一日一天声人語 「歴史に隠れる問題」
1776年、日本や欧州がまだ身分制に縛られていたころ、アメリカでは「すべての人間は生まれながらにして平等であり…」で始まる独立宣言が発行された。しかし、この「すべての人間」に黒人は含まれていない。当時の黒人は、奴隷つまり私有財産とみなされていたためだ。宣言の草記者であり、のちの大統領ジェファーソンでさえも、奴隷を使っていたという。7月4日はアメリカ独立記念日。今年は、コロナの影響でいつもと違う記念日になった。それに加え、依然としてアメリカにはびこる人種差別の問題が、記念日の様子を変えた。アメリカ建国の歴史に潜む奴隷制に目が向けられている。トランプ氏は記念式典で「全体主義」「極左ファシズム」を非難したという。しかしいま必要なのは突き放すことではなく、人々と共に歴史に向き合う姿勢である。称えられている歴史は、見えない問題を抱えてはいないか。歴史を見るには広い視野、多角的な視点が求められる。