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初めてビッグイシューを買った日
私の通う美容院の最寄駅にはビッグイシューを売る人がいる。
赤い帽子に赤いジャケット、名前入りのIDカード、手に持っている雑誌、正真正銘のビッグイシューの販売員だ。
イギリスで始まったこのBIG ISSUEとはホームレスに雑誌販売というビジネスを与える取り組みのこと。
私も友達から聞いて、初めて知った。
(きっかけを与えてくれたベネディクトカンバーバッチさんありがとう)
以来、見つけては買おうと思っていたのに、なかなか出会えず、美容院に通うようになってから気づいた。
なのに、今まで一度も買えなかった。
いや、買わなかった。
買ってる姿を周りの人はどう思うんだろう?とか
怖いホームレスだったらどうしよう?とか
偽善者っぽいかな、とか
どう思われるんだ?という自分よがりな考えが邪魔をしていて、声をかける勇気が無かった。
でも、今日は前を通り過ぎた後、戻って販売員さんに声をかけた。
気が向いたのか、買いやすそうだったのか、買うなら今しかない、と思った。
緊張して声が裏返ったし、お金を出すお財布は震えていたけど、販売員さんはじっと待っていてくれた。
「1冊ね。450円です」
と言った販売員さんは、汚いわけでもなく、ボロボロでも、お爺さんさんでもなく、中年より若いくらいの男性だった。
お釣りの50円をコインケースから出して丁寧に私の手に置いてくれた。
ちゃんとしてるし、怖いことも何も無い。
お釣りをしまう手がまだ震えている情けない私をじっと待っていてくれて、お財布をしまったのを見届けてから
「ありがとうね」
といってビニール袋に包まれた雑誌を渡してくれた。
何をこんなに怖がっていたんだろうと思ったし
何を恥ずかしがって買わなかったんだろう私は。
ビッグイシューはボランティアとビジネスを合わせたような事業で、最初の10冊を無料で渡し、利益は全て販売員が得る。11冊目からは220円で雑誌が買える。半分が販売員の利益になる。
途中で辞めても、4500円を自分に使ってもいいらしい。
ホームレスになった人たちにただ単に食事やお金を与えるのではく、お金の稼ぎ方を教える事業だと知った。
親がいない子に可哀想、ってただ食事を与えるのではなくて、料理や家事や生活の仕方を教えるのが大人の役割なんじゃ無いの?って言う友達がいて
私はそれでハッとさせられたことがある。
ただ憐れんで与えるのではなくて、生きていく術を手立てするのが本当の支援、だと思っている。
私はそれがしたいし、そうされたい。
だからする。
それだけのこと。
簡単なことだったと気づいたし
自分の中に偏見がいたことにも気づいた。
今日は、初めてビッグイシューを買った日。