伝わらず一緒の家に帰るのが当たり前かの様だった。いつもみたいに。



「あたし松濤。テオ、一緒に乗って。」
と麗華は言った。


「じゃあ気を付けて帰ってね。おやすみ」


テオは香織と健一達に言って麗華と一緒にタクシーに乗り込み先に走り出した。


香織達の車も後に続いて動きだし

「じゃあね〜」と言って手を振る佐々木さんの姿を
後にした。






To be continued...

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