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堆肥考 その2 木はどのように分解されるのか
長年土中にあってもなぜ木の枝は腐らないのか?
というわけで、前回の「長年土中にあってもなぜ木の枝は腐らないのか?」の続きです。
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こちらは我家の畑の片隅にあるゴミ捨て場を整理中に出てきた木の枝です。ビニルやプラスチック系のゴミも混在していますが、これらは長年土中にあってもほぼ分解されていません。
そもそも樹木はあの高さと自重を保ちながら、何十年、何百年も地面に立っているわけですから、雑草と比べてそのつくり自体が頑丈なんですよね。樹木の内部では、骨組みを作るセルロース、ヘミセルロースと間隙を塗り堅めるセメントの役目をするリグニンが頑丈な細胞構造を形成しています。特にリグニンは難分解性の高分子物質でして、そう簡単には分解できません。
木はどのように分解されるのか?
では、こんなに腐りにくい樹木は一体どのように分解されるのでしょうか?ズバリ大切な条件は次の通り。
水分
温度
酸素
栄養分
中でも水分と酸素の2つが同時に存在することがミソでして、どちらが欠けても木は腐りません。たとえば何千年も前の水底の泥の中からたくさんの木簡が当時のままの状態で出て来るのは、水底の泥の中に水はあるけど酸素がないからです。また、法隆寺に代表される古い建造物が今なお現存しているのは、酸素はあるけど雨などが当たってもすぐに乾いて水分がない状態だからだと考えられます。
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「水と酸素が同時に存在する状態」ここでは森の中で湿った地面に倒れた樹木をイメージしていただけるとわかりやすいかもしれません。倒木は大まかに述べると以下のように分解されていきます。
広葉樹では先ず白色腐朽菌(ヒラタケやシイタケ、カワラタケ、エノキタケなどのキノコ)が活躍して、セルロースや難分解性物質であるリグニンを分解し、針葉樹では主に褐色腐朽菌(オオウズラタケ、サルノコシカケ、ナミダタケなどのキノコ)がセルロースとヘミセルロースを選択的に分解する。
白色腐朽菌や褐色腐朽菌が分解できない水分を多く含む木材などは、セルロース、ヘミセルロース、リグニンを全て分解できる軟腐朽菌(ケトミウムやトリコデルマなどが選択的に分解して木材を軟化させる。
リグニンが分解されて柔らかくなった木の内部を様々な微生物や虫たち(シロアリ類、オオクチキムシ、キマワリやクワガタムシの幼虫など)が分解。
残った樹皮などをさらに長い年月をかけて微生物などが分解。
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よく山や森の中で倒木にいろんなキノコが生えている姿を目にしますよね。まさにあれが木の分解の初期段階。キノコが生えた後の倒木はボロボロと崩れやすく、そこに様々な微生物や虫たちの活躍する場ができるのですね。ちなみに最後まで残る固い樹皮を集めて発酵させたものがバーク堆肥です。完熟していないものは害が出ますが、完熟したものを適切に使うと土壌改良効果が長時間持続し、保水性と保肥性が高くなります。
如何でしたでしょうか。このように樹木は雑草などとは分解の過程が全く異なりますので、樹木の枝は長年土中にあるとかえって腐らないのですね。雑草堆肥を作る際には混在しないように注意したいものです。
本日の教訓:
そもそも雑草と樹木では分解のされ方が全く違う。(^^;)
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