【2025元日】「自由に撮ってください」と書いた"写ルンです"を鴨川デルタに放置するとどんな写真が撮れるのか
また写ルンですを放置したくなった
仕事を辞めた去年の夏。布団の上でゴロゴロしている時にふと思いついた企画があった。
「自由に撮ってください」とメモを書いた写ルンですを人が沢山訪れる場所に置いておくとどんな写真が撮れるんだろう?
約半年前、そんなワクワクするようなことを思いつき、無職の有り余る時間と体力で決行した企画。実際に昨年8月に京都の鴨川デルタで検証を行い、盗まれる事なく、沢山の写真を撮影していただいた。
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あれから約半年。相変わらず布団の上でゴロゴロしている時にふと思った。
「もう一回やりたいな」
※働け
前回の企画で撮影された鴨川デルタの写真を改めて眺めているとワクワクドキドキが再燃したのだ。
盗まれないかな?そもそも撮ってくれる人はいるのかな?誰かに怒られたりしないかな?国民保険料下がってくれないかな?
そんな風にドキドキしながら設置した時。
回収した際に残りカウンターが「ゼロ」になっているのを見た時。
ワクワクしながら現像に出した時。
現像するのに2000円かかると知って財布の中を見た時。
そして、実際に撮影された写真を見た時…。
あのなんとも言えない感動が、そしてあの夏の記憶が蘇ってきたのだ。
天気予報で最高気温40度の灼熱だったあの日から季節は移ろいですっかり寒くなってしまった(主に私の懐が)。
もう一度あのドキドキとワクワクを味わいたい。
そして「元日にやろう」
そう考えたのだ。
いざ京都へ
そのまま、12月31日の夜に東京を出発し1月1日の早朝に京都着の夜行バスを調べて日の出前に到着できるバスを予約。
実は私、無職であるが、"京都に実家がある"という選ばれし人間なので、急いで母親に「1月1日の朝に京都帰る」とだけ伝え、「こいつバスで年越しするるとかマジか」と言いたげな母からのスタンプを無視して鴨川デルタへ想いを馳せる。
12月31日、新宿から夜行バスに乗り、社畜時代に培われた椎間板ヘルニアを携え約7時間。
バスに揺られながらドキドキが加速する。
「そもそも年始の京都って人いるのかな」
「そして年始に鴨川デルタに来る人はいるのかな」
「逆に人がいっぱい居たら設置する時恥ずかしいな」
「腰痛い」
「あ、年越しした」
1月1日 朝5時半、京都駅到着。意外にも人が多い。
鴨川デルタの最寄駅である出町柳駅へは京都駅からは乗り換えが発生しダルいのでバスで向かうことにする。
あまりにも複雑で路線も多く、且つ乗り場も多く「目的のバスがどこから出発するか分からない」と観光客殺しで有名な京都駅前バスターミナル。
右往左往する観光客を横目に、京都生まれ京都育ちという選ばれし人間の私は、迷うことなく鴨川デルタ方面へ向かうバスの乗り場へ一直線に向かう。
…まあ色々あって1本乗り遅れてしまったが無事、鴨川デルタへ向かうバスに乗車。断じて迷って乗り遅れた訳ではない。
1月1日 朝6時15分。鴨川デルタ到着。
バスから降り、鴨川デルタへ向かうと、初日の出を見ようと集まる若者が数グループ。
カメラを設置したいと考えていたベンチがキラキラした若者に占拠されており、恥ずかしいのですぐには設置できず、とりあえず独り暗闇で「自由に撮ってください」と書いたメモを写ルンですに取り付ける(陰キャムーブ)。
初日の出が出るまでベンチの若者たちは動じないのは明らかだし、寒いし早く寝たいしで思い切って「カメラ置くからよかったら写真撮って」「撮り終わったらベンチに置いといて」と話しかけることに。
「ごめん、お兄さんたち、初日の出?」
「実は今、写ルンですを持ってきていて…」
そういった時に一斉に「うおおお!」という歓声が上がった。
恐らくTikTokとかで流行っている写ルンですで撮らせてくれませんか的な奴だと勘違いしたのだろう。
慌てて「ストリートスナップを撮ってる人じゃなくて、こんな企画をやってるから是非参加して」と訂正しカメラを渡した。ただの無職でごめん。
恐らくフラッシュを焚かないと上手く写らないだろうと思ったので、フラッシュの位置を軽く教え、撮り終わったらベンチに置いておくように頼み帰宅する。
とりあえずいい反応をもらえたし、一切撮られていないという事態は避けられただろう。
翌日、果たして写ルンですは無事か
1月1日、7時すぎ鴨川デルタを後にし実家へ。
7年ぶりくらいに京都の実家でお正月を過ごすことができた(社畜に年末年始なんてなかった)。実家のお雑煮が世界一美味い。
翌日、朝9時に写ルンですを回収する計画を立てその日は早めに就寝。
そして1月2日朝9時。鴨川デルタへ向かう。
「次は出町柳、出町柳、終点です」
叡山電車の車内で揺られ出町柳駅に到着を前に、やはりここでもドキドキが襲う。
「盗まれていないだろうか」
「一枚も撮られていないかもしれない」
「住民税、払い忘れてる気がする」
なんだろう、この普通に生きていると感じられない感覚は。
前回の写ルンです放置の時にも感じたドキドキ。きっとこれは設置した私にしか感じられないものだろう。
不安を抱えながらも行くしかない。
答えは鴨川デルタにある。
快晴中の快晴。
鴨川デルタに到着すると外国人がベンチに座ってタバコを呑んでいる。
「グッドモーニング」
本当にそう言われた。
写ルンですが未だに残されたままか、写真は撮られているか、その答えを暗示しているかのようだった。
昨日若者たちが座っていたベンチ付近を見ると…
カメラは無事にあった!
グッドモーニング!!!!!!アイムファインセンキュー!!!
この喜びは誰に伝えたらいいんだろう。
とりあえず前もって調べていた年始から写ルンですの現像ができる「カメラのキタムラ 北大路ビブレ店」へ向かう。
※北大路ビブレは私が東京で社畜をしている間にイオンモール北大路になったらしい。
カメラのキタムラの店員さんとこの喜びを分かち合いたい。
ダッシュで入店し、「写ルンですを現像したいんですけど」と伝える。
「2時間くらい頂戴するけどよろしいか」(原文ママ)
いやしょうがない。年始早々、働きたい奴はいない。
なんせ京都だ。毎日押し寄せる観光客に疲れているんだろう。
つい先日も京都の喫茶店が炎上していたが、そういう側面もあるかもしれない。
「よろしいです」と言って写ルンですを渡し、2時間どうするか考える。
北大路ビブレの用のないユニクロやニトリを行ったり来たりしていた。頭の中は写ルンですに記録されている写真のこと。
ユニクロとニトリを何往復しただろうか。2時間がすごく長く感じた。
現像完了
2時間が経った。
正確には待ちきれなくて15分前に行ったら出来ていた。
今回も現像代が1980円。無職の私にとっては痛い出費である。
しかしながら、この写ルンですに対する好奇心の前では、前回同様、私の財布はガバガバに口を開けて3000円支払って、1020円のお釣りを受け取った。
急いで鴨川の河川敷に向かう。
今回は家ではなく、鴨川の河川敷で写真を鑑賞しようとしたのだ。
果たして、何が写っているんだろうか。
イタズラされていないだろうか。
色々な思いが頭をぐるぐるしていく。
ずっと楽しみにしていた瞬間だったのに、いきなり怖くなる。
けどこの感覚を私は待っていた!
いざ…!
嗚呼、、
愛おしい。全部が愛おしい。
ミスショットももちろんあったが、全部愛おしい。
1月1日に鴨川デルタに来て、この怪しげな写ルンですを見つけて、写真を撮った。
その行為が、思いが、存在が美しい。
写真がうまく撮れているかどうかなんてどうでもいい。撮ってくれたことが全てだとも思う。
私がこうやって写ルンですを設置しないと撮られなかった写真たち。記録されなかった世界の一瞬。それがこの企画で撮影されたのだと思う。
そして悪意のある写真が一枚もないことが感動である。
何を思って撮ったんだろう。いろんなことが頭の中を駆け巡る。
そして、この写真はどんな人たちが撮影してるんだろう。
今回も答えは写真の中にあった。
撮影者の皆さん
前回もあったが、自撮りをしてくれる方が多数いた。
こんな怪しいカメラで、、、本当に感謝である。
そして私がこの企画をやる理由が実は特にこの人物が写った写真にある。
正直、この企画は私が知らない人に声をかけて撮らせてもらうこともできる。
しかし、それでは私が本来やりたかった事は叶わないのだ。
もし、私が声をかけて撮ったとして、赤の他人で出会ったばかりの私にこのような表情を向けてくれるだろうか。
この写真は、親しい関係だからこそ、信頼している関係だからこそ撮ることができた写真である。私が撮った場合、違う結果が出たはずである。
つまり、ポートレート(人物写真、肖像写真の意)は撮影者に対する表情を記録している。
いや、ポートレートに限らず写真は全てそうである。風景もまた、何らかの目的を持って撮影地に足を運びシャッターを切った写真家に応える形で表情を変える。
それはつまり、写真には間接的に撮影者が写っているとも言えるかもしれない。
誰もが簡単に綺麗な写真を撮ることができる現代。
インターネット上のいいねだけを求める写真や、ミスリードを誘うような切り取り方をした写真。そして写真家たちのくだらないポジショントークによる論争が溢れるこの現代に私は辟易していた。
しかしながら、この写ルンですで記録された写真は、全てが誰かに認められたいとか、悪意のもと誰かを陥れたいというような感情が一切なく、ただただ眼前に広がる鴨川デルタの風景や友人、家族の写真を撮影者の関係性によって撮ってくれた。
「面白いもの見つけた」「せっかく鴨川来たし記念に写真撮ろうよ」「綺麗な風景だな」
一緒に訪れた仲のいい友人、家族、そして思い入れのある場所。
本来、我々が撮るべき写真はこういったものだったのではないだろうか。
そんな風に思ったりした。
鴨川デルタにはいろんな人がいる
鴨川デルタには性別も国籍も思想も違う人々が集まる。
別に1人で来たっていいし、友達と来てもいい。
遊んでもいいし、物思いに耽ってもいい、楽器の練習をしてもいいし、作品を作ってもいい。
今回の写ルンですにこのような一枚が記録されていた。
鴨川にバランスよく積まれた石のオブジェ。
これは鴨川をはじめ京都を中心に活動されるロックバランシングアーティストの池西大輔さんの作品。
池西さんは7年ほど前から鴨川デルタ付近にてこの石積みアートを制作される有名人である。
実は昨年に行った企画を同じくnoteにアップした際に偶然ご覧になられ、次回やる機会があればぜひ自身の作品を撮りたいと仰っていた。
今回、約半年ぶりに開催して撮影してもらうことができた。
1月2日にはお互いコンタクトを取り、鴨川デルタで直接お会いし、約3時間ほどお話しすることができた(とてつもなく長時間お付き合いいただきありがとうございます)。
池西さんは「鴨川デルタは誰でも受け入れてくれる」
そう語っていた。
そしてこの企画も
「また面白いことやってはるなって思った」
東京のど真ん中では相手にされないようなこの怪しいカメラも鴨川デルタだから皆さん受け入れてくれたのかもしれない。いやそうに違いない。
そしてこの数々の写真が記録された。
そうだ鴨川デルタ行こう
都会の喧騒で疲れたらぜひ鴨川デルタに行こう。
そして空を見上げてボーッとすればいい。
気が向いたら明日から頑張ればいい。
もし遠いならとりあえず家から一歩出てみよう。
意外にも世界は美しい。
最近、私は友人を1人亡くした。
亡くなる直前に写真撮影の依頼をくれて撮影することができた。
だから悔いはないと言えば嘘にはなるが、写真を撮らなかった世界線があったとすれば言いようのない後悔に苛まれているだろう。
だから写真撮ろう。
鴨川デルタに来てほしいとは言ったが、わざわざ京都じゃなくても良い。
もし来れるなら鴨川デルタに来て、癒されて、プラス写真撮れれば万々歳。
まあ鴨川デルタに行こう、写真撮ろう、この二つが言いたかった。
とにかく、私は今回も煌めきの瞬間が込められた写真が撮影されて嬉しかった。あの学生時代見ていた風景が誰か知らない人の手により撮影されて感動した。
そして、私が本来見ることのできない友人たちに向けた表情。あなたに向けられた鴨川デルタの表情を垣間見ることができてよかった。
元気が出た。
笑顔になった。
いろんな事があって私は今、故郷の京都を離れて東京で生活をしている。
こんな自由気ままなことをやっている場合ではないかもしれない。もっとやるべきことがあるかもしれない。しかし、私は少なからず明日を頑張る力をもらった。
このnoteを書いている今も、誰かが鴨川デルタにきて美しい景色に息を飲んだり、恋人と思い出を作ったり、友達同士で笑あっているのだろう。
環境や場所は違っても全ての人は同じ時間を生きている。私が嬉しい時、誰かも嬉しい。私が悲しい時、誰かも悲しい。
このコンクリートジャングルでもその純粋な気持ちを持って生活している人がいる。
よし、明日から頑張ろう。
いや明日はしんどいし来週から頑張るか。
2024年1月16日
中村 正行
【YouTube版】
設置している様子や撮影されたすべての写真を公開しています。
おわりに
鴨川デルタで撮影していただいた皆様ありがとうございました。
そしてここまで読んでくださった顔も名前もわからない皆様、ありがとうございます。
我々は会ったこともないし、性別も年齢も思想も違い共通点もないかもしれません。もしかしたら言語も違って会話もできないかもしれません。
しかし、写真はそれら全てが異なっていてもコミュニケーションが取れるものです。
この写真やnoteを見て、少しでも元気が出たり、何かあなたの心を動かせたのなら嬉しいです。
私は写真と廃墟マニアと無職をやっています。
このnote同様に偶然見た人が少しでも元気が出たり、明日を生きる糧になれればと思ってYouTubeやInstagramなどをやっています。
またYouTubeにて今回の写ルンですを設置している様子や撮影されたすべての写真を公開しています。よければご覧ください。
【YouTube】
怖くない廃墟探索、あなたの人生を撮らせてください、写ルンです放置シリーズを投稿しています
【Instagram】
普段撮影しているスナップ写真、ポートレートを投稿しています。
https://www.instagram.com/annpann001/
また、機会があれば鴨川デルタをはじめ、写ルンです放置します。
ぜひフォローしてお待ちください。
※写ルンですを置いてもいいよ!と言ってくださる心優しい方、人が集まる施設を管理している方、飲食店の店主様などご連絡ください。
ほなまた!
【前回記事はこちら】
https://note.com/annpann002/n/n4c7a9b6f34be